共有持分

共有持分の贈与とは?無償譲渡・持分放棄との違いと贈与税・登記費用を徹底解説

目次

共有持分の贈与は、自分の持分だけを無償で家族や他共有者に移せる契約です。他共有者の同意は原則不要で、贈与税・登録免許税・不動産取得税などの費用と、贈与後の継続負担を事前に確認すれば進められます。ただし「無償譲渡」という名称にすれば贈与税がかからないわけではなく、持分放棄とは法的性質が全く違います。

この記事でわかること:

  • 贈与・無償譲渡・持分放棄・低額譲渡の違いと、それぞれの法的・税務的な扱い
  • 自分の持分だけを贈与する際の他共有者の同意の要否
  • 贈与税・登録免許税・不動産取得税の計算方法と、土地・建物・マンションで異なる評価額の決め方
  • 暦年課税と相続時精算課税の選び方、「110万円以下なら無税」の誤解
  • 贈与が向く人・向かない人、売却との比較と判断軸

この記事を書いた人

訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。

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共有持分の贈与とは?基本のしくみ

共有持分の贈与とは、共有者が自己の持分(共有持分権)を無償で相手に与える契約です(民法549条)。贈与者が「あげる」と言い、受贈者が「もらう」と承諾することで成立します。書面で交わさない贈与(口約束)は、履行が完了するまではいつでも解除できるため(民法550条)、登記まで終えておくほうが確実です。

なお、「持分」とは土地や建物の特定の一部(例えば「2階部分」)ではなく、物件全体に対する権利の割合です。例えば「2分の1」の持分を贈与する場合、受贈者はその割合に応じた権利を得ますが「この部屋だけ」という物理的な区画をもらうわけではありません。この点を理解しておかないと、後で「自分の部屋だと思っていた」といった認識のズレが生じることがあります。

贈与・無償譲渡・持分放棄・低額譲渡の違いを比較する

「持分を無料で渡す」方法には、贈与のほかに持分放棄無償譲渡低額譲渡があります。同じ「タダで渡す」でも、法的性質・相手を指定できるか・税務上の扱いが大きく異なります。

方法 法的性質 相手を指定できるか 相手の受諾 主な税務上の扱い
贈与 契約(民法549条) 可(特定の相手を選べる) 必要 受贈者に贈与税(暦年課税または相続時精算課税)
無償譲渡 実務上の呼称。個人間なら実質的に贈与 必要 名称を変えても実質が贈与なら贈与税が課税される
持分放棄 単独行為(民法255条) 不可(放棄持分は他の共有者へ当然帰属) 不要 他共有者が贈与により取得したものとして扱われ得る
低額譲渡 売買形式 必要 時価と対価の差額がみなし贈与となり得る(相法7条)

「無償譲渡」という名称にすれば贈与税がかからないわけではありません。個人間で対価を受け取らずに持分を移す場合、実質は贈与と判断され、贈与税の課税対象になります。名称だけで税務処理を変えようとするのは避けてください。

持分放棄(民法255条)は、相手の承諾が不要で一方的に手放せる点がメリットですが、誰に渡すかを選べません。放棄した持分は自動的に他の共有者へ帰属します。特定の家族や相続人にだけ渡したい場合は、贈与(または遺言)を使う必要があります。

低額譲渡については、国税庁No.4423で「個々の具体的事案に基づき判定する」とされており、法人向けの「時価の2分の1」基準とは異なります。「半額以上払えば安全」といった一律の目安はないため、注意が必要です。

自分の共有持分だけを贈与できる? 他共有者の同意は必要?

自分の持分だけを贈与する場合、他の共有者の同意は原則として不要です。共有持分は自己の財産であり、民法206条に基づき単独で処分できます。

ただし、次の2点は現実的な注意点として把握しておいてください。

  • 不動産全体を売却する場合は、共有者全員の同意が必要です(変更行為)。贈与だけでなく売却も視野に入れているなら、事前に他の共有者との関係を考慮する必要があります。
  • 受贈者が新たな共有者になることで、今後の意思決定(売却・建て替え・賃貸など)がさらに複雑になります。例えば「兄A・弟B」の2人共有から「兄A・弟B・弟の配偶者C」の3人共有になることで、全員同意が必要な場面で1人増える分だけハードルが上がります。

すでに共有者間で関係が良好でない場合や、今後の物件の処分を検討している場合は、贈与ではなく売却・放棄など他の選択肢もあわせて検討したほうがよいケースがあります。

まず判断しよう:あなたのケースで贈与は「3段階」でクリアできる?

共有持分の贈与を検討する際は、①法的に可能か → ②実務上進められるか → ③経済的に合理的かの3段階で判断することをおすすめします。「できるからやる」ではなく、「やるべきか」まで考えてから進めてください。

段階 チェック項目 クリアできない場合
第1段階:法的に可能か ・自分の持分だけが対象か(他者の持分まで含めていないか)
・贈与者の意思能力に問題はないか
・抵当権がある場合、債権者の承諾条項はないか
全体の売却を目指すなら全員同意が必要。意思能力に疑義があれば弁護士へ相談
第2段階:実務上進められるか ・受贈者が贈与を受諾しているか
・登記事項証明書で対象持分・抵当権を確認できるか
・土地・建物の評価額を算出できるか
・登記申請に必要な書類が揃えられるか
受贈者が拒否する場合は売却・放棄を検討。書類が不足する場合は司法書士へ相談
第3段階:経済的に合理的か ・受贈者に納税資金があるか
・受贈者が贈与後の固定資産税・管理費を負担できるか
・贈与するよりも売却したほうが総合的に有利ではないか
受贈者に負担をかけられない、または現金化したい場合は売却を検討

ポイント

「第3段階」をスキップする人が最も後悔する

法的に可能で、実務上も進められるからといって、受贈者の経済的負担をすり合わせずに進めると、「タダで渡してやったのに」と「もらって損をした」のすれ違いが起きます。贈与を決める前に、必ず受贈者と費用負担の具体額を共有しておきましょう。

共有持分の贈与にかかる税金と費用の総額

共有持分の贈与には、以下の税金と費用が発生します。相続と違い、贈与は登録免許税の税率が高い(2%)ことが大きな特徴です。

税目・費用 負担者 計算方法 目安(持分評価額500万円の場合)
贈与税 受贈者 (贈与税評価額 − 110万円)× 税率 − 控除額(※暦年課税の場合) 約39万円〜(※条件により変動)
登録免許税 受贈者 固定資産税評価額の持分相当額 × 2%(1,000分の20) 約10万円
不動産取得税 受贈者 都道府県による。土地・住宅用家屋は標準税率3%(特例期間中) 約15万円〜
司法書士報酬 依頼者 物件数・権利関係により変動。相場は5万〜15万円程度 要見積

注意:相続による所有権移転登記の登録免許税は0.4%ですが、贈与では2%と5倍の税率になります。登記費用だけを比較すると、贈与より相続のほうが大幅に安いケースが多いです。

贈与税(暦年課税)

暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残額に税率を乗じて計算します(国税庁No.4408)。

特例贈与財産用(直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

上記以外(兄弟間・夫婦間・親から未成年の子への贈与など)は一般贈与財産用の税率が適用されます。

贈与税(相続時精算課税)

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に限り、相続時精算課税を選択できます。2024年1月1日以後の贈与から、年110万円の基礎控除が追加されました。

  • 基礎控除(年間110万円)を控除後、さらに特別控除(累計2,500万円)まで控除可能
  • 控除後の金額に一律20%の税率
  • 重要:「非課税制度」ではなく「課税繰延べ制度」です。贈与者が死亡した時、贈与時の価額を相続財産に加算して相続税を計算します。将来の相続税が高くなる可能性があることを理解したうえで選択してください。
  • 一度選択すると、同じ贈与者からの贈与については暦年課税へ戻れない

登録免許税(固定資産税評価額の2%)

所有権移転登記の登録免許税は、固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)の持分相当額に2%(1,000分の20)を乗じて計算します(国税庁No.7191)。相続の0.4%より大幅に高い点を理解しておく必要があります。

不動産取得税(都道府県により異なる)

不動産取得税は受贈者が都道府県に納める税金です。税率は都道府県により異なりますが、令和9年3月31日までの間に取得する土地・住宅用家屋については、標準税率3%が適用されています。非住宅用家屋は4%です。

司法書士費用

所有権移転登記は司法書士に依頼するのが一般的です。報酬は物件数・権利関係の複雑さにより変動するため、複数の司法書士事務所で見積もりを取るとよいでしょう。

土地・建物・マンションで異なる贈与税評価額の計算

贈与税の計算に使う「贈与税評価額」は、土地、建物、マンションで評価方法が異なります。固定資産税評価額だけで一律に決まるわけではない点が、多くの人がつまずくポイントです。

対象 評価方法 具体的な計算
土地 路線価方式または倍率方式 路線価方式:路線価図の路線価 × 各種補正率 × 面積 × 持分割合
倍率方式:固定資産税評価額 × 一定倍率
建物(戸建てなど) 固定資産税評価額 固定資産課税台帳の価格 × 持分割合
マンション(居住用区分所有) 固定資産税評価額 × 区分所有補正率(2024年以後) 区分所有権(家屋部分):固定資産税評価額 × 区分所有補正率
敷地利用権(土地部分):路線価等 × 敷地持分割合 × 区分所有補正率

土地の評価は、路線価が定められている地域では路線価方式、定められていない地域では倍率方式を国税庁の路線価図・評価倍率表で確認します。贈与税評価額は実勢価格(市場価格)の約7〜8割程度になるのが一般的ですが、正確な評価は路線価図で確認する必要があります。

注意

「固定資産税評価額だけで贈与税が計算できる」は誤り

ネット上の一部の記事では「(固定資産税評価額 × 持分割合 − 110万円)× 税率」と書かれているものがありますが、土地の贈与税評価は路線価方式または倍率方式が原則です。固定資産税評価額は登録免許税や不動産取得税の計算に使うものであって、贈与税の評価額を決めるものではありません。

土地の贈与税評価額を計算するには、国税庁の路線価図または評価倍率表を確認する必要があります。正確な金額を知りたい場合は税理士へ相談することをおすすめします。

マンションの評価は、令和6年1月1日以後の贈与から新たな評価方法(居住用の区分所有財産の評価通達)が適用されています。築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度から評価乖離率を計算し、区分所有補正率を求めて評価額を算出します。

【具体例】税金ごとに評価額が違うケース

土地の固定資産税評価額が1,000万円、路線価評価額が1,400万円の物件を例にします。

贈与税の評価額:路線価方式 → 1,400万円(の持分相当額)
登録免許税の課税標準:固定資産税評価額 → 1,000万円(の持分相当額)
不動産取得税の課税標準:固定資産税評価額 → 1,000万円(の持分相当額)

同じ物件でも、税金の種類ごとに使う評価額が違うため、一律に「評価額は◯◯円」と決めつけられません。贈与税の試算をする場合は、国税庁の路線価図で土地の路線価を確認する必要があります。

暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶべきか

暦年課税と相続時精算課税は、贈与者が60歳以上の父母・祖父母、受贈者が18歳以上の子・孫の場合に選択できます。それぞれの特徴を整理します。

項目 暦年課税 相続時精算課税
対象者 すべての贈与 60歳以上の父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫
基礎控除(年間) 110万円 110万円(2024年1月1日以後の贈与から新設)
特別控除(累計) なし 2,500万円
税率 10〜55%(累進課税) 一律20%(特別控除超過分)
贈与者死亡時の処理 生前贈与加算(相続開始前の一定期間分を相続財産に加算) 贈与時の評価額を相続財産に加算して相続税計算(課税繰延べ)
一度選択すると戻せるか 選択不要(特別な手続きなしで利用) 戻れない(同じ贈与者からの贈与は以降すべて精算課税)

暦年課税が向くケース:贈与する財産が年間110万円以下で、長期間にわたってコツコツ移したい場合。基礎控除内なら課税されず、相続開始前3年(将来7年)以内の贈与のみ加算対象になります。

相続時精算課税が向くケース:評価額の高い不動産を一括で贈与したい場合。ただし「非課税」ではなく「課税繰延べ」であることを必ず理解したうえで選択してください。

注意:相続時精算課税を選択すると、同じ贈与者からの贈与については暦年課税へ戻れません。将来小さな金額を贈与する場合もすべて精算課税の適用になり、贈与税の申告が必要になります。

夫婦間の贈与:配偶者控除(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(またはその取得資金)を贈与する場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できる特例があります(相法21条の6)。適用には翌年3月15日までの期限内申告が必須です。なお、配偶者控除の適用を受けた場合でも、登録免許税(2%)と不動産取得税は別途課税されるため、併せて確認してください。

「年間110万円以下なら無税」の誤解と落とし穴

「110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要」という認識は、一部正しく、一部誤りです。正しく理解するために、次の2点を必ず確認してください。

110万円は「贈与者ごと」ではなく「受贈者の年間合計」

基礎控除110万円は、受贈者が1年間に受けたすべての贈与の合計額に対して適用されます。「父から100万円+母から100万円」を同じ年に受けた場合、合計200万円から110万円を控除した90万円が課税対象です。「親1人につき110万円まで」ではありません。

また、贈与税の申告が必要になるかどうかは、受贈者側の判断です。110万円を超えた部分がある場合は、受贈者が翌年2月1日〜3月15日の間に税務署へ申告し、納税する必要があります。

【具体例】年間総額と納税資金の確認不足

父が長男に共有持分(評価額500万円)を贈与。長男は「評価額500万円−110万円=390万円が課税対象。特例税率で計算すると約39万円の贈与税になる」と認識していた。

ところが長男は同年に、母から別の現金贈与(50万円)と、叔父から結婚資金として100万円を受け取っていた。3つの贈与の合計額は650万円。基礎控除110万円を差し引いた540万円が課税対象となり、贈与税は約99万円に跳ね上がった。

さらに問題だったのは、長男に納税資金の準備がなかったこと。贈与税の納付は贈与を受けた翌年3月15日まで。現金での支払いができず、やむなく一部の持分を売却して納税資金を捻出する手間が生じた。

教訓:贈与を進める前に、受贈者の年間の贈与受取総額を確認し、納税資金の準備があるかを事前に確かめることが欠かせません。

生前贈与加算は相続開始日により3年→7年に延長

暦年課税で贈与した財産のうち、相続開始前に贈与した一定期間分は、相続財産に加算されて相続税の対象になります(生前贈与加算)。加算対象期間は現在進行形で変わっています。

相続開始日 加算対象期間 経過措置
令和8年12月31日まで(2026年) 相続開始前3年以内 現行ルール
令和9年1月1日〜令和12年12月31日(2027〜2030年) 令和6年1月1日から死亡日まで 移行期間
令和13年1月1日以後(2031年〜) 相続開始前7年以内 完全施行

現在(2026年7月)の時点では、加算対象は相続開始前3年以内の贈与です。ただし、移行期間に入ると対象期間が段階的に伸びるため、相続対策としての生前贈与を検討する場合は、将来の加算リスクも織り込んでおく必要があります。

なお、令和9年1月2日以後の相続開始では、加算対象期間のうち「相続開始前3年を超える4年間」の贈与については、総額100万円まで加算されない緩和措置があります。

贈与後の継続負担を見落とさない

贈与は「渡して終わり」ではありません。受贈者は、贈与を受けた後も継続的に費用を負担することになります。この点を贈与前に説明しないと、後々トラブルになりかねません。

負担の種類 内容 年間の目安(持分2分の1の場合)
固定資産税 持分割合に応じて課税 数万円〜数十万円
都市計画税 同様に持分割合按分 数万円程度
管理費・修繕積立金 マンションの場合、持分割合に応じて負担 月額数千〜数万円
修繕費・維持費 共有物件の修繕が必要な場合、持分按分で負担 突発的。数十万円〜

受贈者が贈与後に「こんなにお金がかかるとは知らなかった」と驚くケースは少なくありません。贈与を検討する際は、受贈者に継続負担の具体的な金額を伝え、負担できるかどうかを確認したうえで進めてください。

【具体例】贈与後に受贈者が気づいて後悔したケース

母が亡くなった後、実家の土地建物を長女(既婚・遠方在住)と長男(実家で両親と同居)が2分の1ずつ相続。長男はそのまま実家に住み続けた。

後日、長女が「私の持分を長男に贈与したい」と申し出た。長男は「もらえるものなら」と承諾。ところが登記も終わらないうちに固定資産税の納付書が長男のもとに届く。さらに実家の屋根が老朽化し、修繕費200万円の見積もりが発生。「持分をもらっただけなのに、なぜ修繕費まで負担しなければならないのか」と長男は不満を募らせた。

長女は「タダで渡してやったのに」、長男は「もらって損をした」と互いに不満を抱える結果に。「あげる側にとってのメリット」「もらう側にとっての負担」の両面を事前にすり合わせておくことの大切さを物語るケースです。

贈与契約から登記・税務申告までの6つのステップ

実際に共有持分の贈与を進める手順を整理します。スムーズに進めるためには、契約前に確認すべき事項を漏らさず押さえてから動き出すことが重要です。

Step1 登記事項証明書で対象持分と権利関係を確認する

まず法務局で登記事項証明書(全部事項証明書)を取得し、現在の所有者、持分割合、抵当権の有無を確認します。土地と建物で登記名義が異なるケースもあるため、両方とも確認してください。

必要書類・確認資料チェックリスト

贈与契約前に揃えておくべき資料

□ 登記事項証明書(法務局)— 土地・建物それぞれ。所有者・持分割合・抵当権を確認
□ 固定資産課税明細書(市区町村役場)— 固定資産税評価額・課税標準を確認
□ 固定資産税評価証明書(市区町村役場)— 登記申請に必要
□ 路線価図・評価倍率表(国税庁のサイトで確認可能)— 土地の贈与税評価額を計算
□ 対象不動産の権利証または登記識別情報
□ 贈与者の印鑑登録証明書(発行から3か月以内)
□ 受贈者の年間贈与受取一覧 — 同年中に他の贈与がないか確認
□ 受贈者の納税資金の確認 — 贈与税・登録免許税・不動産取得税の支払い能力

注意

土地と建物で対象漏れが起きやすい

共有持分の贈与でよくあるミスのひとつが、「土地だけ移して建物を忘れた」「建物だけ移して土地を忘れた」というケースです。

特に以下のようなケースでは注意が必要です。
・土地は単独名義だが建物だけ共有(またはその逆)
・複数の土地(例えば宅地と私道)があり、一部だけ贈与対象から漏れる
・実際に建っている家屋が登記簿上の表示と異なる(未登記の増築など)

登記事項証明書で土地と建物をそれぞれ確認し、「どの不動産の、どの持分を、誰から誰へ移すのか」を明確にしてから進めてください。

Step2 贈与税評価額を計算する

国税庁の路線価図・評価倍率表で土地の評価額を確認し、建物は固定資産税評価額、マンションは区分所有補正率を適用して持分相当額を算出します。この評価額をもとに贈与税の概算を計算します。

Step3 受贈者の年間贈与総額と納税資金を確認する

今回の贈与だけでなく、その年に受贈者が他の人から受け取った贈与がないか確認します。前述の通り、110万円は受贈者の年間合計に対しての控除です。また、贈与税が発生する場合、受贈者に納税資金があるかも確認しましょう。

Step4 贈与契約書を作成する

口約束でも法的には有効ですが、後の証拠として贈与契約書(書面)を作成することを強くおすすめします。契約書には、贈与者・受贈者の氏名、物件の表示、持分割合、贈与の意思表示、年月日を明記します。公正証書にする必要はありませんが、税務署への添付資料としても役立ちます。

Step5 所有権移転登記を申請する

司法書士に依頼して、法務局で所有権移転登記を申請します。主な必要書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 贈与契約書
  • 贈与者の印鑑登録証明書(発行から3か月以内)
  • 固定資産税評価証明書(市区町村役場で取得)
  • 登記事項証明書(取得済みのもの)
  • 収入印紙(登録免許税分)

登記が完了すると、登記識別情報(登記済証)が発行されます。大切に保管してください。

Step6 贈与税の申告・納税をする

贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日の間に、受贈者が住所地の税務署へ贈与税の申告書を提出し、納税します。基礎控除110万円以下の場合でも、相続時精算課税を選択した場合は申告が必要です。申告書の作成は税理士に依頼することも可能です。

贈与が向く人・向かない人 — 売却との比較

共有持分の処分方法として、贈与が常にベストとは限りません。ここまでの情報をもとに、自分がどのケースに当てはまるかを確認してください。

判断軸 贈与が向くケース 贈与より売却が向くケース
受贈者の有無 持分を引き受けてくれる家族・共有者がいる 受贈者候補がいない、または引き受けを拒否されている
納税資金 受贈者に贈与税を支払える資金がある 受贈者に納税資金がなく、負担をかけたくない
継続負担 受贈者が固定資産税・管理費を負担できると合意している 受贈者に継続負担をかけたくない、または受贈者が拒否している
現金化の必要性 現金が必要ない(贈与者側に資金ニーズがない) 現金が必要(売却して資金を得たい)
今後の物件処分 物件を長期的に維持する方針 いずれ物件全体を売却したい可能性がある
登記費用 登録免許税2%を負担しても構わない 登記費用を最小化したい(買取であれば売主の登記費用は不要)

贈与が現実的でないケース(受贈者がいない/税金や維持費を負わせられない/現金化したい)では、共有持分の売却も選択肢に入ります。自分の持分だけなら単独で売却でき、買取であれば登記費用や仲介手数料が不要なケースもあります。

ただし共有持分の査定額は、持分割合・占有の有無・共有者との関係によって業者ごとに判断が分かれ、1社だけで決めると相場観がないまま契約することになりかねません。共有持分の取り扱いに慣れた複数社で条件を比べるところから始めるのが安全です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 共有持分の贈与に他共有者の同意は必要ですか?

必要ありません。自分の持分だけを贈与する場合、他の共有者の同意は不要です。ただし、不動産全体を売却する場合は全員の同意が必要になります。

Q2: 年間110万円以下なら申告も税金も不要ですか?

暦年課税で110万円以下の贈与なら、申告も税金も不要です。ただし、110万円は「受贈者の年間合計」であり「贈与者ごと」ではありません。また、相続時精算課税を選択している場合は、110万円以下でも申告が必要です。

Q3: 贈与と持分放棄はどちらが得ですか?

目的によって異なります。特定の相手に渡したい場合は贈与誰に渡るか気にせず手放したい場合は持分放棄です。持分放棄は相手の承諾が不要ですが、渡す相手を選べず、税務上は他共有者が贈与で取得した扱いになる可能性があります。両者の費用・税金の総額を比較してから決めることをおすすめします。

Q4: 贈与税の申告は誰がしますか?

受贈者(もらった人)が行います。贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日の間に、住所地の税務署へ申告書を提出し、納税します。贈与者は連帯納付義務を負うことがあります。

Q5: 抵当権がある物件でも贈与できますか?

贈与自体は可能ですが、抵当権は抹消されずに残ります。抵当権が実行されると、競売の対象になり得ることを受贈者が理解している必要があります。住宅ローンが残っている場合は、債権者(銀行)への事前確認が必要なケースもあります。

Q6: 夫婦間で居住用不動産を贈与する場合の配偶者控除とは?

婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産(またはその取得資金)を贈与する場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できる特例です。適用には翌年3月15日までの期限内申告が必須です。登録免許税(2%)と不動産取得税は別途かかります。

まとめ

共有持分の贈与は、正しい手順と税金の理解があれば、家族や共有者への名義整理の手段として有効です。ただし「無料で渡せる」「110万円以下なら何もいらない」といった単純な認識で進めると、予想外の税金・登記費用・継続負担で後悔することになりかねません。

あなたの状況に応じて、次のアクションを整理します。

  • 受贈者がいて、納税資金・継続負担もクリアできる人 → この記事の手順に沿って、登記事項証明書の確認から始める
  • 受贈者がいない、または負担をかけられない人 → 持分放棄(他共有者に帰属)または共有持分の買取売却を検討する
  • 税金や登記費用の計算が複雑で不安な人 → 税理士・司法書士に事前相談する(初回相談は無料の事務所もある)
  • まず複数の選択肢を比較したい人 → 贈与・放棄・売却の費用と手間を横並びで比較し、自分に合う方法を選ぶ

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