目次

共有名義の不動産の固定資産税は、法律上は共有者全員に連帯納付義務があります。ただし実際の運用では納税通知書は「代表者」に届き、その人が全額を立て替えてから、他の共有者に持分割合に応じて請求する形が一般的です。つまり「法律上は全員が払う義務があるが、現実には1人に負担が偏りやすい」仕組みになっています。
この記事でわかること:
- 共有持分の固定資産税は誰がいくら払うのか(法律上のルールと内部負担のルールの違い)
- 代表者の決め方と変更方法
- 共有者が払わない場合の4つの対処法(時効・買取請求権・訴訟・共有解消)
- マンション・私道・ゴミ捨て場など、物件の種類による違い
- 固定資産税の負担から抜け出す5つの方法
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。
共有持分の売却で迷ったら
共有持分は権利関係や共有者との調整が問題になりやすく、対応できる業者が限られます。まずは共有持分の買取実績がある専門業者に無料査定を出し、価格と対応を比べるのが近道です。
共有持分の売却に、まずこの1社
株式会社ネクサスプロパティマネジメント
共有持分・再建築不可・事故物件など幅広い訳あり不動産に対応。AI査定で価格の目安がすぐわかり、スピード重視で整理したい人に向いています。
- 共有持分をはじめ幅広い訳あり不動産に対応
- 自社直接買取+AI査定で価格の目安がすぐわかる
- 弁護士・司法書士と連携し権利関係も相談可
あわせて査定を比べたい専門業者
※ 買取価格や対応可否は、物件の所在地・状態・権利関係・登記状況・残置物の有無などで変わります。1社だけで決めず、複数社の査定条件を比較することをおすすめします。
掲載順・掲載内容は当サイト編集部の評価基準(対応範囲・公開情報の充実度・スピード等)によるものです。各社の対応領域は時期により変わる場合があります。
共有持分の固定資産税は誰が払うのか【基本ルール】
共有名義の不動産にかかる固定資産税の納税ルールは、「外部(自治体)」と「内部(共有者間)」の2つの層で考える必要があります。この2つを混同すると、「なぜ自分が払っているのに相手にも請求されないのか」「なぜ払っていないのに督促が来るのか」といった混乱を招きます。
法律上のルール:共有者全員が連帯納付義務を負う
固定資産税は、共有名義の不動産であれば共有者全員に連帯納付義務があると定められています(地方税法第10条の2第1項)。
連帯納付義務とは、簡単に言えば「自治体に対しては、共有者それぞれが全額を支払う義務を負う」という意味です。自分の持分割合が10分の1でも、自治体はあなたに対して全額の納付を求めることができます。これは民法上の連帯債務とは異なり、共有者間で内部負担の割合を決めていても、対自治体では意味を持ちません。
ポイント
連帯納付義務のポイント
- 自治体は共有者の中の誰にでも全額を請求できる
- 自分が持分の何倍も払っても、法律上は問題ない
- 「自分の持分はもう払った」は自治体への抗弁にならない
- 後で共有者に「自分が多く払った分」を請求するのは別の問題(内部関係)
内部のルール:持分割合に応じて負担(民法第253条)
一方、共有者同士の内部関係では、固定資産税などの共有物の維持費は、各共有者の持分割合に応じて負担することが民法で定められています(民法第253条第1項)。
つまり、A・B・Cの3人で3分の1ずつの持分の不動産なら、固定資産税の総額を3万円とした場合、内部では各人1万円ずつの負担というのが基本ルールです。
ただしこのルールは任意規定です。話し合いで持分割合と異なる負担割合に決めることもできます。たとえば「実際に住んでいる人が全額負担する」という取り決めは有効です。ただし、この取り決めはあくまで共有者間の約束であり、自治体に対する連帯納付義務には影響しません。
注意
内部ルールが機能しないケース
共有者間で「住んでいる人が全額負担する」と決めていても、その住んでいる人が支払わなければ、自治体は他の共有者に全額を請求します。内部ルールはあくまで「後でお金を回収するための根拠」であり、自治体への支払いを免れる理由にはなりません。
あわせて読みたい
1人あたりの固定資産税額はどう決まる?【計算方法】
固定資産税の総額は、固定資産税評価額に税率をかけて計算されます。共有名義の場合、総額を各共有者の持分割合で按分した金額が、各人の内部負担額の目安になります。ただし住宅用地の特例など、軽減措置の適用を忘れずに計算する必要があります。
計算の3ステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| STEP1 評価額を確認 | 市区町村が算定する固定資産税評価額を調べる(固定資産評価証明書で確認) |
| STEP2 課税標準額を計算 | 評価額に住宅用地の特例などの軽減措置を適用する |
| STEP3 持分割合で按分 | 課税標準額 × 税率(標準1.4%)= 総税額 → 各人の持分割合を掛ける |
具体例:固定資産税評価額5,000万円の不動産を3人で3分の1ずつ共有する場合
- 土地の評価額:2,000万円(200㎡以下の小規模住宅用地と仮定)
- 建物の評価額:3,000万円
まず住宅用地の特例を適用します。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は、課税標準が評価額の6分の1に軽減されます(地方税法附則)。
- 土地の課税標準額:2,000万円 ÷ 6 ≒ 333万円
- 建物の課税標準額:3,000万円(軽減なし)
総税額を計算します(標準税率1.4%)。
- 土地:333万円 × 1.4% = 約4.7万円
- 建物:3,000万円 × 1.4% = 42万円
- 総税額:約46.7万円/年
これを3人で3分の1ずつ共有している場合、各人の負担額は約15.6万円(年間)です。
注意
軽減措置は共有者全員に適用される
住宅用地の特例や減免制度は、共有者全員に対して適用される制度です。「自分の持分だけ軽減してほしい」という個別の減額は、原則として認められません。自分だけ負担を減らしたい場合は、共有状態そのものを見直す(持分売却など)しか方法がないことを理解しておきましょう。
上記はあくまで標準的な計算例です。実際の税額は評価額・軽減措置の適用有無・自治体の税率によって変わるため、正確な金額を知りたい場合は固定資産課税台帳の閲覧や固定資産評価証明書の取得が必要です。
自分はどのパターンかチェック
以下の質問に該当するものがあれば、該当するセクションを重点的に読んでください。
- ☐ 今、自分が代表者で全額を立て替えている → 「固定資産税をめぐるトラブルと対処法」へ
- ☐ 共有者が固定資産税を払わず、滞納が始まっている → 「固定資産税を滞納するとどうなるか」へ
- ☐ そもそも固定資産税額がいくらか知りたい → 「計算方法」で理解
- ☐ 固定資産税の負担から抜け出したい → 「固定資産税の負担から抜け出す5つの方法」へ
納税通知書は「代表者」に届く
固定資産税の納税通知書は、共有者の中から自治体が指定する代表者に送付されます。自治体は共有者全員に個別に通知するのではなく、代表者1名にまとめて通知し、その代表者が全額を一括納付する形をとるのが一般的です。
代表者はどうやって決まるのか
代表者の決め方には明確な法律上の基準はなく、自治体の実務に委ねられています。多くの自治体では以下の順位で決められます。
- 共有者の中から代表者を届け出た人がいる場合 → その人
- 届け出がない場合 → 持分の最も大きい人
- 持分が同じ場合 → 共有者の中から自治体が選定
「代表者になった覚えはないのに、いつの間にか毎年納税通知書が届く」という状態はよくあります。これは自治体が便宜上、登記上の共有者のうち1人を代表者に指定した結果です。
代表者は変更できる
代表者は変更可能です。「ずっと自分だけが払っている」という状態なら、代表者を他の共有者に変更することを検討するのが現実的です。
ポイント
代表者変更の手続き
- 市区町村の税務課(資産税課)で「固定資産税納税義務者代表者変更届」を入手する
- 変更後の代表者になる人の同意を得る(事前の話し合いが不可欠)
- 必要事項を記入し、窓口または郵送で提出する
- 提出後、次回の納税通知書から変更後の代表者に送付される
注意点として、単に代表者を変更しただけでは連帯納付義務は変わりません。代表者が変わっても、書類が届く人が変わるだけで、自治体への支払義務の重さに変わりはありません。ただし「通知が届かないから払わなくてよい」という状態を防げるため、問題を顕在化させる効果はあります。
自治体によっては共有者ごとに個別納付できる
すべての自治体が対応しているわけではありませんが、一部の自治体では共有者ごとに分割して納付書を発行する「個別納付」に対応しています。これができれば、代表者1人が立て替える必要がなくなります。
対応の有無は自治体によって異なるため、直接問い合わせて確認するのが確実です。「共有名義の不動産の固定資産税を、持分割合ごとに個別に納付することは可能ですか」と聞いてみてください。
【現場のリアル】固定資産税をめぐる4つのトラブルと対処法
法律上のルールを理解したところで、現場で実際に起きているトラブルを見ていきます。固定資産税の負担をめぐるトラブルの多くは、「法律上の建前」と「各共有者の認識」のズレから発生します。
トラブル① 「住んでないから払わない」と共有者が拒否する
最も多いトラブルです。複数人で相続した実家を、そのうちの1人が住み続けているケースで発生しやすいパターンです。
具体例:兄弟3人で相続した実家
両親が亡くなり、長男・次男・三男の3人が実家を3分の1ずつ相続。長男がそのまま実家に住み続けている。固定資産税の納税通知書は長男に届く。
ところが次男・三男は「自分は住んでいない」「長男が住んでいるのだから長男が全額払うべきだ」と主張し、持分割合に応じた負担分を支払わない。長男側の言い分は「法律上は3人で按分だし、自分だけが全額を負担するのはおかしい」というもの。
このようなケースでは、固定資産税の負担問題が兄弟間の感情的な対立(長男だけが親の面倒を見た/遠方にいて何もできなかった等)と結びつき、解決が難しくなることが少なくありません。
この状態で長男が取れる現実的な選択肢としては、以下があります。
- まずは自治体に連絡し、個別納付が可能か確認する(長男が立て替えなくて済む方法がないか調べる)
- その上で、次男・三男に対して内容証明郵便で立替金の請求(求償権の行使)を行う
- それでも解決しない場合、民法第253条第2項に基づく共有持分買取請求権の行使や、持分売却による共有関係の解消を検討する
トラブル② 代表者が集めた税金を使い込んだ
共有者間で「代表者が各人の負担分を集めて一括納付する」という運用をしている場合、代表者が集めたお金を納付せずに自分の生活費などに流用するケースがあります。
具体例:代表者による使い込み
姉と妹の2人が実家を共有。姉が代表者となり、妹から毎年負担分の現金を受け取っていた。ところがある年、自治体から妹に直接「固定資産税が滞納になっています」と連絡が入る。調べてみると、姉は妹から集めたお金を自分の生活費に使い、納付していなかった。
この場合、妹が取るべき手順は以下の通りです。
- 自治体に事実を説明し、自分の負担分(持分割合の範囲)を直接納付する
- 姉に対して、立て替えた分(求償権)を内容証明で請求する
- 自治体に代表者変更届を提出し、今後は妹に納税通知書が届くようにする
このケースで重要なのは、妹は滞納分の全額を支払う必要があるという点です。連帯納付義務があるため、「私は姉に払った」「姉が使い込んだ」という事情は自治体への抗弁になりません。一旦立て替えてから、姉に対して求償する(民法第253条第1項)という手順が必要です。
トラブル③ 共有者が行方不明・認知症で支払えない
共有者の1人が行方不明だったり、認知症などで財産管理ができない場合、固定資産税の負担を他の共有者が全額負担せざるを得ません。このケースでは、話し合いによる解決が期待できないため、法的手続きが必要になることがあります。
認知症の共有者がいる場合、まず成年後見制度の利用を検討します。家庭裁判所に成年後見人を申し立て、財産管理を代行してもらい、そこから持分割合に応じた支払いをしてもらうルートがあります。ただし手続きに数ヶ月かかり、後見人の報酬(月額2〜3万円程度)も発生します。
行方不明の共有者がいる場合は、不在者財産管理制度の利用も検討できますが、実務的にはかなりハードルが高いのが実情です。
トラブル④ 共有者が死亡し、相続人が払わない
共有者が死亡すると、固定資産税の負担はその相続人に引き継がれます。しかし相続人が遠方に住んでいる・相続放棄をしている・相続登記をしていないなどの理由で、負担を拒否するケースがあります。
相続放棄がなされていた場合、その共有者の持分は次の順位の相続人に移りますが、支払いの拒否が続けば、結果的に残された共有者が全額を負担することになります。この場合も、まずは内部負担の求償を行い、それでも解決しない場合は共有状態そのものの解消(持分売却・共有物分割請求)を検討することになります。
共有者が固定資産税を払わない場合の4つの対処法
共有者が持分割合に応じた固定資産税を支払わない場合、代表者や他の共有者が全額を立て替え続けることになります。以下に、段階的に取れる法的な対処法を整理します。
| 対処法 | 難易度 | 費用 | 効果 |
|---|---|---|---|
| ① 内容証明郵便で求償権を行使する | 低 | 数千円 | 時効の進行を止め、心理的圧力になる |
| ② 民法253条2項の買取請求権を行使する | 中 | 弁護士費用+買取代金 | 相手の持分を強制的に取得できる |
| ③ 少額訴訟・本訴訟を起こす | 高 | 数万円〜十数万円 | 法的に確定した債権を得られる |
| ④ 共有状態そのものを解消する(持分売却・共有物分割請求) | 中〜高 | 状況による | 根本解決になる |
① 内容証明郵便で求償権を行使する
民法第253条第1項により、共有者は共有物の維持費(固定資産税含む)を持分割合に応じて負担する義務があります。自分が多く立て替えた分は、他の共有者に対して求償権として請求できます。
まずは内容証明郵便で、以下の内容を送付するのが現実的な第一歩です。
- いつ・いくらの固定資産税を立て替えたか
- 相手に求める負担額(持分割合に応じた金額)
- 支払期限(2週間〜1ヶ月程度)
- 支払いがない場合の対応(法的措置・持分売却等)
注意
求償権の消滅時効は5年
立て替え納付した日から5年が経過すると、求償権は時効で消滅します(民法第166条)。「今は我慢しよう」と放置していると、5年経った時点で相手への請求権自体がなくなります。過去に立て替えた分があるなら、早めに内容証明で請求するなど時効を中断する措置が必要です。
② 民法253条2項の買取請求権を行使する
2020年の民法改正により、共有者が1年以上、共有物の維持費(固定資産税など)の負担を履行しない場合、他の共有者はその相手に対して「相当の償金」を支払って、その持分を取得することができると定められました(民法第253条第2項)。
これは強い対処法です。たとえば、共有者が1年以上固定資産税を払わず、あなたが立て替え続けている場合、裁判所の手続きを経て相手の持分を強制的に取得できます。ただし以下の点に注意が必要です。
- 「1年以上の不履行」が要件。1年未満の滞りでは使えない
- 必ず裁判所の手続き(調停・訴訟)が必要。話し合いだけでは相手の持分を取れない
- 相手の持分を取得する代わりに、相当の対価(時価相当額)を支払う必要がある
- 最初は調停、不成立なら訴訟という流れが一般的で、時間と費用がかかる
③ 少額訴訟・本訴訟を起こす
求償権の行使は金銭の支払いを求める債権です。支払いを拒否する相手に対しては、裁判上の請求が可能です。
- 少額訴訟:60万円以下の金銭請求なら、原則1回の審理で判決が出る。費用も安く、本人訴訟でも対応可能
- 通常訴訟:60万円超の場合や、争いが複雑な場合は通常訴訟になる。弁護士に依頼するのが現実的
裁判で勝訴すれば、給与や預金の差押えなどの強制執行が可能になりますが、「相手に資産がなければ回収できない」というリスクは残ります。
④ 共有状態そのものを解消する
固定資産税の負担問題は、共有状態が続く限り毎年繰り返されます。根本的に解決したい場合、共有関係そのものを解消する選択肢を検討します。
具体的な方法としては、持分売却・共有者間の売買・不動産全体の売却・共有物分割請求などがあります。これらの詳細は後述の「固定資産税の負担から抜け出す5つの方法」で解説します。
固定資産税を滞納するとどうなる?【差押えまでの流れ】
固定資産税には連帯納付義務があるため、自分が持分割合どおりに支払っていても、他の共有者が滞納すれば自分の財産も差押えの対象になります。これは多くの人が見落としがちなリスクです。
具体例:滞納の「飛び火」リスク
兄と弟で実家を2分の1ずつ共有。弟は毎年自分の持分分の固定資産税をきちんと納付している。ところが兄が3年連続で滞納。自治体は弟の預金口座を調査し、滞納分を差し押さえた。弟は「自分はちゃんと払っているのに」と抗議したが、連帯納付義務があるためこの差押えは合法。
弟は全額を立て替えた後、兄に対して求償権を行使することになるが、兄に資産がなければ回収は難しい。つまり「自分は払っているから大丈夫」とは決して言えないのが、共有名義の固定資産税のリスクです。
| 段階 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 納期限 | 自治体ごとに設定(年4回の分割または一括) | 定められた期日までに納付 |
| 督促状 | 納期限から20日以内 | 督促状が発送される。延滞金の発生開始 |
| 延滞金発生 | 納期限の翌日から | 年2.4%(1ヶ月以内)→ 年8.7%(1ヶ月超) |
| 催告 | 督促後も滞納が続く場合 | 電話・文書での催告。財産調査が行われる |
| 差押え | 催告後も支払いがない場合 | 預金・給与・不動産(共有不動産全体)が差押え対象に |
| 公売 | 差押えから一定期間後 | 不動産が競売に。共有不動産全体が売却される |
注意
共有不動産の差押えリスクは全体に及ぶ
固定資産税は不動産そのものにかかる税金であるため、滞納が続けば共有不動産全体(自分の持分だけでなく、相手の持分も含む)が差押え・公売の対象になります。
自分がきちんと持分割合どおりに納付していても、他の共有者が滞納していると、自分が支払っていない部分まで含めて共有不動産全体に差押えがかかる可能性があります。このリスクを理解したうえで、早期の対応を検討する必要があります。
【ケース別】マンション・私道・ゴミ捨て場の共有持分と固定資産税
同じ「共有持分」でも、物件の種類によって固定資産税の扱いが異なります。代表的な3つのケースを整理します。
マンション(区分所有)の場合
マンションは区分所有権という概念で成り立っています。自分が住んでいる部屋(専有部分)は区分所有権として、単独で固定資産税が課税されます。一方、廊下・エレベーター・敷地などの共用部分は、全区分所有者の共有持分となっています。
この場合の固定資産税は、以下のように処理されます。
- 専有部分(自分の部屋):各区分所有者に個別に課税される
- 敷地の共有持分:各区分所有者の専有面積の割合で按分され、各戸の固定資産税に含めて課税される
- つまり、マンションの固定資産税は「専有部分の評価額」と「敷地の共有持分の評価額」を合算して、各区分所有者に個別に課税される形
実務上は、マンションの固定資産税は各所有者に直接納税通知書が届き、戸建ての共有のように「代表者が取りまとめる」必要はありません。
私道の共有持分の場合
私道(個人が所有する道路)を複数人で共有している場合、その私道の共有持分にも原則として固定資産税が課税されます。
ただし以下のような例外があります。
- 不特定多数の人が通行する私道で、公共性が高いと認められる場合は、非課税になる可能性がある(自治体によって判断が異なる)
- 相続税評価では、私道の評価額は一般の宅地より低く評価されるケースが多い(路線価の30%程度)
- 固定資産税の評価額も通常の宅地より低いことが多い
私道の固定資産税が問題になるのは、袋小路の私道や行き止まりの私道など、特定の共有者だけが利用しているようなケースです。「毎年数万円の固定資産税がかかるのに、自分はその私道をほとんど使っていない」という場合、内部負担の見直しや、私道の持分売却も検討する価値があります。
ゴミ捨て場の共有持分の場合
住宅地内のゴミ捨て場の用地を周辺の住民が共有しているケースがあります。この場合も、土地としての評価額に応じて固定資産税の課税対象になります。
ただしゴミ捨て場の場合は以下の点に注意が必要です。
- 適用面積が狭いため、評価額自体が低額であることがほとんど
- 一部の自治体では、ゴミステーション用地としての減免制度がある(自治体ごとに確認が必要)
- 固定資産税額が年数百円〜数千円程度と少額なケースも多く、実務上は問題になりにくい
ゴミ捨て場の共有持分で固定資産税のトラブルが発生するのは、評価額が大きい土地にゴミ捨て場が設置されている場合や、共有者間で特約がないまま「誰が払うか」が決まっていないケースです。
固定資産税の負担から抜け出す5つの方法
共有名義の固定資産税の負担は、共有状態が続く限り毎年続きます。抜本的に解決したい場合、以下の5つの方法を検討します。
また、固定資産税の評価額が高い不動産は、相続税の評価額も高い傾向があります。固定資産税の負担に悩んでいるなら、相続発生時に相続税の申告が必要かどうかも併せて税理士に確認しておくと、後悔のない判断ができます。
| 方法 | 手間 | 期間 | 費用 | 確実性 | 共有者との関係 |
|---|---|---|---|---|---|
| ①自分の持分を専門業者に売却 | 低 | 1〜3ヶ月 | 低 | 高い | 関係悪化のリスク少 |
| ②共有者同士で売買 | 中 | 1〜2ヶ月 | 中 | 話し合い次第 | 良好ならベスト |
| ③不動産全体を売却 | 高い | 3〜6ヶ月 | 中 | 全員同意が必要 | 全員同意が必要 |
| ④共有持分を放棄 | 低 | 1ヶ月 | 贈与税リスク | 高い | 事前通知が必要 |
| ⑤共有物分割請求 | 高い | 6ヶ月〜1年以上 | 高い | 中(訴訟リスク) | ほぼ確実に悪化 |
① 自分の共有持分を専門業者に売却する
固定資産税の負担を負いたくない場合、最も現実的な選択肢の1つが共有持分の買取専門業者に自分の持分だけを売却する方法です。
共有持分の売却は、他の共有者の同意は不要です(民法上の「処分行為」には当たらないため)。ただし、買い取った業者が共有者になるため、相手によっては共有者との関係が複雑になる可能性があります。
この方法が向いているのは、以下のようなケースです。
- 共有者と話し合いができない(連絡が取れない・拒否されている)
- 毎年の固定資産税の負担が家計を圧迫している
- 遠方に住んでおり、管理や手続きが負担になっている
- 将来的にその不動産を使う予定がない
ただし、共有持分の買取額は不動産全体の価格を単純に持分割合で按分した金額にはなりません。評価額の5〜30%程度が相場で、物件の状態や共有者の関係、占有の有無によって大きく変動します。そのため、1社だけで査定を出して決めるのではなく、共有持分の取り扱いに実績のある複数の業者で条件を比較することが重要です。
ポイント
持分売却が現実的なのはこんな人
固定資産税の負担に耐えかねて、自分だけでも先に整理したいと考えている人に向いています。
ただし、共有持分の査定額は持分割合・占有の有無・共有者との関係・登記の状態によって業者ごとに判断が分かれ、同じ物件でも提示額に差が出ます。1社だけで決めると相場観がないまま契約することになるため、共有持分の取り扱いに慣れた複数社で条件を比べるところから始めるのが安全です。
② 共有者同士で売買する
共有者間の関係が良好であれば、特定の共有者が他の共有者の持分を買い取る方法があります。これなら不動産全体を1人の所有にでき、固定資産税の負担問題も解消します。
この方法が現実的なのは、以下のようなケースです。
- 実際に住んでいる共有者がいる(その人が買い取って完全に自分のものにする)
- 持分が小さく、買い取る側の資金負担が少ない
- 共有者間の信頼関係がある
③ 不動産全体を売却する
共有者全員の同意があれば、不動産全体を第三者に売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法があります。これが最もスッキリした解決方法ですが、全員の同意が必要なため、1人でも反対者がいると実現できません。
④ 共有持分を放棄する
固定資産税の負担をなくす方法として、「持分を放棄すればいいのでは」と考える人もいます。しかし持分放棄には以下のリスクがあります。
- 贈与税のリスク:持分放棄は、法律上は他の共有者への贈与とみなされる可能性がある。時価相当額に対して贈与税が課税されるケースがある
- 過去の滞納分は消えない:放棄しても、それまでに発生した固定資産税の連帯納付義務や滞納分が消えるわけではない
- 登記が必要:放棄だけでは登記上の権利は消えず、所有権移転登記が必要
あわせて読みたい
⑤ 共有物分割請求をする
話し合いがつかない場合、共有物分割請求(民法第258条)という法的手続きがあります。裁判所に申し立てて、共有状態を強制的に解消する方法です。
共有物分割請求には3つの方法があります。
- 現物分割:土地を物理的に分ける。現実的には難しいケースが多い
- 代金分割:不動産全体を競売にかけ、売却代金を分配する。最も多いパターンだが、市場価格より安くなる傾向がある
- 価格賠償:特定の共有者が他の持分を買い取り、代金を支払う
ただし、この方法は時間と費用がかかり(半年〜1年以上、弁護士費用数十万円)、共有者との関係が大きく悪化することが避けられません。他の方法を検討してから、最後の手段として考えるべきです。
よくある質問(FAQ)
共有名義の固定資産税は誰が払うのですか?
法律上は共有者全員に連帯納付義務があります。ただし実務上は、自治体が指定した代表者に納税通知書が届き、その代表者が全額を一括納付し、後に持分割合に応じて他の共有者から回収するのが一般的です。
固定資産税の負担割合は話し合いで変えられますか?
はい。民法第253条の内部負担ルールは任意規定であるため、共有者間の特約で持分割合と異なる負担割合にすることは可能です。ただし、この特約はあくまで共有者間の内部的な約束であり、自治体への連帯納付義務には影響しません。
共有者が固定資産税を払わない場合、代わりに払った分は請求できますか?
請求できます(求償権)。ただし、立て替え納付した日から5年で消滅時効にかかるため、早めに内容証明郵便などで請求する必要があります。また、請求しても相手に資産がなければ回収できないリスクもあります。
固定資産税の代表者はどうやって変更しますか?
市区町村の税務課で「固定資産税納税義務者代表者変更届」を提出することで変更できます。ただし、変更後の代表者になる人の同意が必要です。変更後も連帯納付義務自体は変わりません。
マンションの共有持分でも固定資産税はかかりますか?
マンションの場合、専有部分(自分の部屋)には個別に固定資産税が課税されます。敷地や共用部分の共有持分は、各区分所有者の専有面積割合で按分され、各戸の固定資産税に含めて課税されるため、実務上は各所有者に個別の納税通知書が届きます。
ゴミ捨て場の共有持分にも固定資産税がかかるのですか?
ゴミ捨て場の土地も課税対象の土地であれば固定資産税がかかります。ただし面積が狭いため評価額が低く、年数百円〜数千円程度であることがほとんどです。一部の自治体ではゴミステーション用地の減免制度があるため、該当する場合は役所に確認するとよいでしょう。
固定資産税を滞納するとどうなりますか?
督促状→延滞金発生(年2.4%→8.7%)→催告→差押え→公売という流れになります。連帯納付義務があるため、自分が持分割合どおりに支払っていても、他の共有者の滞納で共有不動産全体が差押えの対象になるリスクがあります。
固定資産税が払えない場合、共有持分を売れば負担はなくなりますか?
はい。自分の共有持分を売却すれば、売却後の固定資産税の負担はなくなります。ただし、それまでの滞納分や過去の立て替え分については、売却後も求償権として請求することは可能です。
まとめ
共有名義の固定資産税は、「法律上は共有者全員が平等に負担するもの」ですが、運用上は代表者1人が全額を立て替え、後に回収する形になりやすく、その「立て替え」が固定化することでトラブルが発生します。
もし今、あなたが以下のいずれかの状況に当てはまるなら、早めの行動が重要です。
- 自分が代表者で毎年立て替えている→ 代表者変更や個別納付の確認、または持分売却の検討を
- 共有者が払わず滞納が始まっている→ 求償権の時効(5年)前に内容証明で請求。共有状態の解消も視野に
- 固定資産税の負担に疲れている→ 持分割合に応じた内部負担の話し合い、または売却による共有解消を
まずは自治体で固定資産税の評価額を確認し、現状を正確に把握するところから始めてください。その上で、話し合い・代表者変更・持分売却・放棄など、複数の選択肢の中から自分に合った方法を検討しましょう。
あわせて読みたい
共有持分の売却で迷ったら
株式会社ネクサスプロパティマネジメント
共有持分・再建築不可・事故物件など幅広い訳あり不動産に対応。AI査定で価格の目安がすぐわかり、スピード重視で整理したい人に向いています。