目次

共有持分の放棄には費用がかかります。「無料で手放せる」と思って放棄すると、持分を取得した共有者に数十万円〜数百万円の贈与税がかかるケースがあります。放棄する側(手放す人)の実費は数千円程度で済む一方、持分を取得する側には贈与税・登録免許税・不動産取得税という3つの税金がまとめて課される仕組みです。
この記事で分かること:
- 共有持分の放棄で実際にかかる費用の内訳と、誰が負担するのか
- 贈与税が発生するケースと発生しないケースの判断基準
- 贈与税の具体的な計算方法(シミュレーション付き)
- 放棄する側にもあるリスク(連帯納付義務・固定資産税の負担)
- 贈与税を回避する方法と、放棄より売却が現実的なケース
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
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まずは自分の立場を確認する
共有持分の放棄にかかる税金は、「放棄する側(手放す人)」と「持分を取得する側(他の共有者)」でまったく違います。以下の3つの質問に答えると、あなたがどちらの立場か、どの税金に注意すべきかが分かります。
| 質問 | 選択肢 | あなたの回答 |
|---|---|---|
| ① あなたは「放棄したい人」?「放棄されそうな人」? | A. 自分が放棄したい(手放す側) B. 他の共有者が放棄しようとしている(取得する側) |
→ Aの人は「放棄者のリスク(連帯納付義務)」 → Bの人は「贈与税・不動産取得税」が重要 |
| ② 共有持分の評価額(固定資産税評価額ベース)はいくら? | A. 1人あたり110万円以下 B. 1人あたり110万円超 |
→ Aなら贈与税は非課税 → Bなら贈与税の申告が必要 |
| ③ 共有者との関係は? | A. 親子・祖父母と孫 B. 兄弟・配偶者・他人 |
→ Aなら特例税率(やや低め) → Bなら一般税率(高め) |
この3つが分かれば、あなたのケースでいくら税金がかかるか計算できるようになります。まずは基本の仕組みから見ていきましょう。
放棄すると何が起きるのか【基本の仕組み】
共有持分の放棄は、民法第255条で認められている権利です。同条は「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定めています。
ポイントは2つです。
- 放棄は単独行為であり、他の共有者の同意は不要
- 放棄された持分は、残った共有者の元の持分割合に応じて自動的に按分される
持分放棄 按分の具体例
A・B・Cの3人が各3分の1で共有する不動産(評価額1,800万円)で、Aが放棄した場合
Aの持分(評価額600万円)は、BとCに按分される。
Bの取得額 = 1,800万円 × 1/3(Aの持分) ×(Bの元持分1/3 ÷ B+Cの合計持分2/3)
= 1,800万円 × 1/3 × 1/2 = 300万円
Cも同様に 300万円 を取得する(各人の評価額は300万円ずつ増加)。
ここで重要なのは、放棄=「ただ持分が他の共有者に移るだけ」ではなく、税法上は贈与と同じ扱いになるという点です。この点を理解していないと、想定外の税負担でトラブルになります。
放棄と相続放棄・共有物分割の違い
共有持分の放棄 vs 相続放棄
・持分放棄=生きている間に自分の持分だけ手放す(部分的な放棄が可能)
・相続放棄=故人の全財産を放棄(家庭裁判所で手続き・3か月以内)。不動産だけ選んで放棄できない
共有持分の放棄 vs 共有物分割請求
・持分放棄=持分を他の共有者に移すだけで共有関係は継続(あなただけ抜ける)
・共有物分割=共有関係そのものを解消(物件全体を売却・分割する)。裁判になることもある
放棄の登記手続きには共有者の協力が必要
放棄による所有権移転登記は、登記申請書の「原因」欄に「令和○年○月○日持分放棄」と記載し、放棄者と取得者の共同申請で行います。必要書類は以下の通りです。
- 登記申請書(法務局の窓口またはオンラインで入手)
- 放棄者の印鑑証明書(市区町村発行、3か月以内のもの)
- 登記識別情報または登記済証(権利証)
- 固定資産評価証明書(納税通知書でも可)
- 収入印紙(登録免許税分)
司法書士に依頼する場合の報酬は数万円〜10万円程度が相場です。自分で手続きすることも可能ですが、評価額や権利関係が複雑な場合は司法書士に依頼したほうが確実です。
放棄の費用は「誰が」「いくら」負担するのか
放棄にかかる費用は、手放す側と取得する側で全く異なります。
| 項目 | 放棄する側(手放す人) | 持分を取得する側(他の共有者) |
|---|---|---|
| 印鑑証明書・住民票 | 数百円〜1,000円程度 | 数百円〜1,000円程度 |
| 登録免許税 | 原則として負担なし | 固定資産評価額(持分相当)× 2% |
| 贈与税 | なし | (取得額 − 110万円)× 税率 − 控除額 【最大の負担】 |
| 不動産取得税 | なし | 固定資産評価額(持分相当)× 3% (住宅・住宅用地は令和9年3月までの軽減税率) |
| 固定資産税(放棄した年) | 年度全額を負担※ | なし(翌年度から) |
| 司法書士報酬(依頼する場合) | なし | 数万円〜10万円程度 |
※固定資産税は「1月1日時点の所有者」に課税されるため、年度途中で放棄してもその年は放棄者が全額払うことになります。
費用の詳細な内訳を知りたい方へ
放棄する側(手放す人)の費用は数千円で済む
放棄する側が直接払う費用は、主に印鑑証明書や住民票の取得手数料だけで、数千円程度です。登録免許税は取得者側が負担するため、自分から積極的に支払う税金は基本的にありません。
ただし「固定資産税を年度全額負担する」「放棄年の固定資産税は精算しないと不公平になる」という点は、放棄者にも実質的な費用が発生するケースです。
持分を取得する側(他の共有者)に大きな負担が集中する
放棄で一番お金がかかるのは、「持分を取得した側」です。放棄された持分に対して、登録免許税・贈与税・不動産取得税の3つの税金がまとめて課されます。
特に贈与税は、取得額が大きいほど高額になります。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
【最重要】放棄と贈与税の関係を正しく理解する
共有持分の放棄で最も注意すべきなのが、「みなし贈与」という税務上の取り扱いです。
みなし贈与とは?(相続税法基本通達9-12)
民法上、放棄は「単独行為」であり贈与契約ではありません。しかし、相続税法では課税逃れを防ぐため、放棄された持分も「贈与により取得したものとみなす」と定められています(相続税法基本通達9-12「共有物の持分の放棄があった場合の課税関係」)。
具体的な通達の要旨は以下の通りです。
「共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄したとき…その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与…により取得したものとして取り扱う。」
つまり、放棄=税法上は「贈与」として扱われ、取得した側に贈与税が課税されるのです。「タダで譲るから税金もタダ」にはならない点が、多くの人が見落としがちな落とし穴です。
贈与税がかかるケース/かからないケースの早見表
| 条件 | 贈与税 | 理由 |
|---|---|---|
| 取得額が110万円以下 | 非課税 | 基礎控除(年間110万円)以下だから申告不要 |
| 取得額が110万円超 | 課税 | 基礎控除を超える部分に贈与税がかかる |
| 取得者が複数いる(按分) | 各人ごとに課税判定 | 各人の取得額が110万円以下なら非課税 |
| 放棄ではなく「時価で売買」した | 非課税(放棄ではないため) | 売買は譲渡所得税の対象(別途計算) |
| 共有物分割による取得 | 非課税 | 共有物分割は贈与とみなされない |
【体験談】「タダでいいよ」と言ったら次男に19万円の税通知
両親が亡くなり、長男・次男・三男の3人が実家(固定資産税評価額1,800万円)を3分の1ずつ相続。長男は遠方に住んでおり管理が面倒だったため、「もういらないから好きにしていいよ」と自分の持分を放棄した。
放棄された持分(評価額600万円)は、次男と三男に各300万円ずつ按分される。長男は「タダで手放したから終わった」と思っていたが、後日次男から連絡があり、贈与税の申告書が届いたという。
兄弟間の放棄は「一般税率」が適用され、次男の税額は(300万円−110万円)×10%(200万円以下のため)=19万円。三男も同額。次男と三男は合計38万円もの税金を負担することになり、長男との関係が気まずくなった。
さらに、登録免許税(各6万円)と不動産取得税(各9万円)も加わり、各人の実質負担は約34万円に。
「無料で手放せる」と思って放棄すると、このように取得した側に想定外の税金がのしかかります。
贈与税は「誰が」「いつ」「どこに」申告するのか
贈与税の申告・納付に関する実務は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告する人(納税義務者) | 持分を取得した共有者(放棄者ではない) |
| 申告期限 | 放棄(贈与)を受けた年の翌年2月1日〜3月15日 |
| 提出先 | 取得者の住所地を管轄する税務署 |
| 申告書の種類 | 贈与税申告書(第一表) |
| 必要な添付書類 | 固定資産評価証明書、登記事項証明書、取得者のマイナンバー確認書類 |
| 納付方法 | 現金一括納付が原則(30万円超で延納制度あり) |
| 基礎控除以下の場合 | 申告不要(ただし税務署が課税関係を把握していない場合があるため念のため確認推奨) |
注意
取得者が複数いる場合は、各人がそれぞれ申告する必要があります(連絡して申告を放棄できない)。誰かが申告を忘れると、その人だけ延滞税や無申告加算税の対象になります。
贈与税の具体的な計算方法【STEP1〜STEP4】
実際にいくらの贈与税がかかるのか、計算の流れを4つのステップで解説します。
STEP1:固定資産税評価額を確認する
贈与税の計算で使う「取得額」は、時価(市場価格)ではなく固定資産税評価額を基準とします。評価額は市区町村から毎年送られてくる固定資産税納税通知書の「価格」欄、または固定資産評価証明書で確認できます。
土地の場合は時価の7割前後、建物の場合は時価の5〜6割程度になることが多いです。一般論として、固定資産税評価額は市場価格より低く設定されています。
共有持分の調べ方を詳しく知りたい方へ
STEP2:持分割合で按分する(複数共有者がいる場合)
放棄された持分は、残った共有者の元の持分割合に応じて按分されます。課税対象となる各人の取得額は、以下の式で計算します。
各人の取得額 = 物件の固定資産税評価額 × 放棄者の持分割合 ×(自分の元持分 ÷ 残った共有者の持分合計)
按分計算の具体例
パターン①:A・Bの2人で各1/2のケース
Aが放棄 → BがAの持分1/2を全額取得
Bの取得額 = 物件評価額 × 1/2(シンプルに半分)
パターン②:A・B・Cの3人で各1/3のケース
Aが放棄 → BとCが按分して取得(2人とも元持分が同じため均等)
Bの取得額 = 物件評価額 × 1/3 ×(1/3 ÷ 2/3)= 物件評価額 × 1/6
Cも同様に物件評価額 × 1/6
パターン③:Aが1/2、Bが1/4、Cが1/4のケース
Aが放棄 → BとCが元の持分割合に応じて按分
Bの取得額 = 物件評価額 × 1/2 ×(1/4 ÷ 1/2)= 物件評価額 × 1/4
Cの取得額 = 物件評価額 × 1/2 ×(1/4 ÷ 1/2)= 物件評価額 × 1/4
(BもCも同じ額を取得する)
STEP3:基礎控除110万円を差し引く
各人の取得額が分かったら、そこから年間の基礎控除額110万円を差し引きます。
課税価格 = 各人の取得額 − 110万円(最低0円)
課税価格が0円以下(つまり取得額が110万円以下)なら、贈与税の申告は不要です。放棄者1人がいて取得者が複数いる場合、各人ごとに110万円の基礎控除が適用されるため、取得者が多いほど非課税になりやすくなります。
STEP4:税率をかける(一般税率 vs 特例税率)
課税価格に税率をかけ、控除額を差し引くと税額が出ます。ここで重要なのが、共有者間の関係によって適用される税率区分が変わることです。
| 共有者間の関係 | 適用される税率 | 具体例 |
|---|---|---|
| 兄弟姉妹間 | 一般税率(最高55%) | 兄が弟に、姉が妹に放棄 |
| 親→子(18歳以上) | 特例税率(最高55%・低めに設計) | 親が子どもに放棄 |
| 子→親 | 一般税率(直系尊属から子への特例は逆方向は対象外) | 子が親に放棄 |
| 夫婦間 | 一般税率(配偶者は直系尊属に該当せず) | 夫が妻に放棄 |
| 他人(赤の他人の共有者) | 一般税率(最高55%) | 投資用不動産の共有者間 |
注意
兄弟間の共有持分放棄は「一般税率」が適用されます。多くの共有持分は相続で兄弟間になりがちで、その場合は一般税率(最高55%)になるため注意が必要です。親から子への放棄(特例税率)よりも高い税率になることを覚えておきましょう。
一般税率の速算表(国税庁No.4408 令和7年4月1日現在):
| 課税価格(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
評価額別シミュレーション表
物件の固定資産税評価額ごとに、各取得者にかかる贈与税の目安をまとめました(兄弟間・一般税率で計算)。
| 物件評価額 | 持分割合 | 放棄者の持分評価額 | 取得者が1人の場合の贈与税 | 取得者が2人の場合(均等按分)の贈与税(各人) |
|---|---|---|---|---|
| 600万円 | 1/2 | 300万円 | 19万円 | ー |
| 1,800万円 | 1/3 | 600万円 | 82万円 | 19万円(各人300万円取得) |
| 3,000万円 | 1/2 | 1,500万円 | 450.5万円 | 131万円(各人750万円取得) |
| 5,000万円 | 1/3 | 約1,667万円 | 528.5万円 | 約164.2万円(各人約833万円取得) |
※課税価格=(取得額 − 110万円)に国税庁No.4408の一般税率を適用。正確な税額は税務署または税理士にご確認ください。
贈与税以外に取得者側にかかる税金
取得者側には、贈与税以外にも2つの税金がかかります。
| 税金の種類 | 税率 | 計算の基準 | 負担者 |
|---|---|---|---|
| 登録免許税 | 2% | 固定資産税評価額(持分相当) | 取得者 |
| 不動産取得税 | 3%(令和9年3月までの軽減税率) | 固定資産税評価額(持分相当) | 取得者 |
| 贈与税 | 10%〜55%(一般税率) | 取得額 − 基礎控除110万円 | 取得者 |
登録免許税(固定資産評価額×2%)
放棄による所有権移転登記を行う際に、取得者側が負担する税金です。放棄による登記は「贈与」扱いとなるため、税率は2%です(売買の場合は原則2%、相続の場合は0.4%)。収入印紙で納付します。
評価額300万円の持分を取得した場合:300万円 × 2% = 6万円
不動産取得税(固定資産評価額×3%)
放棄によって不動産の持分を取得した側に課される都道府県税です。住宅及び住宅用地については令和9年3月31日まで軽減税率3%が適用されます(本則は4%。商業地や非住宅用地の場合は本則税率が適用される可能性があるため要確認です)。
注意
共有物分割による取得は不動産取得税が非課税ですが、放棄(みなし贈与)は非課税の対象外です(地方税法第73条の7)。手続きの方法によって税負担が変わる点を覚えておきましょう。
評価額300万円の持分を取得した場合:300万円 × 3% = 9万円
取得者側の総負担額シミュレーション
贈与税に加えて登録免許税・不動産取得税も合計すると、取得者側の負担はさらに重くなります。以下は兄弟間・一般税率で計算した総負担額です。
| 物件評価額 | 持分割合 | 放棄者の持分評価額 | 贈与税 | 登録免許税(2%) | 不動産取得税(3%) | 取得者側の総負担額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 600万円 | 1/2 | 300万円 | 19万円 | 6万円 | 9万円 | 34万円 |
| 1,800万円 | 1/3 | 600万円(取得者2人按分・各300万円) | 各19万円(計38万円) | 各6万円(計12万円) | 各9万円(計18万円) | 各34万円(計68万円) |
| 3,000万円 | 1/2 | 1,500万円 | 450.5万円 | 30万円 | 45万円 | 525.5万円 |
「無料で持分がもらえる」と思っていた取得者にとって、総額でこれだけの負担が生じる可能性があることを理解しておかなければなりません。
固定資産税の精算も必要
固定資産税は原則として1月1日時点の所有者にその年度全額が課税されます。年度途中で放棄しても、その年の固定資産税は放棄者が全額負担することになります。
そのため、放棄後に取得者との間で「年度按分で精算する」取り決めをしないと、不公平が生じます。ただし、この精算は法令で義務付けられているわけではなく、当事者間の合意が必要です。
放棄者(手放す側)にもリスクがある
「放棄する側はタダで済む」と思われがちですが、実際には以下のリスクがあります。
連帯納付義務【見落としがちな最大のリスク】
相続税法第34条第4項に基づき、贈与税について「贈与をした者」(税法上は放棄者も該当)は、受贈者(持分を取得した共有者)の贈与税について連帯納付義務を負います。
つまり、取得した共有者が贈与税を滞納した場合、放棄者にも税務署から督促が来る可能性があるのです。
【体験談】「もう関係ない」と思っていたら税務署から通知
実家の共有持分(1/3)を弟に放棄した兄。放棄後は「もう自分には関係ない」と考えていた。ところが1年後、弟が突然の失業で贈与税(約90万円)を滞納。税務署から兄にも連帯納付の通知が届いた。
兄は「タダで手放したのに、なぜ税金を払わされるのか」と納得できず税理士に相談。結果的に兄が立て替え、弟から分割で返してもらうことで決着したが、想定外の出費と精神的負担を強いられた。
放棄したからといって、税金の問題から完全に解放されるわけではないという現実を覚えておく必要があります。
連帯納付義務の範囲は「贈与した財産の価額を限度」とされています(裁決事例:平成14年5月10日裁決)。つまり、取得者が贈与税を払えなくなったとしても、放棄者が負担するのは放棄した持分の評価額相当が上限です。
連帯納付義務への対策:
- 放棄する前に、取得者に「贈与税を確実に納付できるか」を確認する
- 取得者との間で「税金は取得者が負担する」旨の念書を取り交わす(法的に連帯納付義務が消えるわけではないが、事後的な求償の根拠になる)
- 取得者が失業リスクや収入変動の大きい職業の場合は、なおさら注意が必要
- 不安がある場合は放棄前に税理士に相談する(税理士費用は1〜2万円程度)
登記の共同申請には共有者の協力が必要
放棄による所有権移転登記は、原則として放棄者と取得者の共同申請で行います。取得者が「税金がかかるから嫌だ」と協力を拒否した場合、登記が進まず、法的な解決には裁判所の手続き(登記引取請求訴訟)が必要になるケースもあります。
放棄した年の固定資産税は全額自己負担
前述の通り、年度途中の放棄では、その年の固定資産税は放棄者が全額負担します。取得者との間で按分精算の合意ができないまま放棄すると、実際より多くの固定資産税を払う結果になります。
放棄は撤回できない
いったん放棄の意思表示をし、登記が完了すると、原則として放棄を撤回することはできません。後で「やっぱり売ればよかった」と思っても、元の状態には戻せません。
贈与税を回避するには?5つの方法
贈与税を回避したい場合、以下の選択肢があります。
| 方法 | 概要 | 贈与税 | 現実性 |
|---|---|---|---|
| ① 基礎控除110万円以内に収める | 各人の取得額が110万円以下になるよう調整 | 非課税 | △ 評価額次第 |
| ② 売却に切り替える | 共有持分を買取業者に売却する | 不要(譲渡所得税は放棄者側) | ◎ 最も現実的 |
| ③ 代償金付き共有物分割 | 裁判所の手続きで、代償金を支払って共有解消 | 非課税 | ○ 手続きは複雑 |
| ④ 時価で売買する | 放棄ではなく、適正な価格で共有者間で売買 | 不要(譲渡所得税は放棄者側) | ○ 資金が必要 |
| ⑤ 相続放棄との使い分け | 故人の財産を全て放棄する(共有持分だけではない) | 非課税 | △ 全財産対象で使いにくい |
① 基礎控除110万円以内に収める
取得額が110万円以下なら贈与税は非課税です。物件評価額が低い場合、または取得者が複数いて按分後の1人あたりが110万円以下になるケースでは、放棄でも贈与税がかかりません。
② 売却に切り替える【最も現実的】
共有持分を買取業者に売却すれば、放棄とは異なり贈与税は発生しません。売却代金が入るため、放棄者にも金銭的なメリットがあります。「放棄したい」と思ったら、まず売却を検討するのが現実的です。
③ 代償金付き共有物分割
裁判所の共有物分割請求で、Aが持分をBに移し、BがAに代償金を支払う方法です。この場合、共有物分割=贈与とみなされないため、取得者に贈与税はかかりません(ただしBに支払い資金が必要)。
④ 時価で売買する
放棄ではなく、適正な時価で共有者間で売買すれば、贈与税ではなく譲渡所得税の問題になります。譲渡所得税は放棄者側が負担しますが、売買代金が入るので実質的な負担は軽減されます。
⑤ 相続放棄との使い分け
相続発生から3か月以内であれば、家庭裁判所で相続放棄をすることで不動産を含む全財産を手放せます。ただしこれは「共有持分だけ」を選んで放棄する方法ではなく、すべての財産(預金も含む)を失うリスクがあります。
放棄と売却、結局どちらが得か【手取り額で比較】
金銭的な観点から、放棄と売却を具体的な数字で比較します。
手取り額シミュレーション:評価額1,800万円・持分1/3の場合
| 比較項目 | 放棄 | 売却(買取業者)※ |
|---|---|---|
| 放棄者(手放す人)の手取り | 0円(対価なし) | 約100〜180万円(査定額から譲渡所得税を差し引いた実質手取り) |
| 取得者の負担 | 贈与税19万円 + 登録免許税6万円 + 不動産取得税9万円 = 34万円 | 0円(負担なし) |
| 放棄者と取得者の合計収支 | 0 − 34万円 = ▲34万円 | 100〜180万円 − 0円 = +100〜180万円 |
※共有持分の買取査定額は、物件の状況や共有者との関係によって異なります。通常、時価の10〜30%程度が目安です。
この比較から分かる通り、放棄は放棄者・取得者双方にとって金銭的に不利になるケースが多いのです。
放棄が向いているケース
- 物件の評価額が低く、取得者(複数)の1人あたりの取得額が110万円以下になる
- 共有者との関係が良好で、事前に税金の負担を説明し合意が取れている
- 放棄者に買取業者と交渉する時間・労力がない(急ぎで手放したい)
- 共有者が「持分をもらっても税金を負担できる」と言っている
売却が向いているケース
- 物件の評価額が高く、取得者に高額な贈与税がかかる
- 共有者との関係が悪く、税金の話ができない
- 放棄者自身にも現金が必要(売却代金が入る)
- 取得者が「税金がかかるから放棄は受けたくない」と拒否している
- 物件を第三者に売却して、共有関係そのものを解消したい
放棄より売却の方が現実的であるケースが多い理由は、以下の3点に集約されます。
- 放棄者に現金が入る(0円ではない)
- 取得者に税金の負担が生じない(人間関係を壊さない)
- 共有関係そのものを解消できる(放棄だと共有関係は継続)
ただし、共有持分の買取査定は物件の状態や共有者との関係、持分割合によって業者ごとに判断が分かれます。1社だけで決めるのではなく、共有持分の取り扱いに慣れた複数社で条件を比べるところから始めるのが安全です。
まずは買取業者の査定を無料で受けてみて、自分の持分にどれくらいの価値があるのかを把握することから始めましょう。「放棄しよう」と決めるのは、売却という選択肢を確認した後でも遅くはありません。
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よくある質問(FAQ)
共有持分を放棄すると贈与税はかかりますか?
かかるケースとかからないケースがあります。放棄された持分は税法上「みなし贈与」として扱われ、持分を取得した共有者に贈与税が課されます。ただし、各人の取得額が年間の基礎控除110万円以下であれば贈与税は非課税で、申告も不要です。取得額が110万円を超える場合は、超えた部分に対して贈与税がかかります。
贈与税は誰が払うのですか?放棄する人?それとも取得する人?
持分を取得した共有者が支払います。放棄者(手放す人)に直接の納税義務はありません。ただし、相続税法第34条第4項に基づく連帯納付義務があり、取得者が滞納した場合には放棄者にも督促が来る可能性があります。放棄前に取得者の支払い能力を確認しておくことが重要です。
兄弟間で共有持分を放棄した場合の贈与税率は?
一般税率(最高55%)が適用されます。兄弟は直系尊属に該当しないため、親から子への放棄に適用される特例税率(やや低め)の対象外です。多くの共有持分放棄は兄弟間で発生するため、一般税率で計算することになります。
基礎控除110万円以下なら申告は不要ですか?
はい、不要です。ただし、翌年に複数の放棄があったり、他の贈与と合算して110万円を超えている場合は申告が必要になります。また、税務署が課税関係を把握していないケースもあるため、念のため税理士に確認することをおすすめします。
放棄した側にも税金はかかりますか?
直接の税金はほぼありませんが、2つのリスクがあります。1つ目は連帯納付義務で、取得者が贈与税を滞納すると放棄者に督促が来ます。2つ目は固定資産税の負担で、年度途中に放棄してもその年の固定資産税は放棄者が全額負担します。
放棄と売却、どちらが得ですか?
金銭的には売却が有利です。放棄では放棄者に現金が入らず、取得者に贈与税の負担が生じます。一方、売却では放棄者に現金が入り、取得者に税金はかかりません。ただし売却には買取業者の選定や査定の比較が必要です。放棄が合理的なのは、物件評価額が低く取得者の税負担が少ないケースに限られます。
放棄した年の固定資産税は誰が払いますか?
放棄した人が全額負担します。固定資産税は1月1日時点の所有者にその年度全額が課税されるため、年度途中で放棄しても放棄者が全額負担することになります。取得者との間で按分精算を合意しない限り、放棄者が年間分を払うことになります。
放棄したら取り戻せますか?
原則として撤回できません。放棄の意思表示をし、登記が完了すると、後で「やっぱり売ればよかった」と思っても元の状態には戻せません。放棄は最終手段と考え、売却という選択肢を先に検討することをおすすめします。
相続放棄と共有持分の放棄は同じですか?
全くの別物です。相続放棄は故人のすべての財産・債務を放棄する制度で、家庭裁判所で手続きし、相続を知ってから3か月以内という期限があります。共有持分の放棄は、生きている間に自分の持分だけを手放す行為で、期限もなく、放棄した持分は他の共有者に帰属します。不動産だけを選んで手放すことは共有持分の放棄であって、相続放棄ではできません。
放棄の登記に共有者の協力は必要ですか?
必要です。放棄による所有権移転登記は、放棄者と取得者の共同申請が原則です。取得者が「税金がかかるからイヤだ」と協力を拒否した場合、登記が進まず、裁判所の手続き(登記引取請求訴訟)が必要になるケースもあります。事前に取得者とよく話し合ってから放棄を検討しましょう。
放棄する前に税理士に相談すべきですか?
評価額が高額な場合や、共有者が複数いる場合は相談推奨です。税理士への相談費用は1〜2万円程度で、みなし贈与の計算・申告手続き・連帯納付義務のリスクなどについて具体的なアドバイスを受けられます。放棄後のトラブルを防ぐ意味でも、事前の専門家相談は有効です。
まとめ|放棄は最終手段。まずは税金のリスクを把握する
共有持分の放棄は、以下の3点を理解したうえで検討する必要があります。
- 取得者に高額な税金がかかる(贈与税・登録免許税・不動産取得税の3重課税)
- 放棄者にもリスクがある(連帯納付義務・固定資産税の負担・登記の壁)
- 放棄は撤回できない(「やっぱり売ればよかった」は通用しない)
特に「無料で手放せる」と思って軽い気持ちで放棄すると、共有者との関係が壊れるだけでなく、想定外の税負担を相手に強いる結果になりかねません。
「共有持分を手放したい」と思ったら、まずは売却という選択肢も同じテーブルに載せて検討しましょう。放棄が向いているのは物件評価額が低く、共有者と事前に十分な話し合いができているケースに限られます。
あなたの持分にどれくらいの価値があるのか、複数の買取業者に無料査定を依頼して確認するところから始めてみてください。
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