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ローンが残っている家は売れる?完済できるかの判断基準と不足時の5つの選択肢

目次

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掲載順・掲載内容は当サイト編集部の評価基準(対応範囲・公開情報の充実度・スピード等)によるものです。各社の対応領域は時期により変わる場合があります。

住宅ローンが残っていても家は売れます【結論】

住宅ローンが残っていても家は売れます。売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消できれば、通常の不動産売買として問題なく進められます。

ただし、ここで押さえておくべき重要なポイントがあります。「査定額」と「手取り額」は同じではありません。売却代金から仲介手数料・抵当権抹消費用・一括返済手数料などを差し引いた「実際の手取り額」で、決済日時点のローン一括返済額を上回るかどうかを判定する必要があります。このステップを飛ばして「査定額が残債を上回っているから大丈夫」と判断すると、想定外の持ち出しが発生することがあります。

この記事で分かること:

  • 査定額・成約価格・手取り額の違いと、なぜこれを混同すると失敗するか
  • あなたの家が通常売却でローンを完済できるかを計算する具体的な方法
  • 売却代金で完済できない場合の5つの選択肢と、返済状況別の行動手順
  • 売却から決済・抵当権抹消までの4ステップの実務の流れ

自分のケースを診断するには:

  1. まず「3つの金額の違い」(次のセクション)を理解する
  2. 次に「完済判定の計算式」で自分の家が通常売却で足りるか確認する
  3. 足りなければ「5つの選択肢」から自分の状況に合うものを選ぶ
  4. 「返済状況別の行動」で今すぐやるべきことを確認する

この記事を書いた人

訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。

まず理解すべき「3つの金額」の違い(ここを間違えると失敗する)

住宅ローンが残っている家の売却で最も多い失敗は、査定額と残債を単純に比較して「大丈夫だろう」と判断することです。

実際の完済可否は、以下の3つの金額を正しく区別したうえで判断する必要があります。

① 査定額 ② 成約価格 ③ 手取り額は全部違う

金額の種類 意味 完済判定で使う?
査定額 不動産会社が出す「おおよその想定売却価格」 ❌ 参考値(実際の成約価格は変動する)
成約価格 実際に買主と合意した売買価格 条件付きで使う(諸費用控除前の金額)
手取り額 成約価格から諸費用を控除した実際の受取額 ⭕ 完済判定の基準になる金額

手取り額は、以下の費用を売買価格から差し引いた金額です。

  • 仲介手数料:成約価格の3%+6万円+消費税が上限(低廉空き家の特例あり。後述)
  • 抵当権抹消の登記費用:登録免許税1,000円+司法書士報酬(1〜3万円程度)
  • 印紙税:売買契約書に貼る収入印紙。軽減措置あり(2027年3月31日まで)
  • その他実費:測量費・解体費・残置物処分費など、物件の状態により変動

査定額が残債を上回っていても、これらの費用を引いた手取り額が一括返済額に届かないケースは少なくありません。査定段階では「手取り額ベースで一括返済できるか」を確認する習慣をつけてください。

「決済日時点の一括返済額」は残高証明書の金額と違う

住宅ローンの残高証明書やアプリに表示されているのは、あくまで基準日時点の残高です。

実際に売却の決済日に金融機関へ一括返済する金額は、以下の内訳になります。

決済日時点の一括返済額 = 現在のローン残高 + 決済日までの日割利息 + 全額繰上返済手数料

  • 日割利息:前回の返済日から決済日までの日数分の利息。まとまった金額になることがあるため、甘く見られがちです
  • 全額繰上返済手数料:金融機関によって0〜数万円。ネット銀行は無料の場合が多いが、一部の銀行は3万円程度かかる

売却を検討する段階で、まず現在の借入金融機関に「決済予定日を仮で設定した場合の一括返済見込額」を問い合わせると、正確な数字が把握できます。

「ローン残債あり」と「オーバーローン」は別物

状態 定義 通常売却の可否
アンダーローン 手取り額 > 一括返済額 ⭕ 通常売却で完済可能
均衡状態 手取り額 ≒ 一括返済額 △ ほぼ完済できるが余裕はない
オーバーローン 手取り額 < 一括返済額 ❌ 自己資金か別の方法が必要

「ローンが残っている=売れない」わけではありません。アンダーローンであれば通常の売却手続きで問題なく進められます。オーバーローンの場合でも、自己資金で不足額を補填できれば通常売却は可能です。任意売却が必要になるのは、補填する自己資金もなく、売却代金ではどうしても完済できない場合です。

あなたの家は通常売却でローンを完済できる?完済判定の計算式

それでは、具体的な計算式を使ってあなたのケースを診断してみましょう。

完済判定の計算式

(想定成約価格 − 売却にかかる諸費用)− 決済日時点の一括返済額 = 余剰額 or 不足額

この式で算出される余剰額が0以上であれば、通常売却でローンを完済できます。不足する場合は、自己資金での補填や別の選択肢を検討する必要があります。

計算に必要な数字は以下の3つです。

  1. 想定成約価格:不動産会社に査定を依頼して把握する
  2. 売却にかかる諸費用の合計:仲介手数料+登記費用+印紙税+その他実費
  3. 決済日時点の一括返済額:金融機関に問い合わせて確認する

強気・標準・早期売却の3ケースでシミュレーション

同じ物件でも、売り出し価格と販売期間によって成約価格は変わります。以下の3パターンでシミュレーションしておくと、現実的な判断がしやすくなります。

項目 ケース① 強気価格 ケース② 標準価格 ケース③ 早期売却価格
想定成約価格 査定額の上限 査定額の中間 査定額の下限〜やや下
仲介手数料(概算) 成約価格×3%+6万円+消費税 同左 同左
抵当権抹消費用 約2〜4万円 約2〜4万円 約2〜4万円
印紙税 契約書の金額による 同左 同左
手取り額(概算) A B C
決済日時点の一括返済額 現在残高+日割利息+手数料 同左 同左
余剰/不足 ▲万円 ▲万円 ▲万円

3ケース中2ケース以上で不足が出る場合は、自己資金の準備や別の売却方法を検討する必要があります。1ケースでも余剰が出るなら、その価格帯を狙って売却活動を始める判断になります。

具体例:手取りで見るかどうかで結果が変わるケース

Aさんの自宅、査定額は3,200万円、住宅ローン残債は2,800万円。
「査定額>残債だから大丈夫」と思って不動産会社に相談したところ、手取り額のシミュレーションを見て驚いた。

内訳:成約価格3,200万円 − 仲介手数料約122万円 − 抵当権抹消費用3万円 − 印紙税2万円 = 手取り額約3,073万円。
さらに決済日時点の一括返済額を確認すると、現在残高2,800万円に日割利息(約8万円)と繰上返済手数料(3万円)が加わり、合計2,811万円。

手取り3,073万円 − 一括返済額2,811万円 = 余剰約262万円。
問題なく完済できるケースだったが、「査定額>残債」の単純比較だけで判断していたら、手取り額が成約価格より約130万円も少なくなることを見落としていた。

注意

売却前にやってはいけないこと

査定や金融機関への相談前に、以下の行動を自己判断で行わないでください。

・リフォーム・リノベーション(費用が回収できないことが多い)
・家財の大量処分・不用品回収(査定に影響しない費用が先行する)
・解体工事(更地よりも建物付きのほうが売りやすいケースがある)

査定額や売却の方向性が決まってから、必要な対応を判断するのが安全です。

売却代金で完済できない場合の5つの選択肢

ここまでの計算で「手取り額が一括返済額に届かない」ことが分かった場合、あるいは「ギリギリで余裕がない」ケースでは、以下の選択肢を検討することになります。

どれを選ぶかは、不足額の大きさ、返済状況(延滞の有無)、次の住まいの有無によって変わります。

選択肢① 自己資金で不足額を補填する

向いているケース:不足額が自己資金の範囲内で収まる、または親族からの援助が見込める

最もシンプルな方法です。不足額を自己資金で補填し、通常の売却手続きを進めます。抵当権抹消も問題なく行えるため、買主側の制約もありません。

注意点は、「売却後に手元に残るお金」と「売却で出すお金」をごっちゃにしないことです。売却後に新居の購入や引っ越し費用、生活資金が必要であれば、自己資金を全て売却の補填に回せるとは限りません。余力を残した資金計画を別途立てておく必要があります。

選択肢② 住み替えローンで旧居の残債を新居に上乗せする

向いているケース:新居を購入する住み替えで、収入が安定しており、新居の担保評価が十分にある

住み替えローンとは、新居の住宅ローンに旧居の残債を上乗せして借り入れる方法です。実際には「旧居の売却代金で完済できない残債」を新居のローンに含めて借りる形になります。

ただし、以下の条件を満たす必要があるため、誰でも使えるわけではありません。

  • 新居の担保評価が上乗せ後の借入総額をカバーできること
  • 合計の借入額が年収倍率の範囲内であること
  • 金融機関が住み替えローン商品を扱っていること
  • 完済年齢(多くの金融機関は80歳まで)を超えないこと

住み替えローンを検討する場合は、まず現在の借入金融機関に相談するのが早いルートです。旧居の抵当権を抹消し、新居に新たな抵当権を設定するまでのタイミングの調整も含めて、実務経験のある金融機関かどうかがスムーズに進む鍵になります。

選択肢③ 不動産買取で短期決済する

向いているケース:早期の資金化が必要、内覧対応や販売期間を確保できない、物件に訳あり要因がある

不動産買取は、不動産会社が直接物件を買い取る方法です。仲介と違い、買主を探す販売活動が不要なため、一般的に買取申し込みから決済まで2週間〜1か月程度と短期間で進みます。

ただし、買取価格は仲介での成約価格より低くなる傾向があります。買取会社は転売して利益を出す必要があるため、どうしても査定額の7〜8割程度の価格設定になるケースが多いからです。

「早く売れるならいくらでもいい」と決める前に、買取で売った場合の手取り額と一括返済額を比較し、不足額がどれだけになるかを必ず確認してください。仲介より低い価格で売れば、不足額がかえって拡大する可能性があります。

買取に向いているのは、以下のようなケースです。

  • 再建築不可物件・事故物件・共有持分など、一般流通で売りにくい訳あり物件
  • 住み替えの二重ローンを避けるため、早期に旧居を現金化したい
  • 遠方に住んでおり、内覧対応や販売活動の負担を減らしたい

ポイント

買取と仲介は「完済後残額」で比較する

仲介が高く売れそうでも、販売までに数ヶ月かかり、その間のローン返済を続ける必要があります。買取は価格が低くても期間が短いため、結果的に「完済後の残額」で比較すると買取のほうが有利になるケースもあります。

判断のコツは、「成約価格の高低」ではなく「決済日までに支払う総コスト+手取り額」で比較すること。不動産会社には必ず両方のシミュレーションを出してもらいましょう。

選択肢④ 任意売却を進める(債権者承諾が必要)

向いているケース:すでに延滞している、または延滞のリスクが高く、自己資金での補填も難しい

任意売却とは、住宅ローンの債権者(金融機関)の合意を得て、オーバーローンの状態でも物件を売却する方法です。

通常の売却では、売却代金でローンを完済できないと抵当権を抹消できず、買主に引き渡せません。しかし任意売却では、金融機関が「売却代金で不足する分は我慢する(残債の返済を継続する)」ことを承諾することで、抵当権を抹消して売却を成立させます。

任意売却で必ず押さえておくべき3つのポイントがあります。

1. 売却価格は売主の自由には決められない
金融機関が売出価格を承認する必要があります(フラット35の事例では「売出価格の確認」と「抵当権抹消応諾の審査」が明確に手続きとして定められています)。「高い価格で売りたい」と思っても、金融機関が認めた価格以下でないと売れません。

2. 任意売却をしても残債は自動的には免除されない
任意売却はあくまで「売却して残債を減らす」手続きであり、「残債をゼロにする」手続きではありません。売却後も残ったローンは返済義務が継続します。残債の免除には別途、債務整理や保証会社との交渉が必要であり、任意売却だけで完結する話ではないことを理解しておく必要があります。(参考:住宅金融支援機構「融資物件の任意売却」

3. 任意売却に至るまでの延滞・代位弁済が信用情報に影響する
任意売却をしたという事実自体が直接、信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に登録されるわけではありません。信用情報に登録されるのは、それまでの延滞や保証会社による代位弁済などの事実です。任意売却に至る前に延滞期間が長引けば長引くほど、信用情報への影響は大きくなります。逆に言えば、延滞が軽度なうちに任意売却を含めた対策を講じれば、信用情報への影響を最小限に抑えられる可能性があります。

任意売却は、早めに動くほど選択肢が広がります。競売の開始決定通知が届く前に任意売却の検討を始めることが理想です。

選択肢⑤ 売却を見送り、返済条件の変更を相談する

向いているケース:売却が急務ではなく、今後の収入回復や家計改善の見込みがある

現時点では売却の条件が不利な場合、無理に売らずに返済条件の変更を金融機関に相談する選択肢もあります。

住宅ローンの返済方法変更(元金据置・返済額減額など)や、フラット35であれば返済条件の変更プログラムが用意されています。まだ延滞していない段階で金融機関に相談すれば、条件変更に応じてもらいやすいという実務傾向があります。延滞が長引くほど金融機関側の対応は厳しくなるため、「そろそろ厳しいかも」と思った時点で動くのが鉄則です。

返済条件の変更は、一時的に家計を立て直すための手段であり、長期的には売却や債務整理を含めた総合的な判断が必要です。

【比較表】5つの選択肢を価格・期間・リスクで比較

ここまでの5つの選択肢を、価格・手間・期間・リスクの面から横断的に比較します。あなたの状況に合う選択肢を選ぶ判断材料にしてください。

選択肢 手取り額の目安 期間の目安 手間・負担 成功の条件 主なリスク
自己資金補填 仲介の成約価格がそのまま活きる 仲介の販売期間に依存(平均3〜6か月) 低い 自己資金または親族の援助があること 補填後に生活資金が不足する
住み替えローン 仲介の価格で売却+新居に残債上乗せ 仲介の販売期間+新居購入手続き(3〜6か月) 中程度 年収・担保評価・金融機関の商品有無 審査落ち・新居と旧居のタイミング調整
不動産買取 仲介の7〜8割程度が目安 申込から決済まで2週間〜1か月 低い 買取会社が対応可能な物件であること 仲介より価格が低い・不足額拡大の可能性
任意売却 債権者の承認価格に制限される(市場価格の8〜10割程度) 承認手続き含め1〜3か月 高い 債権者(金融機関)の承諾 売却後も残債が残る・信用情報に影響(延滞・代位弁済が原因)
売却見送り・条件変更 低い(相談のみ) まだ延滞していないか、軽度であること 状況が悪化すると競売リスク

買取と仲介、どちらを選ぶかの判断のコツ

仲介のほうが高く売れる可能性はありますが、「高い見込みで売りに出して、売れずに時間だけが過ぎ、その間もローン返済が続く」というリスクもあります。逆に買取は価格が低くても、短期間で現金化できるため、精神的負担や二重ローンのリスクを軽減できます。

判断のポイントは以下の2つです。
・「成約価格の差額」と「売却期間中に支払うローン返済額の合計」を比較する
・物件に訳あり要因(再建築不可・事故物件・共有持分・老朽化・違法建築など)がある場合は、一般仲介では買主が付きにくいため、専門買取が現実的な選択肢になる

買取業者によって対応可能な物件や査定基準は異なります。複数社の条件を見比べることで、自分の物件に合った業者を選べるようになります。

あなたの返済状況別|今とるべき行動

同じ「住宅ローンが残っている家」でも、返済状況によって今とるべき行動は異なります。以下の4つのパターンで、自分の現状を確認してください。

正常に返済を続けている場合

焦る必要はありません。任意売却の検討は不要で、通常の売却手続き(仲介または買取)を進められます。まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、前述の完済判定の計算式で「手取り額ベースで一括返済できるか」を確認しましょう。査定額と残債の単純比較で安心せず、必ず諸費用込みの手取り額で判断してください。

数か月後に返済が苦しくなりそうな場合

「まだ返せているから大丈夫」と思っているうちが、実は最も動きやすいタイミングです。延滞前に金融機関に相談すれば、返済条件の変更(元金据置・返済額減額など)に応じてもらいやすい傾向があります。同時に不動産会社にも査定を依頼し、売却も視野に入れた準備を進めておくと、状況が悪化したときに慌てずに済みます。この段階では通常売却と任意売却の両方を選択肢として持てるのが大きなアドバンテージです。

すでに延滞している場合

放置すると競売に進むリスクが高まります。住宅ローン延滞から競売までの一般的な流れと期間は以下のとおりです。

期間(滞納開始からの目安) 状況
1〜3か月 金融機関から督促・催告書が届く
3〜6か月 期限の利益を喪失。保証会社が代位弁済(あなたの代わりにローンを返済)
6〜10か月 保証会社が競売を申し立て
10〜14か月 競売開始決定通知が届く。この時点で任意売却の最終判断が必要
12〜18か月 競売開札・落札。強制退去となる

(参考:任意売却ホットナビ「競売の期間の目安」

延滞中でも任意売却は可能ですが、競売開始決定通知が届く前の段階で動くことが理想的です。任意売却に慣れた不動産会社や弁護士に早めに相談しましょう。競売開始後でも任意売却は可能ですが、開札日が迫ると時間的制約が大きくなります。

任意売却の相談をする際は、以下の情報を準備しておくとスムーズです。

  • 現在の延滞期間と延滞額
  • 金融機関からの通知(催告書・代位弁済通知・競売開始決定通知など)
  • 現在のローン残高証明書
  • 物件の登記情報(所有名義・抵当権の状態)

競売の通知が届いた場合

まだ任意売却は可能ですが、期限が限られています。競売の開札日前日までは任意売却の手続きを行えますが、実際に任意売却を成立させるには、金融機関の価格承認、買主を見つける期間、決済手続きなど、通常1〜3か月程度の期間が必要です。開札日が迫っている場合は、物理的に間に合わないこともあります。

競売開始決定後の対応は、一般の不動産仲介会社だけでは難しいケースがあるため、任意売却の実績がある不動産会社と弁護士の両方に相談するのが現実的な選択肢です。弁護士が競売停止の手続きを行い、その間に任意売却を進めるという方法がとられることもあります。

具体例:競売と任意売却で手取り額が数百万円違ったケース

Bさんは住宅ローン返済が困難になり、滞納期間が8か月に達したところで競売開始決定通知が届いた。競売開札日まで残り3か月。

不動産会社に相談したところ、市場価格2,500万円の物件に対し、競売での落札予想価格は1,500〜1,700万円(市場価格の6〜7割程度)。競売で落札されると、手取り額は約1,450万円(競売は仲介手数料が不要だが諸経費は発生)。また、買受人が決まれば退去までの猶予も短く、転居準備の時間も取れないと説明された。

そこでBさんは任意売却の手続きを開始。弁護士が競売停止の手続きを取り、不動産会社が買主を探して、2,200万円での売買契約が成立。債権者(金融機関)の承諾も得られ、決済に至った。

手取り額は約2,150万円(諸費用控除後)。競売と比べて約700万円も多く手元に残った。さらに、任意売却では引っ越し期限も交渉できたため、次の賃貸物件をじっくり探す余裕も生まれた。

競売と任意売却の価格差は、物件や地域によって異なりますが、一般的に市場価格の3〜5割程度の差が出ることがあります。競売が目前に迫っていても、任意売却を検討する価値は十分にあります。

注意

競売の通知が届いても諦めないでください

競売開始決定通知が届くと、「もうどうにもならない」と諦めてしまう方が少なくありません。しかし、開札日までに任意売却が成立すれば、競売を回避できる可能性があります。

競売で落札されると、売却価格は市場価格より大幅に低くなり、残債が大きく残るリスクが高まります。また、強制的に退去を命じられるため、次の住まいの準備も十分にできないままになります。

任意売却が成立すれば、市場価格に近い価格で売却でき、引っ越しの準備期間も確保できるため、競売と比べて金銭的・精神的な負担が大幅に軽減されます。「通知が来た時点が、まだ間に合う最後のタイミング」と認識してください。

住宅ローンが残っている家を売る4つのステップ

ここからは、実際に売却を進める手順を時系列で説明します。ローンが残っていても、基本的な流れは通常の不動産売却と大きくは変わりません。「決済時にローンを完済し、抵当権を抹消する」という点だけが異なります。

ステップ① 金融機関に「決済日時点の一括返済見込額」を確認する

売却を検討し始めたら、まず現在の借入金融機関(もしくはフラット35の場合は住宅金融支援機構)に以下の3点を確認します。

  • 決済日を仮設定した場合の一括返済見込額(残高+日割利息+繰上返済手数料)
  • 全額繰上返済の手続き方法(Webで申込可能か、来店が必要か、申込期限はいつか)
  • 決済日当日の入金方法(売却代金をどの口座に振り込めば完済処理が完了するか)

金融機関への確認でよくある失敗

「残高証明書の数字だけ見て一括返済額を把握したつもりになっていたら、実際の決済日には日割利息が加算されていて、数十万円不足した」というケースがあります。

住宅ローンの利息は日割り計算のため、前回返済日から決済日までの日数が長いほど、日割利息の金額は大きくなります。特に月初めに返済日が設定されている場合、月末に決済すると20〜30日分の利息が追加で発生します。

金融機関に確認する際は「今月中に決済するとしたら一括返済額はいくらか」と、具体的な日付を想定して聞くと正確な数字が得られます。

ステップ② 不動産会社に査定を依頼(「手取り表」を必ずもらう)

査定を依頼する際は、複数の不動産会社に依頼し、査定額だけでなく「想定成約価格・諸費用明細・手取り額・販売期間の目安」をセットで提示してもらいましょう。

不動産会社に伝えるべき情報:

  • 物件の所在地・築年数・面積・間取り
  • 現在の住宅ローン残債(おおよそで構わない)
  • 売却希望時期(すぐ・3か月以内・半年以内など)
  • 物件の現在の状態(居住中/空き家/リフォーム履歴/傷み)
  • 次の住まいの予定(新居購入・賃貸・実家へ戻るなど)

不動産会社に依頼する3つの価格シミュレーション

確かな不動産会社は、査定額だけでなく以下の3つの価格帯を提示してくれます。

① 強気価格:ゆっくり売れれば狙える価格。販売期間6〜12か月程度
② 標準価格:相場通りの価格。販売期間3〜6か月程度
③ 早期売却価格:短期で確実に売りたい場合の価格。販売期間1〜3か月程度

それぞれのケースで手取り額を計算し、一括返済額と比較することで、「どの価格帯なら売って大丈夫か」が判断できます。早期売却価格でも完済できるなら安心して売りに出せますし、強気価格でしか完済できないなら販売期間に余裕を持つ必要があります。

ステップ③ 売買契約〜買主のローン審査

買主が見つかり、売買契約を締結したら、買主が住宅ローンを組む場合はその審査期間(通常2〜4週間)を経て、決済日を設定します。この段階で改めて金融機関に「決済日が確定した」ことを連絡し、一括返済の最終手続きを進めます。

ステップ④ 決済当日:買主代金でローン完済+抵当権抹消を同時実行

決済当日は、以下の流れで進みます。

  1. 買主(または買主の金融機関)から売買代金が売主の口座に入金
  2. 売主がその代金を借入金融機関に振り込み、ローンを完済
  3. 金融機関から抵当権抹消に必要な書類が交付される
  4. 司法書士が所有権移転登記と抵当権抹消登記を同時に法務局に申請

この一連の流れは、売主・買主・金融機関・司法書士の間で厳密にタイミングを合わせる必要があるため、通常は決済日に司法書士や不動産会社の立ち会いのもとで行われます。売主が自分で手続きする必要はなく、基本的には司法書士が全ての登記手続きを代行します。

売却時にかかる費用と税金の一覧

住宅ローンが残っている家の売却では、以下の費用が発生します。これらを差し引いた手取り額で完済可否を判断する必要があります。

仲介手数料(800万円以下の特例あり)

仲介で売却する場合、不動産会社に支払う仲介手数料は「成約価格×3%+6万円+消費税」が上限です(宅建業法の定める上限額)。ただし、売買価格が800万円以下の物件については、低廉空家等の仲介手数料特例(国土交通省)が適用される場合があります。対象条件を満たす物件では、仲介手数料が別途協議できる可能性があるため、不動産会社に確認するとよいでしょう。

抵当権抹消の登記費用

住宅ローンを完済した後、抵当権を抹消するための登記手続きが必要です。登録免許税は不動産1個につき1,000円(法務局の定め)。これに司法書士への報酬(一般的に1〜3万円程度)が加わります。抵当権抹消だけなら安価ですが、所有権移転登記と同時に行う場合は、その報酬も含めて司法書士に見積もりを取るとよいでしょう(参考:法務局「登録免許税の税率」)。

印紙税(軽減措置は2027年3月31日まで)

売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。契約金額に応じて税額が定められており、国税庁の軽減措置が2027年3月31日まで延長されています。例えば、契約金額5,000万円以下の場合、軽減後の印紙税額は1万円〜2万円程度です。軽減措置の適用条件は国税庁の公式情報でご確認ください。

譲渡所得税の基本(完済後の余剰金とは別計算)

売却で利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税が課税されます。ここで注意が必要なのは、「ローン完済後に手元に残ったお金」と「税務上の譲渡所得」は別物だということです。

譲渡所得は、以下の計算式で算出します。

譲渡所得 = 売却額 − (取得費 + 譲渡費用)

  • 取得費:購入時の価格+購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用など)。購入時の契約書が残っていれば正確に計算できます。無い場合は売却額の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使います
  • 譲渡費用:今回の売却にかかった費用(仲介手数料・印紙税・解体費など)

居住用財産(マイホーム)を売却する場合、3,000万円特別控除(国税庁)が適用できるケースがあります。要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるため、ほとんどのケースで譲渡所得税は非課税になります。また、売却損が出た場合には、譲渡損失の損益通算・繰越控除(国税庁)が適用できる場合があります。2026年度の税制改正では、この特例の適用期限が2年延長される方針が公表されています(財務省・令和8年度税制改正大綱)。

税務上の判断は個別事情によって大きく変わるため、確定申告の際には税理士に相談することをおすすめします。

共有名義・ペアローン・連帯債務がある場合の注意点

夫婦で住宅を共有名義にしている、またはペアローン・連帯債務でローンを組んでいる場合、単独名義・単独債務のケースとは異なる注意点があります。

共有名義:物件全体の売却には全員の同意が必要

物件が夫婦や親子の共有名義になっている場合、不動産全体を売却するには共有者全員の同意(全員が売買契約書に署名)が必要です。1人でも「売りたくない」と言えば、通常の売却は進められません。

ただし、自分の持分だけなら単独で売却できます(民法上の共有持分の処分は単独で可能)。共有持分の買取に対応している専門業者を探すか、他の共有者との話し合いを優先することになります。

具体例:共有名義の家で売却に同意が得られず困ったケース

Cさん夫妻は離婚することになり、夫名義の住宅ローンが残っている自宅を売却して清算しようとした。ところが、この家は妻も共有名義(持分2分の1)になっていた。

売却には妻の同意が必要だが、妻は「離婚するなら財産分与としてこの家が欲しい」と言い、売却に同意しない。夫は住宅ローンの債務者であるため、ローンの支払いを続けなければならないが、住み続けるわけにもいかない。

結果的に、夫は自分の持分だけを専門業者に買取してもらい、その売却代金でローンの一部を返済。妻が残りの持分とローンを引き継ぐ形で住み続けることになった。夫にとっては「持分だけでも現金化できた」ことで、離婚後の生活資金を確保できた。

このケースのように、共有名義の物件では「全体売却」か「持分だけの売却」か、権利と債務を切り分けて考える必要があります。共有者・債務者・金融機関の3者の合意が取れないと、通常売却は進められないことを認識しておきましょう。

ペアローン:各債務と担保関係を金融機関に確認する

ペアローンは、夫婦がそれぞれ別の住宅ローン契約を結び、互いの物件に連帯保証または連帯債務を設定しているケースが一般的です。離婚や別居で家を売る場合、単に物件を売却するだけでなく、2本のローン契約の処理が必要になります。

金融機関によって、「一方がローンを残して住み続ける」「売却代金を2つのローンに按分する」などの対応が異なります。まずは借入金融機関に「ペアローンの物件を売却する場合の手続き」を確認し、そのうえで不動産会社に相談するのが確実です。

連帯債務・連帯保有人:売却後も責任が続く可能性

連帯債務者や連帯保証人として住宅ローン契約に関わっている場合、物件を売却しても、その債務関係は自動的には消えません。売却後に旧居のローンを完済しなければ、連帯債務者・連帯保証人の立場は継続します。離婚や財産分与で「相手が住み続けるから自分は関係ない」と思っていても、金融機関の同意なく債務関係を解消することはできません。売却の前に、債務者全員の合意と金融機関との調整が必要です。

よくある質問(FAQ)

住宅ローンが残っていても家は売れますか?

売れます。売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消すれば、通常の不動産売買として問題なく進められます。査定額と残債の単純比較ではなく、諸費用を控除した「手取り額」と、決済日時点の「一括返済額」を比較して判断するのが正確です。

売却代金でローンを完済できない場合、どうなりますか?

自己資金で不足額を補填できれば通常売却は可能です。補填できない場合は、住み替えローン・不動産買取・任意売却などの選択肢を検討します。放置すると競売に進むリスクが高まるため、早めに金融機関や不動産会社に相談しましょう。

査定額と手取り額は何が違うのですか?

査定額は不動産会社が想定する「おおよその売却価格」です。実際の手取り額は、査定額から仲介手数料・抵当権抹消費用・印紙税などの諸費用を差し引いた金額になります。査定額が残債を上回っていても、諸費用を考慮すると手取り額が一括返済額に届かないことがあるため、手取り額ベースでの確認が欠かせません。

金融機関に相談すると、信用情報に影響がありますか?

単純に「一括返済見込額を教えてください」という問い合わせ程度では、信用情報に影響はありません。ただし、返済条件の変更や任意売却の相談をする場合、その後の対応次第では信用情報機関に異動情報が登録される可能性があります。任意売却自体が直接の登録原因ではなく、それまでの延滞や代位弁済の事実が登録されるものです。早めに相談するほど延滞期間が短く済むため、信用情報への影響は最小限に抑えられます。

任意売却をすれば、残ったローンはなくなりますか?

自動的にはなくなりません。任意売却は「売却代金で返済できる範囲でローンを減らす」手続きであり、売却後も残債の返済義務は継続します。残債を免除してもらうには、別途、保証会社との交渉や債務整理の手続きが必要です。任意売却を検討する際は、「売却後も残債が残る可能性がある」ことをあらかじめ理解しておきましょう。

競売の通知が届きました。まだ任意売却できますか?

開札日によっては可能です。競売の開札日前日までは任意売却の手続きを行えます。ただし、金融機関の価格承認や買主の確保には通常1〜3か月程度の期間が必要なため、開札日が迫っている場合は物理的に間に合わないこともあります。まずは任意売却の実績がある不動産会社または弁護士に、開札日を伝えたうえで相談してください。

仲介と買取、どちらを選ぶべきですか?

どちらが適しているかは、売却の目的と物件の状態によって変わります。時間に余裕があり、できるだけ高く売りたいなら仲介。早期の現金化が必要で、内覧対応や販売期間の負担を避けたいなら買取が向いています。ただし、買取価格は仲介の成約価格より低くなる傾向があるため、「完済後の残額」で比較したうえで判断することをおすすめします。

売却前にリフォームや片付けをしたほうがいいですか?

査定や売却方針が決まる前の自己判断でのリフォーム・大掛かりな片付けはおすすめしません。費用が売却価格に反映されないケースが多く、結果的に損をすることがあります。まずは現状のまま複数の不動産会社に査定を依頼し、リフォームの必要性や優先順位をプロの視点からアドバイスしてもらうのが効率的です。

共有名義やペアローンの場合、誰の同意が必要ですか?

共有名義の物件全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。ペアローンの場合は、2本のローン契約の処理方法を金融機関に確認し、双方の債務者合意のもとで進める必要があります。売却前に、権利関係と債務関係を整理したうえで不動産会社に相談しましょう。

住宅ローンが残っている家の売却にはどのくらいの期間がかかりますか?

通常の仲介売却で、査定依頼から決済まで3〜6か月程度が目安です(買主のローン審査期間を含む)。買取の場合は、申し込みから決済まで2週間〜1か月程度と短期間で進みます。任意売却の場合は、金融機関の承認手続きを含めて1〜3か月程度ですが、事前の準備状況や金融機関の対応により変動します。競売の通知が届いている場合は、開札日までの残り期間がタイムリミットになります。

まとめ|最初にやるべきことは「2つの数字を確認すること」

住宅ローンが残っていても、家は売れます。大切なのは、漠然とした不安で動くのを止めてしまうことではなく、以下の2つの数字を正確に把握してから判断することです。

最初に確認すべき2つの数字

  1. 決済日時点の一括返済見込額(金融機関に問い合わせる)
  2. 売却後の手取り額(不動産会社に「諸費用控除後の金額」を出してもらう)

この2つを比較すれば、通常売却で完済できるか、自己資金が必要か、任意売却を含めた別の方法を検討すべきかが判断できます。

どの選択肢を選ぶにしても、「まだ延滞していない段階」「競売の通知が来る前の段階」で動くほど、選択肢は広がります。まずは金融機関への電話1本、不動産会社への査定依頼1件から始めてみてください。初めの一歩で、あなたの状況に合った正しい道筋が見えてきます。

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