広告 違法建築

違法建築の調べ方を徹底解説|役所で確認する書類と建築士に依頼すべきケースの見分け方

目次

建物が「違法建築かもしれない」と言われたとき、検査済証の有無だけで判断すると誤った結論に至ることがあります。違法建築かどうかを正しく調べるには、手元の書類整理 → 自治体での行政記録確認 → 建築時期の特定 → 図面と現況の照合という順番で進め、それぞれの段階で「分かること」と「分からないこと」を区別していく必要があります。

この記事で分かること:

  • 違法建築と既存不適格の違い、および調査前に整理すべき概念
  • 検査済証・建築計画概要書・台帳記載事項証明書など各資料の役割と限界
  • 自分で確認できる範囲と、建築士に依頼すべき範囲の見分け方
  • 調査前にやってはいけない行動と、調査後の選択肢

対象となる読者:自宅や実家・相続物件・投資物件について「違法建築の疑いがある」と指摘され、何から調べればいいか分からない方。購入前の物件の状態を確認したい方。売却やリフォームの前に物件の法令適合状態を整理したい方。

この記事を書いた人

訳あり不動産 買取相談センター 編集部
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まず「違法建築」と「既存不適格」の違いを整理する

調査を始める前に、似て非なる2つの状態を区別しておく必要があります。この違いを理解していないと、役所の資料を前に「違法かどうか」を正しく判断できません。

違法建築(違反建築物)とは、建築時またはその後の増築・用途変更・改変などの時点で、そのときに適用される建築基準法令に適合していない建物を指します。是正命令や行政処分の対象になる可能性があります。

既存不適格建築物とは、建築当時は適法だったものの、その後の法改正や都市計画変更、規制強化によって現行基準に合わなくなった建物です。違法建築とは異なり、直ちに是正義務が生じるわけではありません。増築等の際に一定範囲内であれば既存不適格を継続できる緩和措置があります(建築基準法第3条第2項、国交省「既存建築物の緩和措置に関する解説集」)。

たとえば、建築当時は接道義務の対象ではなかった地域で建てられた住宅が、その後の都市計画変更で接道義務が課された場合、その建物は「既存不適格」であって「違法建築」ではありません。

両者の違いを整理すると、以下のようになります。

項目 違法建築(違反建築物) 既存不適格建築物
発生原因 建築時または増改築時に法令に不適合 建築時は適法だったが、後の法改正等で現行基準に不適合
行政対応 是正命令・使用禁止命令等の対象になりうる 原則として直ちに是正を求められない
増築等の可否 違反状態のままでは確認申請が通りにくい 一定範囲内の増築等で既存不適格の継続が可能
売却への影響 融資が付きにくく、買取価格に影響する 状態によっては売却可能。影響は物件による

注意

建築時の法令に適合していたとしても、その後に無確認で増築や用途変更を行っていれば、「違法建築」に該当する可能性があります。建築時と現在の状態は別物として扱う必要があります。

【ステップ1】手元の書類を整理する

最初に、自分が持っている書類をすべて確認することから始めます。役所に行く前に、手元の情報で「何が分かっていて、何が分からないのか」を整理しておくと、後の調査がスムーズになります。

確認すべき主な書類は以下のとおりです。

書類 確認すべき内容 ない場合の影響
確認済証 建築確認の番号・発行年月日・建築主名 役所での資料特定に時間がかかる
検査済証 完了検査の実施有無・交付番号 違法建築かどうかの判断材料が減る(ただし欠如≠違法確定)
建築計画概要書 建築面積・延べ面積・構造・階数・用途 設計時の仕様を確認できない
図面(設計図・竣工図) 現況との一致・不一致の確認 図面レスでの現地調査が必要になる
工事請負契約書 工事内容・施工範囲・着手年月日 建築時期の特定が難しくなる
登記事項証明書(建物・土地) 床面積・構造・築年月・地目 参考資料として使える(但し法適合の証明ではない)
固定資産税課税明細書 評価額・家屋の概要 課税記録と現況の乖離を確認する手がかり

特に重要なのが検査済証です。国土交通省の資料によると、平成10年度(1998年)以前の完了検査率は4割を下回っており、検査済証がない建物は決して珍しくありません。検査済証がない理由は大きく3つに分かれます。

  • パターン①:持っているが見つからない(紛失) — 自治体で台帳記載事項証明書を取得すれば、交付履歴を確認できます。
  • パターン②:完了検査を受けていない(未受検) — 建築確認は受けたが、完了検査の申請をしなかったケース。この場合は検査済証の交付履歴が台帳に記載されません。
  • パターン③:そもそも建築確認の対象外だった — 建築基準法施行(昭和25年)以前の建物や、当時の確認対象規模未満の建物が該当します。

手元に検査済証がないことと、違法建築であることは直結しません。「ない」という事実だけで慌てる必要はありませんが、なぜないのかを次ステップで確認する必要があります。

具体例:書類の所在が分からないケース

両親が30年前に新築した実家を相続したAさんのケース。不動産会社から「検査済証はありますか」と聞かれ、押し入れの段ボールを探すが出てこない。「違法建築かもしれない」と言われて不安になり検索したものの、何から調べればいいか分からない。

実際には、検査済証は両親が銀行の貸金庫に保管していた(後に判明)。ただし、その後に兄が無確認で物置を増築していたことが、後の自治体調査で発覚した。

このケースでは「手元に検査済証がない=違法建築」と短絡するのではなく、「なぜないのか」を整理し、次に自治体で確認するという順番を取ることで、必要な調査事項が明確になった。

【ステップ2】自治体で行政記録を確認する

手元の書類だけでは判断できない場合、物件を管轄する特定行政庁(市区町村または都道府県)で行政記録を確認します。窓口は主に建築指導課または建築審査課です。

自治体で取得できる主な資料は3つ。それぞれ「分かること」と「分からないこと」が異なります。

資料名 分かること 分からないこと 取得方法・料金目安
台帳記載事項証明書 確認済証・検査済証の交付番号・年月日・建築主名・建築面積・延べ面積・構造・階数 図面の内容・建築材料の詳細・検査の合否内容 建築指導課窓口で申請。大阪市250円、札幌市400円、名古屋市300円、豊島区400円など
建築計画概要書 建築時の計画内容(配置図・各階平面図・立面図・断面図・面積表) 検査結果・竣工後の改変状況・実際の施工内容 閲覧は無料の場合が多い(写しは有料)。自治体により対象年代が異なる
処分等概要書 行政処分・許可・認定の履歴(是正指導履歴・43条但し書き許可等) 違反状態自体の詳細 特定行政庁の窓口で請求

台帳記載事項証明書(検査済証の交付履歴を確認する)

台帳記載事項証明書は、検査済証の代わりになる書類ではありません。あくまで「建築確認台帳に記録された事項」を証明するものであり、検査済証の再発行ではない点に注意が必要です(豊島区・札幌市・大阪市いずれも明記)。

ただし、この証明書によって「検査済証がいつ交付されたか」「そもそも検査済証が交付されていないか」が確認できます。

確認済証番号が分からない場合は、自治体によって対応が異なります。

  • 大阪市:建築指導部内に備え付けの検索システム端末で確認可能。「確認済証番号が特定できない場合は閲覧・交付申請はできません」とされており、来庁しての調査が必要。
  • 札幌市:地番・建築主名・建築年月等の情報を持参すれば、窓口で物件特定の補助を受けられる。
  • 豊島区:昭和45年以前の物件は地図上から履歴を調べられないため、建築当時の地番や建築主名の事前調査が推奨されている。
  • 名古屋市:確認済証番号が分からない場合は窓口で閲覧申請(無料)により確認可能。ただし平成8年4月以降の建築確認申請物件に限られる。

ポイント

自治体の窓口に行く前に、以下の情報をできるだけ用意しておくとスムーズです。
・物件の住居表示と地番(登記簿で確認)
・建築確認番号(あれば)
・建築当時の建築主名
・おおよその建築年月
・構造・階数・延べ面積の概数

建築計画概要書(建築時の計画内容を確認する)

建築計画概要書は、建築確認申請時に提出された計画の概要をまとめた書類です。配置図・各階平面図・立面図・面積表などが含まれ、当時計画された建物の内容を確認できます。

閲覧可能な対象年代は自治体によって異なります。札幌市は昭和46年1月以降の建築確認物件が対象。名古屋市は平成8年4月以降の確認申請物件が対象です。すべての物件で閲覧できるわけではありません。

建築計画概要書で確認できるのはあくまで「計画時の内容」であり、「実際にそのとおり施工されたか」までは分かりません。竣工後の増築や改変が行われている場合、概要書の記載と現況が一致しないことがあります。その不一致こそが調査の重要な手がかりになります。

処分等概要書(許可・認定・是正履歴を確認する)

過去に建築基準法に基づく許可(43条但し書き許可など)や認定、あるいは是正指導・行政処分が行われている場合、その履歴が処分等概要書として記録されています。

この書類は特に、過去に何らかの違反を指摘されたことがある物件や、増築時に特例許可を受けている物件で重要になります。通常の売買や相続では意識する機会が少ない書類ですが、調査の精度を高めるために確認しておくとよいでしょう。

【ステップ3】建物の建築時期・増改築時期を特定する

違法建築かどうかの判断で最も重要なのが、「建築時」「最後の増改築時」「現在」の3時点を分けて考えることです。国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン(第4版、令和8年3月)」でも、まず直近の建築等の工事に係る検査済証の交付状況を調査し、その後の改変の有無を確認する手順が示されています。

新築時に検査済証があったとしても、その後に無確認で増築していれば、増築部分は違法建築の可能性があります。逆に、増築時に確認申請と完了検査を適法に受けていれば、その増築部分については適法です。

建築時期を特定するための資料は以下のとおりです(ガイドラインより)。

  • 確認申請書の副本(第三面) — 工事着手予定年月日が記載されています。最も信頼性の高い資料です。
  • 設計住宅性能評価申請書の副本 — 確認申請書副本と同等の図書として扱われます。
  • 長期優良住宅建築等計画の認定申請書の副本 — 同上。
  • 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)融資の申請書の副本 — 同上。
  • 工事請負契約書 — 工事の着手時期・範囲を確認できます。
  • 登記事項証明書 — 床面積や構造の履歴から増築の有無を推測する手がかりになります。
  • 固定資産税課税明細書 — 評価額の変遷から増築時期を推定できます。

これらの資料を探す際に注意したいのが、建築主と現在の所有者が異なるケースです。相続物件や購入物件では、前所有者(親や売主)が工事請負契約書や確認申請書の副本を持ったまま引き継がれていないことがよくあります。この場合は、法務局で登記履歴をさかのぼり、建築当時の所有者名を特定したうえで自治体に照会する必要があります。

具体例:検査済証があっても増築で違反状態になったケース

Bさんは20年前に新築した戸建て住宅を売却しようとしていた。新築時の検査済証は大切に保管してあったため「適法な建物」と思っていたが、不動産会社の調査で、10年前に業者に依頼して増築したウッドデッキと物置が建築確認不要の範囲を超えている可能性が指摘された。

新築時の検査済証は「新築工事が適法だったこと」を証明するが、「その後の増築工事の適法性」は証明しない。Bさんのケースでは、増築時の工事請負契約書と、それを基に建築士が現地調査を行い、増築部分の法令適合性を確認することになった。

新築時の検査済証があるだけでは「現在も適法」とは言い切れない。直近の工事時点を特定し、その前後で何が変わったかを追う必要がある。

これらの資料を組み合わせて、直近の建築等の工事着手時を特定できるかどうかが、その後の調査方法を分ける重要な分岐点になります。

  • 検査済証があり、着手時も特定できる → 調査2-①(既存不適格の可能性がある規定のみ調査)
  • 検査済証はないが着手時を特定できる → 調査2-②(すべての規定を調査し、既存不適格を判定)
  • 着手時を特定できない → 調査2-③(すべての規定を現行基準で調査、既存不適格の判定は不可)

特に着手時を特定できない場合は、調査のハードルが大きく上がります。増築等を行う際に、計画建築物全体を現行の建築基準法令に適合させる必要が生じるため、部分的な増築であっても建物全体の大規模な改修が必要になる可能性があります。また、調査結果の分類も「適合」「不適合(その他)」「不明」の3つにとどまり、「既存不適格」として扱うことができません。このため、建築士に相談する優先度が最も高い状態と言えます。

この段階で自己判断が難しいと感じた場合は、建築士の調査を検討します(次のステップで詳述)。

【ステップ4】図面と現況を照合する

行政記録が出そろったら、次はその記録と現在の建物の姿を比較します。建築計画概要書や図面の記載と、実際の建物との間に違いがあるかどうかを確認することで、調査すべき論点が絞り込めます。

照合の主なチェックポイントは以下のとおりです。外観だけでも多くの情報が得られます。

  • 増築・改築の有無 — 図面にない部屋・物置・ウッドデッキ・車庫・倉庫等が現存しないか。外観からは「建物の輪郭が図面より大きい」「後付けの屋根や庇がある」などで気づくことが多いです。
  • 用途変更 — 住宅用だった部分を店舗・事務所・賃貸住居に改装していないか。外観からは看板や窓の形状、メーターボックスの増設などで推測できます。
  • 窓・出入口の変更 — 開口部をふさいだり、新設したりしていないか(建築等に該当しない「改変」の場合あり)。
  • 外壁・屋根の形状の変化 — 増築を伴わない外壁の位置変更、バルコニーの囲い込みなど。
  • 構造に関わる改変 — 耐力壁の撤去、梁や柱の変更など(特に耐震性に関わる部分。※外観だけでは判断困難なため建築士調査が必要)
  • 建ぺい率・容積率との関係 — 現在の建築面積・延べ面積が基準値に収まっているか。

図面と現況に差がある場合、その原因は主に4つに分類できます。

分類 原因 可能性のある状態 調査の方向性
①法改正による変化 建築後、関連法規・都市計画が変更された 既存不適格の可能性 着手時の規定と現行規定の両方を確認
②確認後の増築・用途変更・構造変更 建築確認を受けずに工事を行った 違法建築(違反建築物)の可能性 増築時の確認申請の有無を調査
③建築等に該当しない改変 居室の窓をふさぐ、間仕切りの変更など軽微な改変 違反にはならない場合が多いが確認が必要 調査2-①で改変の有無をチェック
④原因不明 資料不足や経年変化で図面と現況の乖離理由が特定できない 建築士調査が必要 参考資料をもとに原因の切り分けを依頼

【参考】登記・固定資産税・建物状況調査では判断できない

調査を進める中で、「登記があるから大丈夫」「固定資産税を払っているから合法」といった誤解を持つ方が少なくありません。しかし、これらの情報は建築基準法上の適法性とは別の制度であり、判断材料にはなりません。

登記は不動産の物理的現況と権利関係を公示する制度であり、違法建築物であっても登記は可能です(法務局の登記制度説明より)。登記簿に床面積や構造が記載されていることは、建築基準法に適合していることを証明しません。

固定資産税の課税は資産の評価と税の賦課を目的とするもので、建築基準法に基づく審査ではありません。課税台帳に登録されていることと、建物が建築基準法令に適合しているかは無関係です。

通常の建物状況調査(ホームインスペクション)は、建物の劣化状況・不具合・雨漏り・シロアリ被害などを確認する調査であり、建築基準法への適合性を調査するものではありません。目的・調査範囲・成果物が異なります。

注意

「登記や固定資産税の記録がある=合法」と誤解したまま売却やリフォームを進めると、契約後に違反状態が発覚して取引が中断したり、是正費用が想定外に膨らむリスクがあります。建築基準法の適合性は、建築基準法に基づく調査とは別に確認する必要があります。

自分で調べられる範囲と建築士へ依頼すべき範囲

ここまでの調査で、自分で確認できる範囲の多くはカバーできます。しかし、以下のいずれかに該当する場合は、建築士(または建築士事務所)への調査依頼を検討する段階です。

建築士へ依頼すべきケース

  • 確認済証番号や図面がなく、自治体でも記録を特定できない
  • 図面と現況に違いがあるが、その原因が法改正なのか無確認増築なのか判断できない
  • 構造に関わる改変(耐力壁の撤去・梁の補強等)の有無を確認したい
  • 売却・融資・リフォームの前に、第三者による客観的な適合状況調査が必要
  • 着手時を特定できず、調査2-③の状態にある

自分で調査を終えてよいケース

  • 検査済証があり、その後の増築・用途変更・改変がないことが確認できている
  • 行政記録と現況が一致している
  • 調査目的が「違法建築の疑いをひとまず確認する」ことにとどまる場合

建築士に依頼する場合、事前に以下の点を確認しておくと、調査の精度が上がります。

  • 調査の目的を明確に伝える — 「売却用の資料として法適合性を確認したい」「リフォーム前に現状を把握したい」など目的によって調査範囲が変わります。
  • 集めた資料をすべて渡す — 自治体で取得した台帳記載事項証明書・建築計画概要書・処分等概要書、手元にある図面や工事請負契約書などをまとめて渡すと、調査の効率が上がります。
  • 成果物の形式を確認する — ガイドラインに沿った「適合・不適合(既存不適格)・不適合(その他)・不明」の4分類で報告を求めると、売却やリフォームの判断に使いやすくなります。

なお、建築士調査の費用は、調査範囲や建物規模によって大きく異なります。書類調査のみであれば5万〜10万円程度、現地調査を含めると10万〜30万円程度が一つの目安ですが、これは地域や建築士事務所によって差があります。複数の事務所で見積もりを取り、目的に合った調査範囲を確認してから依頼することをおすすめします。

調査結果の4分類が、その後の選択肢にどう影響するかは以下のとおりです。

調査結果 意味 売却・リフォームへの影響
適合 現行法に適合している 通常の売買・リフォームが可能
不適合(既存不適格) 建築時は適法だったが法改正で現行基準に不適合 一定範囲内の増改築は緩和措置が適用可能。売却は融資条件次第で可能
不適合(その他) 無確認増築や改変による違反状態 是正が必要。現況のまま売却する場合は買取業者の対応可否を確認。融資は原則付かない
不明 隠蔽部分・資料不足で判断不能 売却やリフォームの判断を保留すべき状態

ポイント

建築士調査は合法性を「証明」する制度ではありません。調査結果は上記4分類で示されます。隠蔽部分や資料不足により、一部の箇所が「不明」になることもあります。

具体例:建築士調査の目的を伝えず失敗したケース

Cさんは相続した築40年のアパートを売却しようと、建築士に調査を依頼した。Cさんは「とにかく建物のすべてを調べてほしい」とだけ伝えたため、建築士はリフォーム用の詳細な劣化診断と補修提案書を作成。費用は30万円かかったが、売却に必要なのは「現行法に適合しているかどうかのチェック」であり、劣化診断の報告書では代用できなかった。

調査を依頼する前に「何のために調査結果を使うのか」を明確にし、その目的に合った調査範囲と成果物の形式を建築士とすり合わせることで、無駄な費用と時間を避けられます。

リフォームを目的として調査を始めた方にとって、調査結果が「不適合(その他)」となった場合、建築確認が必要な工事区分かどうかの判定や、構造上の制約の確認が特に重要になります。違反状態でのリフォームの可否については、別途詳しくまとめています。

調査前にやってはいけないこと

違法建築の疑いがあると、早く解決したくなって焦って行動を起こす人がいます。しかし、調査が十分でない段階での先走りは、状況をさらに悪化させることがあります。

やってはいけないこと

  • 違反部分を自分で撤去・解体する — 違反状態の証拠がなくなり、建築士が調査できない状態になります。撤去後に行政指導が入ると、撤去費用に加えてさらに負担が生じる可能性があります。
  • 是正工事を先行して実施する — 調査前に工事を始めると、何が問題だったのかが分からなくなり、不要な工事や工事後の検査に通らないリスクがあります。
  • 登記を自己判断で変更する — 違反状態を隠す目的での登記変更は、契約不適合責任の対象になる可能性があります。
  • 売却条件を即決する — 違反の内容や是正費用が明らかになる前に売却条件を決めると、不当に低い価格での取引や、後日トラブルの原因になります。

また、違反状態が長期にわたる場合、「時効で免責されるのでは」と考える方もいます。しかし、違法建築に対する行政処分の時効は状況によって扱いが異なり、単純な年数経過で免責されるわけではありません。

具体例:撤去したら状況が悪化したケース

Dさんは自宅の敷地に前所有者が建てた無確認の物置(10㎡)が違法建築の疑いがあると不動産会社から指摘された。「違反部分をなくせば問題ない」と考え、解体業者に依頼して物置を撤去した。

しかし、撤去後に役所から「物置があったことの確認ができない」「撤去前の状態が不明」として、建築士調査でも撤去前の違反状態を証明できなくなった。さらに、撤去によって隣地境界付近の防風壁がなくなり、隣家からのクレームが発生。結果的に売却交渉が中断した。

違法建築の調査は「現在の状態を記録に残すこと」が第一歩です。撤去や是正は、調査で状態が明確になり、必要な手続きを確認してから行うべきです。

調査後の選択肢と次の行動

調査結果が出そろった段階で、あなたの取れる選択肢は主に3つに分かれます。違反内容や物件の状況によって、最適な選択は変わります。

  • 是正して売却・リフォームする — 違反内容が軽微で、是正工事が可能かつコストが見合う場合の選択肢。確認申請が必要な場合は建築士の設計・工事管理が必要です。
  • 現況のまま住み続ける — 違反状態が既存不適格であり、かつ現時点で行政指導を受けていない場合は、そのまま住み続けることも選択肢のひとつです。
  • 現況のまま専門業者へ売却する(現況買取) — 是正コストが高額になる、または構造上・法令上の理由で是正が困難な場合。違法建築の取り扱いに慣れた買取業者であれば、現況のまま買い取りが可能なケースがあります。

3つ目の「現況買取」が現実的なのは、是正にかかる費用と売却価格のバランスが合わないケースです。たとえば、調査結果が「不適合(その他)」で、違反部分の是正に200万円かかるのに、是正後の売却価格が250万円しか上がらないのであれば、是正する意味が薄くなります。

ただし、違法建築の取扱いに慣れた業者かどうかで、査定額も対応も大きく異なります。違法建築物件の買取実績が少ない業者では、リスクを大きく見積もって極端に低い価格を提示されることがあります。また、一般的な不動産会社では仲介が難しい物件でも、現況買取に対応している専門業者は存在します。業者選びでは「違法建築物件の買取実績」「契約不適合責任の免責範囲」「査定の根拠(何を基準に価格を出しているか)」を確認すると、後のトラブルを防げます。

そのため、調査後は「是正して売るか」「現況のまま売るか」の判断材料をそろえたうえで、複数の買取業者で条件を比較するところから始めるのが現実的です。1社だけで決めると、相場観がないまま契約することになります。

相続物件で違反の疑いが発覚した場合、相続人の間での対応の調整、登記義務化(令和6年4月〜)の期限、相続税申告との関係など、通常の売却とは異なる論点が加わります。相続物件に特有の手順と注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。

また、自分が建てたものではない違反状態を相続や購入によって知った場合、前所有者や施工者への責任追及が可能かどうか、契約不適合責任の対象となるかなど、法律的な対応が必要になるケースがあります。違反を事後的に知った場合の初動対応は、別途まとめています。

よくある質問(FAQ)

Q1:検査済証がなくても大丈夫ですか?

手元にないこと自体は直ちに問題にはなりません。ただし、検査済証が「交付されていない(完了検査未受検)」のか「あるが見つからない(紛失)」のかを、自治体の台帳記載事項証明書で確認する必要があります。未受検の場合は、建築士調査を経て法適合性を確認する必要があります。

Q2:役所に相談したらすぐに是正命令が出ますか?

単なる問い合わせや資料請求の段階で、直ちに是正命令が出ることは通常ありません。役所の窓口は情報提供が目的であり、調査依頼を受けて行政指導に移行するには別途の手続きが必要です。ただし、明らかな構造耐力上の危険がある場合はこの限りではありません。

Q3:登記があれば合法と言えますか?

登記の存在は建築基準法上の適法性を証明しません。登記は物理的現況と権利関係を公示する制度であり、違法建築物であっても登記は可能です。登記と建築基準法の適合性は別の制度として扱う必要があります。

Q4:固定資産税を払っていれば大丈夫ですか?

固定資産税の課税は建築基準法の審査ではありません。課税台帳への登録は資産評価のためのものであり、建築基準法令への適合状態とは無関係です。

Q5:建築計画概要書と現況が合わない場合はどうすれば?

差の原因を4つに分類してから対応を決めます。(1)法改正による差なら既存不適格の可能性、(2)無確認の増築・用途変更なら違法状態の可能性、(3)軽微な改変なら建築等に該当しない可能性、(4)原因不明なら建築士調査が必要です。この記事のステップ4の分類表を参考に切り分けてください。

Q6:建築士に調査を頼むといくらかかりますか?

一律の料金相場を示すことはできませんが、書類調査のみであれば5万〜10万円程度、現地調査を含めると10万〜30万円程度が一つの目安です。調査範囲・建物規模・地域・目的によって費用は異なるため、複数の建築士事務所で見積もりを取ることをおすすめします。

Q7:古い建物は自動的に既存不適格になりますか?

古いだけで既存不適格になるわけではありません。既存不適格は「建築当時は適法だったが、その後の法改正で現行基準に合わなくなった」状態です。建築当時も違反だった場合は違法建築であり、単なる経年では既存不適格とは呼びません。

Q8:違法建築の疑いがある場合、まず何をすればいいですか?

手元の書類を整理し、次に自治体で行政記録を確認するのが最初のステップです。この記事のステップ1・2を順に進めてください。自己判断で撤去や是正工事を行わないことが重要です。

Q9:自分で増築部分を撤去してもいいですか?

調査完了前の自己撤去は避けるべきです。撤去すると違反状態の証拠がなくなり、建築士調査で正確な判断ができなくなります。また、撤去後に行政から追加の指導を受けるリスクもあります。調査で状態が明確になってから、必要な手続きを経て撤去するようにしてください。

Q10:この調査で検査済証をもらえますか?

現況調査で検査済証が再交付されるわけではありません。検査済証は工事完了時に交付されるものであり、後日調査で代わりに発行される制度は存在しません(自治体の台帳記載事項証明書は検査済証とは別の書類です)。現況調査の結果は「適合・不適合(既存不適格)・不適合(その他)・不明」の4段階で示されます。

まとめ|違法建築かどうかは「調べ方の順番」を知っていれば慌てない

違法建築の疑いを知らされたとき、多くの人は「すぐに解決しなければ」と焦ります。しかし、調査には正しい順番があります。

  1. 手元の書類を整理する
  2. 自治体で行政記録を確認する
  3. 建築時期・増改築時期を特定する
  4. 図面と現況を照合する
  5. 必要に応じて建築士調査へ進む

この流れを守ることで、「自分で分かること」と「プロに任せるべきこと」が明確になり、不要な費用や時間をかけずに済みます。また、調査完了前の撤去・是正工事・売却の先走りは、かえって状況を複雑にするため、必ず調査を終えてから次の行動に移ってください。

あなたの物件がどの状態にあるのかを整理し、適切な選択肢を比較することから始めましょう。

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