目次
- 1 離婚しても共有持分とローンの契約状態は自動で変わらない——3つの独立した事実
- 2 最初に確認すべき4つの資料——順序が結果を変える
- 3 ペアローン・連帯債務・連帯保証の違い——契約形態で出口が変わる
- 4 共有名義の家の4つの出口を徹底比較
- 5 あなたのケースに合う出口を選ぶ——6つの診断項目
- 6 ケース別:状況に応じた進め方
- 7 持分売却という選択肢——向く人・向かない人・注意点
- 8 2026年法改正——財産分与の請求期間が5年に・寄与平等が明文化された
- 9 税金と費用のポイント
- 10 専門家への相談タイミングと持参すべき資料
- 11 よくある質問(FAQ)
- 11.1 Q. 離婚したら共有持分は自動的に半分になりますか?
- 11.2 Q. ペアローンは離婚したら片方を外せますか?
- 11.3 Q. 連帯債務で「夫が払う」と決めたら、妻は銀行への返済義務から逃れられますか?
- 11.4 Q. 共有名義の家を売るのに元配偶者の同意は必要ですか?
- 11.5 Q. 自分の共有持分だけ売ることはできますか?ローンもなくなりますか?
- 11.6 Q. 家の価格よりローン残高が多い場合(オーバーローン)はどうすればいいですか?
- 11.7 Q. 親から頭金を出してもらった分は財産分与の対象になりますか?
- 11.8 Q. 財産分与で不動産を相手に渡したら税金はかかりますか?
- 11.9 Q. 財産分与の登記にはいくらかかりますか?
- 11.10 Q. 財産分与の請求期限はいつまでですか?(2026年4月以降の離婚)

離婚しても、共有名義の家の持分割合も、ペアローン・連帯債務の契約状態も、何ひとつ自動では変わりません。登記上の持分はそのままであり、財産分与の清算割合は登記持分と必ずしも一致せず、金融機関への返済義務は夫婦間の合意だけでは変更できません。
この記事では、離婚時に「共有名義の家と住宅ローン」をどう処理すべきか、後悔しないための判断手順を解説します。
この記事で分かること:
・離婚後の共有持分・財産分与・住宅ローンの関係と、それぞれが独立している事実
・最初に確認すべき4つの資料と確認順序
・ペアローン/連帯債務/連帯保証の契約構造の違いと、離婚後の変更可否
・全体売却/一方取得/共有継続/持分売却の4つの出口の比較
・アンダーローン・オーバーローン・相手の同意の有無別のケースごとの進め方
・2026年法改正による財産分与の請求期間・寄与平等ルール
・税金・費用のポイントと専門家への相談タイミング
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
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離婚しても共有持分とローンの契約状態は自動で変わらない——3つの独立した事実
「離婚すれば共有名義の持分は自然に半分になる」「協議書で返済者を決めたら銀行のローンもそれに従う」——こうした思い込みが、後々のトラブルの原因になります。
離婚時の自宅処理で最初に理解すべきは、以下の3つの事実がすべて独立していることです。
事実1:登記上の共有持分は、離婚しただけでは変わらない。
不動産の所有権は登記が基準です。離婚という事実だけでは、共有持分の割合は動きません。持分を移すには、財産分与や売買などを原因とする所有権移転登記が必要です。
事実2:財産分与の清算割合は、登記持分と必ずしも一致しない。
財産分与は「婚姻中に夫婦の協力で形成した財産」を清算する制度です。登記上の持分割合に関わらず、実際の資金負担や特有財産(親の援助・婚前資金など)の有無によって、清算割合は変わります。2026年4月からは、寄与が異なることが明らかでない限り、夫婦の寄与は等しいものと扱われるルール(寄与平等の明文化)も始まっています。
事実3:ペアローン・連帯債務は、夫婦間の合意だけでは金融機関への債務が変わらない。
離婚協議書に「ローンは夫が全額払う」と書いても、それは夫婦間の約束にすぎません。金融機関から見れば、妻にも依然として返済義務・保証責任が残り続けます。債務者を変更するには、金融機関の承諾(実質的に新規審査)か、借り換えによる単独債務化が必要です。
ポイント
この3つは別々の「層」です。 登記上の持分を整理しても財産分与の問題は解決せず、財産分与を決めてもローンの債務は残ります。この順序で段階的に整理する必要があります。
最初に確認すべき4つの資料——順序が結果を変える
離婚後の自宅処理で最初にすべきことは、話し合いでも相談でもなく、「今の状態を正確に把握する」ことです。以下の4つの資料をこの順番で集めてください。
① 登記事項証明書(登記簿謄本)
法務局で取得できる登記簿で、以下の情報を確認します。
- 所有者(誰が何分の何を所有しているか)——思っていた持分と違うケースも多い
- 土地と建物の名義が同じかどうか——ここを見落とす人が非常に多いポイントです。土地は親名義・建物は夫婦名義など、所有者が分かれているケースがあります
- 抵当権の設定状況(乙区)——ローン債権者が誰か、連帯債務者・連帯保証人が誰として記載されているか
【具体例】土地と建物で名義が違うケース
A夫妻は結婚後、夫の親が所有する土地に、夫婦共有名義(持分各2分の1)で家を建てた。離婚時、夫は「土地も建物も半分ずつ分ければいい」と考えたが、土地の所有者は親であるため、建物の持分を分与しても土地の使用権まで分与できるわけではなかった。結局、土地所有者(親)の承諾を得たうえで建物のみを財産分与する手続きが必要になった。
——登記簿は土地と建物で別の用紙です。「土地の所有者」と「建物の所有者」が同じかどうかを、必ず両方確認してください。もし名義が違えば、土地所有者(親族であることが多い)の今後の意向も含めて話し合う必要が出てきます。
② 金銭消費貸借契約書(ローン契約書)
これが最も重要です。契約の種類によって、離婚後の取れる選択肢が変わります。契約書のタイトルと債務者の記載を確認します。
| 契約の種類 | 契約書の見方 |
|---|---|
| ペアローン | 夫・妻それぞれ別のローン契約書がある。各自が自分の債務者。相互に連帯保証人 |
| 連帯債務 | 1枚の契約書に「連帯債務者」として夫婦双方の名前がある |
| 連帯保証 | 主債務者は1人。もう1人は「連帯保証人」として記載 |
| 単独債務+共有名義 | 債務者は1人のみ。所有権のみ共有 |
③ ローン残高証明書
現在の借入残高(完済額)を金融機関から取り寄せます。基準日をそろえて取得してください。
④ 不動産査定書(2〜3社)
不動産会社に査定を依頼し、自宅の現在の想定売却価格を確認します。1社だけでは相場観が偏るため、複数社の査定を比較するのが基本です。
この4つをそろえて初めて、アンダーローン(売却価格>ローン残高)か、オーバーローン(売却価格<ローン残高)かの判定ができます。
ペアローン・連帯債務・連帯保証の違い——契約形態で出口が変わる
住宅ローンの契約形態によって、離婚後に取れる選択肢は大きく変わります。この違いを理解せずに話し合いを始めると、「合意したのに金融機関が認めなかった」という行き詰まりが起きます。
| 項目 | ペアローン | 連帯債務 | 連帯保証 | 単独債務+共有名義 |
|---|---|---|---|---|
| 契約の本数 | 2本(夫・妻それぞれ) | 1本 | 1本 | 1本 |
| 債務者 | 各自が自分の債務者 | 夫婦ともに連帯債務者 | 主債務者1人のみ | 債務者1人のみ |
| 保証人 | 相互に連帯保証人 | 連帯債務のため保証人概念なし | もう一方が連帯保証人 | 保証人が別途いる場合あり |
| 団体信用生命保険 | 各自が別々に加入 | 連生型(夫婦型)の場合あり | 主債務者のみ加入が一般的 | 債務者のみ加入 |
| 離婚後、片方を債務から外せるか | 原則不可(借り換えが必要) | 原則不可(借り換えが必要) | 原則不可(借り換えが必要) | 債務者変更は原則不可 |
| 片方が滞納した場合 | 連帯保証人として他方に請求 | 金融機関はどちらにも全額請求可能 | 連帯保証人に請求 | 債務者のみ請求対象 |
| 離婚後の現実的な選択肢 | ①借り換えによる単独債務化 ②売却 ③共有継続(リスクあり) |
①借り換えによる単独債務化 ②売却 ③共有継続(リスクあり) |
主債務者のみで借り換え (連帯保証人の債務はゼロ) |
債務者が継続して返済(名義変更のみの調整) |
この表から分かるように、ペアローンと連帯債務で最も難しいのは、契約から片方を外すのが事実上不可能なことです。 現実的な解消手段は「売却してローンを完済する」か「どちらかが借り換えて単独債務に変える」の2通りしかありません。
【具体例】「夫が返す」という合意だけでは銀行に通用しない
C夫妻はペアローンで住宅を購入。離婚協議書に「ローンの返済は夫が全額負担する」と明記し、離婚が成立した。ところが半年後、夫が会社を退職して返済が滞り、金融機関から妻にも一括返済の請求が届いた。妻は「協議書に書いてある」と主張したが、金融機関にとって協議書は夫婦間の約束にすぎず、ペアローンの連帯保証人の義務を消す効力はない。
——ペアローンや連帯債務では、夫婦間の合意と金融機関への債務は別物です。返済義務を本当に整理するには、借り換えか売却による完済しか方法がありません。
共有名義の家の4つの出口を徹底比較
離婚時の自宅処理には、大きく分けて4つの選択肢があります。どれを選ぶかは、住宅ローンの残高と時価のバランス、住み続ける人の有無と返済能力、相手の協力姿勢によって変わります。
| 選択肢 | 内容 | 価格 | 手取り(純粋な現金化) | 期間 | 相手の同意 | ローン解消 | 関係悪化リスク | 将来リスク |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①全体売却 | 家を第三者に売り、売却代金を分ける | 市場価格 | 高い(売却益を現金で分割) | 3〜6ヶ月 | 全員必須 | 完済で解消 | 低〜中 | なし |
| ②一方取得 | 一方が相手の持分を買い取り、単独名義に | 市場価格ベース | 中(代償金を受け取る側のみ現金化) | 2〜6ヶ月 | 必要 | 借り換え成功時のみ解消 | 中 | 住み続ける側に返済リスク集中 |
| ③共有継続 | 離婚後も共有名義のまま、一方が住む | — | なし(現金化しない) | 最短 | 必要 | 変わらず | 低(短期的には) | 高い |
| ④持分売却 | 自分の持分だけ第三者(買取業者)に売る | 持分比率の30〜50%程度 | 低い | 1〜3ヶ月 | 不要 | 解消しない | 高(相手の反発) | 共有状態は残る |
それぞれの選択肢を詳しく見る
① 全体売却(最もシンプルで確実)
家を第三者に売却し、売却代金からローンを完済した残りを分ける方法です。双方が合意すれば最も手戻りが少なく、ローンの連帯債務・連帯保証からも完全に抜けられます。 売却益を現金化できるため、財産分与の原資も生まれます。ただし、相手が売却に同意しない場合は進められません。
② 一方取得(どちらかが住み続ける)
一方が相手の持分を買い取り(代償金を支払い)、単独名義にします。この場合、従来のペアローン・連帯債務を解消するには、住み続ける側が単独で借り換え審査に通過する必要があります。金融機関の審査に通らないと、名義だけ移してもローンは2人に残り続けるため、実質的には成立しません。
③ 共有継続(リスクが最も高い)
離婚後も登記上の共有状態を維持したまま、一方が住み続ける方法です。手続きは最小限で済みますが、以下のリスクが残り続けます。
- 元配偶者がローンを滞納すると、もう一方に請求が来る
- 元配偶者が死亡すると、その持分が再婚相手や子どもに相続され、共有者が増える
- 将来売却しようとしても、相手が応じる保証がない
- 元配偶者が再婚し、新たな家族関係の中で売却判断がさらに困難になる
④ 持分売却(最後の出口)
自分の持分だけを買取業者に売却します。共有者の同意は不要ですが、買取価格は持分相当額より大幅に低くなるのが一般的です。また、持分を売ってもローン債務は残り続けるため、財産分与やローンの問題を別途整理する必要があります。
あなたのケースに合う出口を選ぶ——6つの診断項目
以下の6つの質問に答えることで、自分に合った出口を絞り込めます。該当するものを順に確認してください。
診断①:アンダーローンか、オーバーローンか
「複数社の不動産査定額(平均)」と「ローン残高+売却諸費用」の数字を比べてください。たとえば査定額が3,500万円、ローン残高が2,800万円、売却費用が200万円なら「3,500万円>3,000万円」でアンダーローンです。逆に査定額が2,500万円なら「2,500万円<3,000万円」でオーバーローンです。
- 売却価格 > ローン残高+費用 → アンダーローン(売却益が残る)
- 売却価格 < ローン残高+費用 → オーバーローン(不足金が発生)
この判定で、取れる出口が大きく変わります。
診断②:一方が住み続けるか、双方が退去するか
子どもがいる場合は、子どもの居住環境をどうするかも選択に大きく影響します。
診断③:住み続ける側に単独でローンの返済能力があるか
借り換え審査に通るかどうかが、一方取得が成立するかの分かれ目です。
診断④:相手が全体売却や持分取得に応じるか
相手の同意なしに進められるのは、自己持分の売却(④)だけです。
診断⑤:親の援助・婚前資金(特有財産)があるか
特有財産がある場合、財産分与の割合が登記持分と変わることがあります。
診断⑥:離婚日は2026年4月1日以後か以前か
財産分与の請求期間と寄与割合のルールが変わります。
ケース別:状況に応じた進め方
ケース1:アンダーローンで、双方が売却に合意している
最もスムーズなケースです。全体売却でローンを完済し、売却益から諸費用を差し引いた残りを財産分与として分け合います。
注意点は、売却益の配分が「登記持分どおり」になるとは限らないことです。親の援助・婚前資金などの特有財産があれば、それに応じて配分割合を調整します。
【具体例】
D夫妻は登記持分を各2分の1としている。売却価格4,000万円、ローン残高2,800万円、売却費用200万円なので、売却益は1,000万円。妻は「登記持分どおり500万円ずつ」と考えたが、夫は「頭金1,000万円を自分の親から出してもらったから、まず1,000万円は自分の特有財産だ」と主張。結局、頭金1,000万円を夫の特有財産として控除し、残った売却益はゼロになった。
——特有財産の証拠(通帳の記録や贈与契約書)を事前に用意しておかないと、財産分与の交渉で不利になります。
ケース2:オーバーローンで、売却が必要
売却してもローンが完済できないケースです。不足金の処理方法を決める必要があります。
選択肢は以下の3つです。
- 自己資金で不足金を補てんする——売却時、手持ちの現金で不足額を金融機関に支払う
- 親族から借り入れて補てんする——親族などから資金を借りて不足金を処理する
- 任意売却を検討する——金融機関の合意を得て市場価格で売却し、不足金は残債として分割返済する
注意
オーバーローンの状態で「財産分与対象外だから」と放置すると、住宅ローンを滞納し続けることになり、最終的に競売(強制売却)に至るリスクがあります。競売では市場価格より大幅に低い価格で売却され、残債も残ります。放置せず、金融機関への任意売却の相談や、弁護士への債務整理の相談を早めに行ってください。
ケース3:一方が住み続け、単独での借り換えが可能
住み続ける側が単独で新たな住宅ローンを組み、既存ローンを完済する方法です。金融機関の審査に通れば、もう一方はローン債務と保証責任から完全に解放されます。
このケースで最も注意すべきは、手続きの順序を間違えないことです。正しい順序は以下のとおりです。
- 金融機関で借り換え審査を通す
- 新しいローンで既存ローンを完済する
- 代償金(相手の持分相当額)を支払う
- 所有権移転登記を行う
譲渡所得税や登録免許税もこの時点で準備します。「まず名義だけ移して、後で代償金を払う」という順序にすると、持分を渡した側が代償金を受け取れないまま放置されるリスクがあります。 所有権移転と代償金支払いは、同時履行(どちらか一方だけ先に済ませない)で進めてください。
ケース4:一方が住み続けたいが、借り換えができない
収入不足や年齢制限などで借り換え審査に通らない場合、一方取得は成立しません。このケースで特に多いのが、「子どもを家に住ませ続けたいが、どちらも単独ではローンを組めない」というジレンマです。
この場合の現実的な選択肢は3つです。
- 全体売却(双方退去)——ローンを完済し、親子で賃貸に移る。子どもにとっては環境変化になるが、ローンのリスクからは完全に解放される
- 共有継続(リスクを受け入れる)——子どもの居住を優先する場合の最終手段。以下の合意項目を離婚協議書に明記することが最低限必要
- 持分売却後の賃貸継続——自分の持分だけ売却し、売却後も買取業者と賃貸契約を結んで住み続ける方法(リースバック型)。買取業者によって対応可否が分かれる
共有継続を選ぶ場合は、以下の項目を離婚協議書に明記しておくことが最低限必要です。
- ローン返済の負担割合と支払方法
- 修繕費・固定資産税・火災保険料の負担割合
- 将来売却する場合の条件(売却時期・価格帯・手続き)
- どちらかが死亡した場合の持分の取扱い
ケース5:相手が売却にも取得にも応じない
相手がまったく協力的でない場合、以下の選択肢があります。
① 家庭裁判所の調停を申し立てる
財産分与請求調停(家庭裁判所)を申し立てることで、話し合いの場を設けることができます。調停で合意が成立しない場合は、審判に移行します。
② 自分の持分だけ売却する
共有者の同意なしに自分の持分だけ売却することは法的には可能です。ただし、買い手は限られ、共有持分の買取業者に売ることになります。価格は持分相当額より低くなり、ローン債務も残るため、最終的な整理手段として位置づけるべきです。
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ケース6:特有財産(親の援助・婚前資金など)がある
親からの頭金の援助や、結婚前から持っていた預貯金を自宅取得に充てた場合、それらは特有財産として財産分与の対象外になる可能性があります。
ただし、特有財産と認められるには証拠が必要です。通帳の記録、振込履歴、贈与契約書などの書類を保管しておきましょう。証拠がないと、登記持分どおりの分与とされてしまう可能性があります。
持分売却という選択肢——向く人・向かない人・注意点
持分売却が現実的なのは、「全体売却には相手が応じない」「一方取得のための借り換えもできない」「早期に共有状態だけでも解消したい」というケースです。共有持分の買取業者に自分の持分を売ることで、少なくとも相手との関係からは距離を置けます。
ただし、以下の点を必ず理解したうえで判断する必要があります。
- 持分を売ってもローン債務は残ります。 持分売却は所有権の一部を移すだけで、金融機関への返済義務や保証責任は消えません。
- 買取価格は持分相当額より低くなります(一般的には持分相当額の30〜50%程度)。
- 相手に知られるリスクがあり、関係が悪化する可能性があります。
- 財産分与は別途整理する必要があるため、持分売却だけで全ての問題が解決するわけではありません。
- 持分売却後に相手がローンを滞納した場合、あなたは連帯債務者または連帯保証人として金融機関から請求を受け続けます。持分を売っても、ペアローンや連帯債務の契約そのものは解消されないからです。
持分売却が向いているのは、価格よりも時間や心理的負担の軽減を優先したい人です。ただし、共有持分の査定額は、持分割合・占有の有無・相手との関係・抵当権の状態によって業者ごとに判断が分かれます。 1社だけで決めると相場観がないまま契約することになるため、共有持分の取り扱いに慣れた複数社で条件を比べるところから始めるのが安全です。
2026年法改正——財産分与の請求期間が5年に・寄与平等が明文化された
2026年4月1日から、民法の財産分与に関するルールが改正されました。離婚日によって適用される期間やルールが変わるため、注意が必要です。
| 項目 | 改正前(2026年3月31日までの離婚) | 改正後(2026年4月1日以降の離婚) |
|---|---|---|
| 財産分与の請求期限 | 離婚から2年以内 | 離婚から5年以内 |
| 寄与の取り扱い | 条文に明示なし(判例による) | 寄与が異なることが明らかでない限り、夫婦の寄与は等しいものとみなす(民法768条3項) |
注意
離婚日によって請求期限が異なります。
・2026年3月31日以前に離婚した方 → 離婚から2年以内(旧法)
・2026年4月1日以後に離婚した方 → 離婚から5年以内(新法)
期限を過ぎると財産分与を請求する権利そのものが消滅します。該当する方は早めに弁護士や家庭裁判所へ相談してください。
また、新法では「夫婦の協力による財産形成への寄与は、特段の事情がない限り平等」と明文化されました。これにより、専業主婦(夫)の家事・育児・介護といった貢献が、財産分与の場でより明確に評価されるようになります。
税金と費用のポイント
離婚時の不動産処理には、以下の税金と費用が関係します。見落としがちなのは「財産分与だから税金がかからない」わけではないという点です。
| 項目 | 税額・費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 譲渡所得税(分与側) | 売却益 × 税率(長期20.315%/短期39.63%) | 財産分与で持分を相手に移す場合も、時価で譲渡したものとして課税 |
| 贈与税(受取側) | 原則非課税 | ただし、財産分与として社会通念上相当な範囲を超える場合は課税対象 |
| 登録免許税(移転登記) | 固定資産評価額×移転持分×2% | 財産分与による所有権移転登記の場合 |
| 3,000万円特別控除(売却時) | 1人につき最高3,000万円控除 | 共有者はそれぞれ別名義で適用可能。居住用財産であることが条件 |
譲渡所得税は、「相手に持分を渡しただけなのに、税金がかかるの?」と驚かれることが多いポイントです。税務上は、財産分与による持分移転も「時価で譲渡したもの」とみなされるため、売却益(時価−取得費)に対して課税されます。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除(譲渡所得の特別控除)の対象となるケースが多いため、実際の税額は試算が必要です。
贈与税は、財産分与として社会通念上相当と認められる範囲内なら非課税です。しかし、明らかに過大な分与や、財産分与と無関係な贈与と認められた場合は課税されます。
専門家への相談タイミングと持参すべき資料
問題が複雑になるほど、専門家の力を借りることで早期解決できる可能性が高まります。以下の表を目安に、自分の状況に合った相談先を選んでください。
| 相談先 | こんな人向け | 相談時に確認すべきこと |
|---|---|---|
| 不動産仲介会社 | 売却を検討している人 | 査定額、売却期間、仲介手数料、共有者同意の要否 |
| 共有持分買取業者 | 相手が同意せず、持分だけ売りたい人 | 査定額の根拠、ローン残っている場合の対応可否、契約不適合責任の範囲 |
| 金融機関 | 借り換えを検討している人 | 借り換え可能額、審査基準、必要書類、連帯債務者を外す条件 |
| 弁護士 | 話し合いがまとまらない、調停を検討している人 | 財産分与調停の見通し、特有財産の主張方法、オーバーローンの処理 |
| 司法書士 | 所有権移転登記を依頼する人 | 登記手続きの費用、必要書類、土地と建物で名義が異なる場合の対応 |
| 税理士 | 税金の計算や確定申告が必要な人 | 譲渡所得税の有無、3,000万円控除の適用条件、贈与税のリスク |
相談に行く際は、以下の資料を持参するとスムーズです。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 金銭消費貸借契約書(ローン契約書)
- ローン残高証明書(最新のもの)
- 不動産査定書(2〜3社分)
- 固定資産評価証明書
- 離婚協議書(作成済みの場合)
よくある質問(FAQ)
Q. 離婚したら共有持分は自動的に半分になりますか?
A. なりません。 離婚しただけでは登記上の持分割合は変わりません。財産分与や売買を原因とする所有権移転登記を法務局で行う必要があります。登記をしない限り、法律上は離婚後も共有状態が続きます。
Q. ペアローンは離婚したら片方を外せますか?
A. 原則として外せません。 ペアローンは夫婦それぞれが別々のローン契約を結んでいるうえ、相互に連帯保証人になっています。離婚協議書で「夫が全額支払う」と決めても、金融機関にとっては妻も連帯保証人としての義務を負い続けます。片方を外す唯一の方法は、住み続ける側が単独で借り換えをすることです。
Q. 連帯債務で「夫が払う」と決めたら、妻は銀行への返済義務から逃れられますか?
A. 逃れられません。 夫婦間で返済者を決めることは、あくまで夫婦内部の負担割合を決めただけです。金融機関から見れば、夫婦は連帯債務者としてどちらにも全額の返済を請求できます。夫が滞納すれば、妻にも一括請求が来ます。この状態を解消するには、売却してローンを完済するか、どちらかが借り換えて単独債務にするしか方法はありません。
Q. 共有名義の家を売るのに元配偶者の同意は必要ですか?
A. 必要です。 家全体を第三者に売却するには、共有者全員の同意(または持分価格の過半数による売却契約の締結)が必要です。元配偶者が売却に同意しない場合、家全体を売ることはできません。その場合の選択肢としては、家庭裁判所に財産分与調停を申し立てるか、自分の持分だけを買取業者に売却する方法があります。
Q. 自分の共有持分だけ売ることはできますか?ローンもなくなりますか?
A. 持分だけ売ることは可能ですが、ローンは残ります。 自分の共有持分だけなら、共有者の同意なしに売却することは法的に可能です。ただし、持分を売っても住宅ローンの返済義務や連帯保証人の責任は消えません。持分売却は所有権の一部を移すだけであり、金融機関への債務には影響しないからです。持分売却を検討する場合は、ローンの処理とは別に整理する必要があることを理解したうえで進めてください。
Q. 家の価格よりローン残高が多い場合(オーバーローン)はどうすればいいですか?
A. 自己資金で補てんする、任意売却を検討する、のいずれかになります。 オーバーローンの場合、売却しても不足金が残ります。この不足金を自己資金や親族からの借入で補てんできれば、売却は成立します。自己資金が足りない場合は、金融機関と協議のうえ任意売却を検討します。任意売却では市場価格での売却が可能で、不足金は残債として分割返済できるケースがあります。滞納を続けて競売になる前に、早めに金融機関や弁護士に相談してください。
Q. 親から頭金を出してもらった分は財産分与の対象になりますか?
A. 原則として対象外(特有財産)です。 親からの贈与によって得た資金は、その子ども個人の特有財産と認められる可能性が高いです。ただし、証拠が必要です。贈与契約書、通帳の振込履歴、資金の流れが分かる書類を保管しておかないと、特有財産として認められず、登記持分どおりの財産分与とされるリスクがあります。
Q. 財産分与で不動産を相手に渡したら税金はかかりますか?
A. 渡す側に譲渡所得税、渡される側には原則として贈与税はかかりません。 財産分与による持分移転は、税務上は「時価で譲渡したもの」とみなされ、渡す側に譲渡所得税がかかります。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除の対象となるケースが多いため、実際の税額は試算が必要です。受け取る側は、社会通念上相当な範囲内であれば贈与税は非課税です。
Q. 財産分与の登記にはいくらかかりますか?
A. 登録免許税は固定資産評価額×移転持分×2%です。 たとえば固定資産評価額2,000万円の自宅の2分の1の持分を移す場合、2,000万円×1/2×2%=20万円が登録免許税になります。このほかに、司法書士に依頼する場合は報酬(5〜10万円程度)が別途かかります。
Q. 財産分与の請求期限はいつまでですか?(2026年4月以降の離婚)
A. 離婚から5年以内です。 2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与の請求期限は5年になりました(旧法は2年)。ただし、2026年3月31日以前に離婚した方は、旧法の2年が適用されるため注意が必要です。期限を過ぎると財産分与を請求する権利そのものが消滅するため、該当する方は早めに行動してください。
まとめ
離婚時の共有名義の家と住宅ローンは、「登記持分」「財産分与」「金融機関への債務」の3層を別々に整理する必要があります。
今のあなたの状態別に、最初にすべきこと:
- まだ何も始めていない方: まず登記事項証明書・ローン契約書・残高証明書・不動産査定書の4つを集めてください。現状を数字で把握することがすべての出発点です。
- 話し合いを始める方: ペアローン・連帯債務・連帯保証の契約形態を特定し、借り換えの可能性を金融機関に確認したうえで、4つの出口を比較検討してください。
- 相手が応じない方: 家庭裁判所の調停か、自分の持分だけの売却を視野に入れてください。共有状態を長引かせると、リスクが雪だるま式に増えていきます。
- すでに離婚から時間が経っている方: 財産分与の請求期限が迫っていないか確認してください。期限切れで権利を失う前に、弁護士に相談することをおすすめします。
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