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共有持分とは、複数人でひとつの不動産を所有する場合の、各人の権利の割合(持ち分)のことです。たとえば「持分2分の1」は家や土地の半分の場所を所有する意味ではなく、共有物全体に対する権利の50%を持つことを意味します。この違いを理解していないと、自分に何ができて何ができないかを正しく判断できません。
この記事で分かること
- 共有持分の正しい意味と、「持分2分の1」にまつわる最大の誤解
- 共有者が単独でできること・過半数で決められること・全員同意が必要なこと
- 自分の持分だけ売却できるのか、できないのかの判断基準
- 共有状態を解消する5つの選択肢と、それぞれの向き不向き
- まず何を確認し、誰に相談すべきかの行動順序
この記事は、相続で実家の共有持分を持つことになった方、共同購入で共有名義になっている方が対象です。「持分って何?」という基礎から、自分の権利の範囲と取れる行動までを、具体例を交えて解説します。
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。
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共有持分とは?「持分2分の1」の正しい意味
共有持分とは、複数の人が1つの不動産を共同で所有している場合の、各所有者の権利の割合を指します。登記簿(登記事項証明書)の所有者欄には「甲 持分2分の1」「乙 持分2分の1」などと記載され、それぞれの持ち分が示されています。
この「持分」について、多くの人が最初につまずくのが「持分割合=物理的な範囲」という誤解です。
「持分2分の1」が家や土地の半分ではない理由
持分2分の1は、「家や土地の右半分」「1階部分」「土地の半分の面積」を所有する意味ではありません。民法249条1項は「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」と定めています。つまり各共有者の権利は共有物全体に及ぶのが原則です。
【具体例】兄弟で実家を相続したケース
兄と弟が実家を2分の1ずつ相続したとします。「兄は1階、弟は2階」と物理的に区分して所有できるわけではありません。両者とも「実家全体に対して持分2分の1の権利を持つ」状態です。兄が無断で1階を改築したり、賃貸に出そうとしたりすると、弟の権利(共有物全体へ及ぶ権利)を侵害することになります。
法的に可能なのは、話し合いで「兄は1階を使う、弟は2階を使う」と使用の範囲を合意すること。その合意がないまま兄が1階だけ独占使用している場合は、弟は兄に対して持分を超える使用の対価を請求できる可能性があります(民法249条2項・2023年改正で明確化)。
共有名義、共有不動産、区分所有との違い
似た言葉がいくつかあるため、整理しておきます。
| 用語 | 意味 | 共有持分との関係 |
|---|---|---|
| 共有名義 | 登記簿上、複数人が所有者として記載されている状態 | 共有持分は「共有名義になっている各人の権利の割合」を指す |
| 共有不動産 | 共有名義になっている不動産そのもの | 共有持分はその不動産に対する「権利の割合」 |
| 区分所有 | マンションの各住戸を独立した所有権として登記する方式 | 全く別の概念。区分所有では各住戸が独立した不動産であり、共有状態ではない。ただし廊下・エレベーターなどの共用部分は区分所有者全員の「共有」になる |
「共有名義」と「区分所有」は非常によく混同されます。分譲マンションの自分の部屋は区分所有(単独所有)、相続した実家を兄弟で持っている状態は共有名義と覚えておくと間違いにくいです。マンションの場合は自分の住戸は自由に売却・改装できますが、実家の共有持分は他の共有者の意向に影響される——この違いが後の権利の話に直結します。
共有持分はなぜ発生するのか
共有持分が生まれる主な原因は、共同購入と相続の2つです。原因によって、持分割合の決まり方や解消のしやすさが変わります。
共同購入(夫婦・親子・友人)
住宅を夫婦や親子で共同購入する場合、それぞれの出資割合に応じて持分割合を決めるのが一般的です。たとえば夫が3分の2、妻が3分の1を出資すれば、登記上の持分も3分の2と3分の1になります。
注意点:実際の出資割合と登記上の持分割合が異なる場合、負担していない部分について贈与税の対象となる可能性があります。住宅購入時には贈与税の配偶者控除(最大2,000万円)などが適用できるケースもあるため、税理士や司法書士に確認するのが安全です。
相続(最も多い発生原因)
被相続人が遺産分割協議を行わないまま(または遺言がないまま)亡くなると、法定相続分で複数の相続人が自動的に共有状態になります。たとえば配偶者と子2人が相続人の場合、配偶者2分の1、子は各4分の1の共有持分が発生します。
遺産分割協議がまとまれば、協議の内容に応じて持分割合を変更できますが、協議が整わないまま放置されると、相続登記義務化(2024年4月施行)の対象となり、最長で2027年3月31日までに登記しなければ過料(10万円以下)の可能性があります。
贈与・離婚時の財産分与
生前贈与や離婚時の財産分与でも共有持分が発生することがあります。たとえば「自宅を妻に半分贈与する」「離婚に伴い夫名義の自宅の半分を妻の名義にする」といったケースです。この場合は贈与税や登録免許税の取扱いが異なるため、専門家の助言が必要です。
持分割合はどう決まる?
持分割合は、発生原因によって決まり方が異なります。主なパターンを整理します。
共同購入なら出資割合が基準
共同購入では実際に負担した金額の割合が持分割合の基本です。ただし住宅ローンを一方だけが組む場合など、出資と登記持分が一致しないケースもあるため、購入前に司法書士に相談するのが確実です。
相続なら法定相続分が基準(ただし遺産分割で変更可能)
遺産分割協議が整わない場合、相続開始時の法定相続分(民法で定められた割合)が登記上の持分割合になります。ただし遺産分割協議が成立すれば、法定相続分と異なる割合に変更できます。
登記上の持分割合の確認方法
自分の現在の持分割合を知るには、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、権利部・甲区の記載を確認します。法務局で1通約600円(オンライン請求なら480円程度)で取得できます。
持分割合は固定資産税の納税通知書でも確認できますが、相続登記が未了の場合など、最新の登記状況と異なる可能性があるため、最終的には登記事項証明書で確認するのが確実です。
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共有者には何ができる?「自分だけ」vs「みんなの同意」
共有者が単独でできること、持分の過半数で決められること、全員の同意が必要なこと——この3つの区分を理解すると、「自分だけで動けること」と「他の共有者の協力が必要なこと」が明確になります。
単独でできること(保存行為+自己持分の処分)
- 緊急の修繕(雨漏りの応急処置、鍵の交換など)
- 共有物の現状維持(草むしり、清掃、雪かきなど)
- 不法占有者への明渡請求(共有物全体を第三者が無断で使用している場合、単独で排除請求できる)
- 自己の持分を第三者に売却・贈与(原則として他共有者の同意は不要)
- 自己の持分を担保に入れる(抵当権設定)
これらの行為は、他の共有者の同意を得なくても各共有者が単独で行えます。
持分の過半数で決められること(管理行為+軽微変更)
- 共有物の使用方法の決定(誰がどのように使うかのルール決め)
- 通常の管理・運営(管理会社の選任、修繕計画の策定)
- 軽微な変更(2023年改正で追加。外壁塗装やアスファルト舗装など、形状や効用の著しい変更を伴わないもの)
- 短期賃貸借の設定(土地は5年以内、建物は3年以内の賃貸借契約)
全員の同意が必要なこと(変更行為)
- 不動産全体の売却(土地・建物すべてを第三者に譲渡する場合)
- 建物の増改築・取り壊し
- 建物の全面的なリフォーム(間取り変更など構造に影響するもの)
- 長期の賃貸借契約(借地借家法の適用を受ける賃貸借)
- 共有物の性質を変える行為(農地を宅地に変更するなど)
| 行為の内容 | 必要な同意 | 備考 |
|---|---|---|
| 雨漏りの応急修理 | 単独でOK | 保存行為(緊急かつ必要最小限) |
| 鍵の交換・草むしり | 単独でOK | 保存行為(現状維持) |
| 不法占有者への明渡請求 | 単独でOK | 保存行為 |
| 外壁の塗装(大規模修繕) | 持分の過半数 | 軽微変更(2023年改正) |
| 建物の賃貸(3年以内) | 持分の過半数 | 短期賃貸借として明確化(2023年改正) |
| 増築・取り壊し | 全員の同意 | 変更行為 |
| 不動産全体の売却 | 全員の同意 | 変更行為 |
| 自分の持分だけ売却 | 原則不要 | 自己持分の処分 |
「法的にできる」と「実際に揉めずにできる」は別
ここまで読んで「思ったより自分で動けるんだ」と感じたかもしれません。ただし、注意すべき点があります。
【具体例】法的には売却できるが、現実は…
自分の持分だけなら原則として他共有者の同意なしで売却できます。しかし、買い手が現れるかは別問題。
買い手は「この物件の共有者の一人から持分を買っても、他の共有者と一緒に使える(または買取額に見合う利益が得られる)のか」を判断します。共有者がその物件に住んでいる場合や、共有者間で関係が悪化している場合、買い手はリスクを感じて手を出さないことが多い。
つまり「法的に売却できること」と「希望価格で、他共有者と揉めずに売れること」は全く別の話です。このギャップを理解しておかないと、「売れるはずなのに売れない」と混乱することになります。
自分の持分だけなら売れる?売れない?
共有持分の売却については、多くの人が「他共有者の同意が必要」と思い込んでいますが、原則として自分の持分だけなら単独で売却できます。ただし、ここにはいくつか前提条件と現実的な注意点があります。
自己持分のみの売却→原則として他共有者の同意は不要
自分の持分はあなたの財産です。民法上、他共有者の同意がなくても第三者に売却することは可能です。この点では、共有者の一人が反対していても、あなたが持分を売ることを妨げられません。
不動産全体の売却→共有者全員の同意が必要
一方、「この土地を丸ごと売却する」「この家全体を売る」という場合は、共有者全員の同意が必須です(民法251条)。一人でも反対する共有者がいれば、全体売却はできません。
つまり、「自分の持分だけなら動けるが、物件全体は動かせない」というのが正確な理解です。この違いを混同していると、「共有者は反対しているから自分は何もできない」と誤った判断をしてしまいます。
共有持分にメリットはあるのか
ここまでデメリットが続いたので「共有持分には良いことがないのでは」と思われたかもしれません。共有には以下のようなメリットもあります(ただし後述のリスクと比較して判断する必要があります)。
- 購入時の負担が軽減される:共同購入であれば、一人で全額を出すより資金負担が分散される
- 相続税の節税につながる可能性がある:小規模宅地等の特例など、一定の条件下で相続税評価額を下げられるケースがある
- 固定資産税の負担が分散される:持分割合に応じて分担できる
ただしこれらのメリットは、共有者間の関係が良好で、意思決定がスムーズにできることが前提です。揉め始めるとメリットは薄れ、デメリットが表面化します。
買い手が限られる現実と価格の壁
自分の持分だけ売却できるとはいえ、買い手は大きく限られます。持分だけを買っても一般の居住目的では使えず、他の共有者との共同管理が必要になるからです。現実的な買い手は以下の通りです。
- 他の共有者(共有者間での持分売買)
- 共有持分を専門に買い取る業者(訳あり不動産買取業者)
- 投資目的の事業者(出口戦略を持っている法人)
買取業者に売却する場合、査定額は「不動産全体の市場価格×持分割合」の30~50%程度が実務上の目安とされます。ただし占有の有無・共有者数・関係性・抵当権の有無などで大きく変動するため、一概に決められるものではありません。
共有者が住んでいる・連絡が取れない場合の注意点
共有者が物件に住んでいる場合や、連絡が取れない場合、持分売却はさらに複雑になります。
- 共有者が住んでいる:買い手が入居できず、買取価格が下がる要因になります
- 共有者と連絡が取れない:全体売却の同意を得られないため、持分売却か共有物分割請求が現実的な選択肢になります
- 共有者が認知症や成年被後見人の場合:成年後見人の同意が必要になるケースがあります
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まず確認すべきこと(行動順)
いきなり売却や解消の方法を検討する前に、まず自分の現状を正確に把握する必要があります。以下の順番で確認すると、判断材料が揃います。
- 登記事項証明書で持分割合と名義人を確認
法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)の権利部・甲区を見ると、現在の所有者全員とそれぞれの持分割合が記載されています。名義人が自分1人だけなら共有状態ではありません。 - 現在の占有者を確認
誰がその不動産に住んでいるか(または使用しているか)を確認します。自分以外の共有者が占有している場合と、第三者が占有している場合とで、対応が変わります。 - 抵当権・差押えの有無を確認
登記事項証明書の権利部・乙区に抵当権や差押えの登記がある場合、売却の際に抵当権の抹消や債権者との調整が必要になります。 - 相続登記の完了状況を確認
相続したまま登記をしていない(相続登記未了)場合、2024年4月から義務化されており、相続を知った日から3年以内(2024年4月より前の相続の場合は2027年3月31日まで)に登記する必要があります。
これらの確認を終えた段階で、「自分はどの選択肢を検討すべきか」の判断材料が揃います。
共有状態を放置するリスク
「今は特に揉めていないから」「遠方で管理できないから」と共有状態を放置すると、時間の経過とともに問題が大きくなります。代表的なリスクを整理します。
意思決定が止まる
共有状態では、修繕・賃貸・売却などの重要な判断に他の共有者の協力が必要です。共有者の一人が反対するだけで、何も決められない状態が続きます。台風で屋根が傷んでも修繕の費用負担で揉めれば、雨漏りによる建物の劣化が進みます。さらに、固定資産税や管理費の滞納が続けば、最悪の場合は競売にかけられるリスクもあります。
固定資産税の負担トラブル
【具体例】固定資産税の負担で兄弟ゲンカ
両親が亡くなり、兄と弟で実家を2分の1ずつ相続。兄は実家に住み続け、弟は遠方で別の生活。固定資産税の納税通知書は代表者である兄に届くが、兄は支払いを渋る。弟は「使ってもいない家の固定資産税をなぜ自分が払うのか」と不満。一方、兄は「親の介護を最後までやったのは自分だ」と言い張る。
法律上は、固定資産税は共有者全員が自治体に対して連帯納税義務を負う(地方税法第10条の2第1項)ため、自治体は代表者に全額を請求できます。共有者間では民法253条に基づき持分按分で負担するのが原則ですが、実際に立替えた側が他の共有者に請求しなければ回収できません。
このように、税金の負担が兄弟間の感情的な対立に発展するケースは少なくありません。
相続による共有者の増加
【具体例】相続が繰り返されると共有者が6人に
A・B・Cの3兄弟が実家を3分の1ずつ相続。
①Aが死亡 → Aの持分をAの配偶者と子2人が相続(各9分の1)
②Bが死亡 → Bの持分をBの配偶者と子1人が相続(各9分の1)
結果、共有者は6人に。
Cにとって、A・Bが存命中は「兄弟」という気心の知れた関係で話ができたのに、今度は義理の姉・甥・姪を含めた6人全員の同意がないと、物件の売却や大規模修繕ができません。連絡先すら知らない相手もいるため、意思決定はますます困難になります。
このように、共有状態を放置していると「今は揉めていないから大丈夫」という状態から、数年後には「誰に連絡すればいいかも分からない」状態に変わります。
相続登記義務化の期限(2027年3月31日までに要対応)
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請が必要です。2024年4月より前から未登記の場合は、2027年3月31日が経過措置の期限となっています。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
共有状態のまま相続人がさらに増えると、全員の協力なくして登記手続きが進められなくなるため、早めの対応が重要です。
共有状態を解消する5つの選択肢
共有状態を解消する方法は、大きく分けて5つあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、自分の状況に合ったものを選ぶ必要があります。以下の点をチェックして、自分に合いそうな選択肢を絞り込んでみてください。
チェックポイント
- 他の共有者と話し合いはできる状態か
- 他の共有者が持分を買い取ってくれそうか
- 自分は現金化を急いでいるか、それとも時間をかけられるか
- 共有者間の関係は良好か、すでに悪化しているか
①共有者間の話し合いで全体売却
共有者全員の同意が得られるのであれば、最もシンプルな方法です。不動産全体を市場に出すか、買取業者に売却して代金を持分割合に応じて分配します。
向いているケース:共有者間で連絡が取れ、意見がまとまる可能性がある場合
向かないケース:一人でも反対者がいる場合、連絡が取れない共有者がいる場合
②共有者間での持分の売買
共有者の一人が他の共有者の持分を買い取り、単独所有者になる方法です。買い取った側は物件を自由に処分できるようになります。
向いているケース:誰か一人が物件を引き継ぎたい場合、親族間で比較的安く売買できる場合
向かないケース:買い取りたい側に十分な資金がない場合、価格で折り合いがつかない場合
③自分の持分だけ売却(専門業者に買取)
他の共有者と話がつかない場合でも、自分の持分だけなら単独で売却できます。ただし買い手は一般の個人ではなく、共有持分の買取に対応している専門業者が中心になります。
持分売却が現実的なのは、共有者と話がつかず、自分だけでも先に整理したい人です。ただし共有持分の査定額は、持分割合・占有の有無・共有者との関係・登記の状態によって業者ごとに判断が分かれ、同じ物件でも提示額に差が出ます。1社だけで決めると相場観がないまま契約することになるため、共有持分の取り扱いに慣れた複数社で条件を比べるところから始めるのが安全です。
④共有物分割請求(協議→調停→審判→訴訟)
共有者間で話し合いがまとまらない場合、裁判所に共有物分割請求をすることができます(民法256条)。分割方法には3種類あります。
- 現物分割:土地を物理的に分割する方法。ただし建物がある場合や、分割後にそれぞれが接道できない場合は困難。
- 代償分割:一人の共有者が物件を取得し、他の共有者に持分相当額(代償金)を支払う方法。
- 換価分割:物件を競売などで売却し、代金を持分割合に応じて分配する方法。最も現実的なケースが多い。
注意点:共有物分割請求は時間と費用がかかります。調停→審判→訴訟の流れで、半年から1年以上かかることも珍しくありません。弁護士費用も発生するため、最終的に得られる金額が減る可能性があります。また、裁判になれば共有者間の関係はほぼ修復不可能になる点も考慮すべきです。
向いているケース:話し合いが決裂し、どうしても整理したい場合
向かないケース:共有者との関係を維持したい場合、急いで現金化したい場合
⑤持分放棄(無料ではない・他共有者に帰属)
自分の持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。「権利を捨てれば終わり」と思われがちですが、実際には以下の点に注意が必要です。
- 放棄の意思表示だけでは登記が自動的に変わるわけではなく、登記手続き(持分移転登記)が必要
- 登記費用(登録免許税)が発生する
- 放棄によって他の共有者に贈与税が課される可能性がある(時価相当額の贈与とみなされるケース)
- 税金や負債がある場合は、放棄しても責任が消えるわけではない
向いているケース:持分の価値が少なく、登記費用と税務リスクを負ってでも関係を断ち切りたい場合
向かないケース:持分に一定の価値がある場合、税金や負債を抱えている場合
【比較表】5つの選択肢を横断比較
| 方法 | 費用目安 | 時間目安 | 他共有者への影響 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| ①全体売却(話し合い) | 仲介手数料(3%+6万円+消費税など) | 3~6ヶ月 | 全員の同意が必要 | 共有者間で連絡が取れ、話がまとまる |
| ②共有者間売買 | 登録免許税+司法書士報酬 | 1~3ヶ月 | 売買契約で成立 | 買い取り希望者がいる |
| ③持分の買取(専門業者) | 特になし(売主は買取価格を受け取る) | 1~2ヶ月 | 売却後、買主が共有者に | 自分だけ先に整理したい |
| ④共有物分割請求 | 弁護士費用+裁判費用 数十万円~ | 6ヶ月~1年以上 | 裁判所の判断で強制 | 話し合いが決裂した |
| ⑤持分放棄 | 登記費用+贈与税の可能性 | 1~3ヶ月 | 持分が他の共有者に移る | 価値が少なく、関係を断ち切りたい |
専門家に相談すべきケース
共有持分の問題は、状況によって相談すべき専門家が異なります。間違った相手に相談すると、適切なアドバイスが得られず、時間と費用の無駄になることがあります。
弁護士(紛争・訴訟・共有物分割請求)
共有者間で話し合いがつかず、調停や訴訟が必要なケースでは弁護士の出番です。共有物分割請求の手続きや、占有をめぐるトラブルの解決を依頼できます。
司法書士(登記・相続登記)
相続登記、持分の移転登記、共有物分割に伴う登記手続きは司法書士の管轄です。登記事項証明書の見方や、登記の要否についても相談できます。
税理士(贈与税・譲渡所得税)
持分放棄に伴う贈与税、持分売却に伴う譲渡所得税の計算は税理士に相談します。共同購入時の出資割合と登記持分の不一致による贈与税リスクも、税理士でないと正確な判断は難しい分野です。
共有持分の買取業者
「持分を売って現金化したい」という目的が明確なら、共有持分の買取に対応している専門業者に査定を依頼します。ただし業者選びは慎重に。査定額だけで判断せず、実績・契約条件・対応の丁寧さまで含めて比較検討する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1:共有持分2分の1って、家の半分を自由に使えるの?
いいえ。 持分2分の1は、家や土地の「物理的な半分」を所有する意味ではありません。共有物全体に対して持分の割合に応じた権利を持つ状態です。物理的な使用範囲を決めるには、共有者間の使用の合意が必要です。
Q2:共有者の同意がなくても自分の持分だけ売れるの?
原則として、自分の持分だけなら他共有者の同意は不要です。 売却後に買主が共有者になるため、他共有者にとっては面識のない人が共有者になる可能性がありますが、法律上は認められています。
Q3:共有者が一人で住んでいる場合、家賃を請求できる?
条件によっては可能です。 民法249条2項(2023年改正で明確化)により、共有者が自己の持分を超えて共有物を使用している場合、他の共有者はその超過使用分について対価の支払いを請求できます。ただし使用の合意があった場合や、過去の経緯によっては請求できないケースもあるため、弁護士に相談するのが確実です。
Q4:固定資産税は誰が払うの?払わない人がいるとどうなる?
固定資産税は、共有者全員が自治体に対して連帯納税義務を負います(地方税法第10条の2第1項)。つまり自治体は代表者1人に全額を請求でき、払わない人がいても代表者が立て替えることになります。共有者間では持分按分で負担するのが原則ですが(民法253条)、立て替えた側が他の共有者に別途請求する必要があります。
Q5:共有持分と区分所有は何が違うの?
全く別の概念です。 マンションの自分の部屋は区分所有(単独所有)であり、共有ではありません。マンションの廊下・エレベーター・屋上などの共用部分は区分所有者全員の共有になりますが、自分の住戸はあなたの単独所有物です。一方、共有持分は「ひとつの不動産を複数人で所有している状態」を指します。
Q6:持分放棄と相続放棄は何が違うの?
全く別の制度です。 相続放棄は、家庭裁判所に申し立てて行う「相続人としての地位」の放棄であり、特定の不動産だけを選んで放棄することはできません。一方、持分放棄はすでに取得した共有持分を放棄する行為で、放棄した持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。持分放棄には登記費用がかかり、場合によっては贈与税の対象となる点も異なります。
Q7:共有者が行方不明の場合はどうすればいい?
所在等不明共有者がいる場合、2023年施行の改正共有制度により、裁判所の決定を得て一定の手続きが可能になりました。具体的には、裁判所の許可を得て共有物の管理・変更を行ったり、所在等不明共有者の持分を取得したりする制度があります。ただし裁判所への申立て・公告・供託などが必要で、一般の共有者が独断で利用できるものではありません。弁護士に相談してください。
Q8:相続登記がまだですが、義務化の期限はいつまで?
2024年4月1日より前の相続で未登記の場合は、2027年3月31日までに登記申請が必要です(経過措置)。2024年4月1日以降の相続は、相続を知った日から3年以内が期限です。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
Q9:共有持分ってどうやって調べればいいの?
登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得します。1通約600円(オンライン請求なら約480円)で、どこの法務局でも取得可能です。権利部・甲区の「所有者」欄に、すべての所有者と持分割合が記載されています。具体的な見方はこちらの記事で解説しています。
Q10:今は揉めていないけど、放置しても大丈夫?
リスクがあります。 現時点で揉めていなくても、以下のタイミングで問題が発生しやすくなります。
- 固定資産税の支払いを誰かが滞った時
- 屋根や外壁の修繕が必要になった時
- 共有者の一人が死亡し、その相続人が加わった時
- 売却したい人が出てきた時
「今は大丈夫」は「いつ問題が起きてもおかしくない状態」ととらえ、少なくとも登記事項証明書を確認し、現在の共有状態を把握することから始めることをおすすめします。
まとめ
共有持分とは、複数人で1つの不動産を所有する場合の権利の割合であり、「持分2分の1=物理的な半分」ではありません。この誤解を解くことが、共有持分を正しく理解する第一歩です。
共有状態には、以下の特徴があります。
- 自分の持分だけなら単独で売却できるが、不動産全体の売却には全員の同意が必要
- 単独でできること(保存行為)と、過半数・全員同意が必要なことの違いを理解しておく
- 固定資産税の負担や相続による共有者の増加など、放置すると複雑化するリスクがある
- 解消方法は「話し合いによる全体売却」「共有者間売買」「持分の買取」「共有物分割請求」「持分放棄」の5つがあり、状況によって最適な選択肢が異なる
まずは登記事項証明書を取得して、自分の持分割合・名義人・抵当権の有無を確認することから始めてください。その上で、共有者と話し合いが可能か、持分売却を検討すべきか、専門家に相談すべきかを判断していきましょう。
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