目次
- 1 この記事で整理できること ― あなたはどのケース?
- 2 違法建築・既存不適格・検査済証なし・未登記増築の違いを整理
- 3 住宅ローンが「通らない」と言われる2つの理由
- 4 「事前審査に通った=物件承認」ではない ― 2段階審査の仕組み
- 5 最初にそろえるべき5つの資料と確認の順番
- 6 確認・相談の正しい順番 ― いきなり金融機関に申し込まない
- 7 違反内容別の是正可能性と対応の考え方
- 8 ローン否決後の選択肢(買主向け)
- 9 ローン特約で確認すべき3つのポイント
- 10 もし購入後に違法建築と判明したら
- 11 売主(所有者)の立場から:住宅ローンが付かない物件をどう売るか
- 12 よくある質問(FAQ)
- 13 まとめ:自分の状態にあわせて次に取る行動を決める

「違法建築の物件だけど、住宅ローンは使えるのか」「建ぺい率オーバーの中古物件を購入しようとしているが、金融機関の審査に通るか不安」──こうした悩みを持つ人は少なくありません。
結論から言えば、違法建築や建築基準法に適合しない物件は、住宅ローンの審査が難しくなる傾向にあります。ただし、法律上「違法建築だから住宅ローンが一律禁止」というルールは存在しません。審査に影響するのは、法令違反の状態と、金融機関・保証会社の商品条件です。
問題をさらに複雑にしているのが、「違法建築」「既存不適格」「検査済証なし」「未登記増築」といった言葉が混同して使われていることです。これらの違いを理解せずに金融機関へ申し込むと、無駄な審査申込みで信用情報に傷をつけるリスクもあります。
この記事では、あなたが買主(購入予定者)か売主(所有者)か、物件がどの違反状態かに応じて、住宅ローンの可否判断と次の行動を整理します。
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。
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この記事で整理できること ― あなたはどのケース?
この記事は長くなるため、まず自分がどの状態に当てはまるかを確認してから読み進めてください。
読者の状態別 診断フロー
① あなたは買主(購入予定者)ですか、それとも売主(所有者)ですか?
- 買主 → ②へ
- 売主 → 後半の「売主の立場から」のセクションへ飛んでください
② 物件の違反状態は次のうちどれですか?
- 違法建築(建築時から違反) と指摘された → 「違法建築・既存不適格・検査済証なしの違い」を読んでから、「住宅ローンが通らない理由」へ
- 既存不適格(法改正で非適合) と言われた → 同じく「違いの整理」を確認後、「通らない理由」へ。違法建築とは扱いが異なります
- 検査済証がない とだけ言われた → 「違いの整理」で検査済証なしの意味を確認してから先へ
- まだ何も調べていない → 「最初にそろえるべき5つの資料」から読み始めてください
③ すでにローンは申し込みましたか?
- まだ申し込んでいない → 「確認・相談の正しい順番」を読んでから行動してください
- 事前審査は通った → 「事前審査に通った=物件承認ではない」を必ず読んでください
- 本審査で否決された → 「ローン否決後の選択肢」へ
違法建築・既存不適格・検査済証なし・未登記増築の違いを整理
住宅ローンの話に入る前に、まずは物件の状態を正確に把握することが重要です。この4つはよく混同されますが、法的な性質も、住宅ローン審査への影響もまったく異なります。
| 状態 | 定義 | 法的な位置づけ | 行政の対応 | 住宅ローン審査への影響 |
|---|---|---|---|---|
| 違法建築(違反建築物) | 建築時から建築基準法に違反している。または無確認の増改築で違反状態になった | 建築基準法第9条の是正命令対象になり得る | 特定行政庁から是正命令・使用禁止等の対象になる可能性がある | 審査通過は極めて困難。多くの金融機関・保証会社で対象外 |
| 既存不適格 | 建築時は適法だったが、その後の法改正・都市計画変更で現行基準に合わなくなった | 建築基準法第3条第2項により現行法の適用除外(違反ではない) | 現状のまま使用継続は可能。増改築・建て替え時に現行基準への適合が必要 | 金融機関や超過率による。一概に不可とはならないが、担保評価は下がる |
| 検査済証なし | 完了検査を受けていない、または書類を紛失した状態。建築確認は通っている場合が多い | 検査済証がないこと自体は違反ではない。ただし建築確認違反の有無は別途調査が必要 | 建築確認が通っていれば、直ちに行政指導の対象にはならない | フラット35は原則検査済証の確認が必要。一般の住宅ローンでも書類提出が求められる |
| 未登記増築 | 増築部分が登記されていない状態。建築基準法上の違反とは別問題 | 不動産登記の問題。建築基準法違反を伴うかどうかは別 | 登記の問題のみであれば行政指導の対象外 | 登記上の面積と実面積の不一致が判明すると、担保評価に影響する可能性がある |
補足: 「検査済証がない」という理由だけで違法建築と決めつけることはできません。検査済証の紛失や、そもそも完了検査が行われていなかったケースは少なくありません。また、未登記の増築部分が建築基準法に違反しているかどうかは、登記の問題とは別に調査が必要です。これらをセットで「違法建築」と判断するのは早計です。
住宅ローンが「通らない」と言われる2つの理由
「違法建築の物件は住宅ローンが通らない」という説明をよく見かけます。この説明自体は間違いではありませんが、「なぜ通らないのか」の理由が理解できていないと、適切な次の行動が取れません。
住宅ローンが通りにくくなる理由は、大きく2つに分けられます。
理由①:法律上の禁止ではなく、金融機関の商品条件の問題
まず押さえておくべきなのは、建築基準法や銀行法で「違法建築の物件には融資してはいけない」と定められているわけではないという点です。
住宅ローンが利用できないのは、各金融機関や保証会社が独自の商品条件として「法令に適合していない物件は対象外とする」と定めているためです。
例えば、りそな銀行の公式FAQでは「法令に適合していない物件はお取り扱いの対象外です」と明記されています(りそな銀行「住宅ローンよくあるご質問」より)。これはりそな銀行の商品条件であり、すべての金融機関が同じ基準というわけではありません。
つまり、A銀行で断られても、B銀行では通る可能性がゼロではないということです。ただし、その「可能性」は決して高くないのが実態であり、過度な期待は禁物です。
理由②:担保評価が下がり、保証会社の審査基準を満たせない
住宅ローンの本審査では、金融機関(または提携する保証会社)が物件の担保評価を厳格に行います。
金融機関は、借主が返済できなくなった場合に物件を競売にかけて資金回収します。しかし違法建築の物件は、競売にかけても買い手が付きにくく、担保としての価値が著しく低いと評価されます。
特に近年の住宅ローンは、金融機関単独で審査するのではなく、保証会社が実質的な審査を行うケースがほとんどです。保証会社は統一された審査基準を持っており、法令不適合物件は軒並み対象外とする傾向があります。さらに、同じ保証会社と提携している金融機関であれば、銀行を変えても審査結果は変わらない可能性が高い点にも注意が必要です。
「事前審査に通った=物件承認」ではない ― 2段階審査の仕組み
ここは非常に重要なポイントです。住宅ローンの審査は「事前審査(仮審査)」と「本審査」の2段階で構成されています。そして、この2つの審査で見ている内容がまったく違います。
| 審査の種類 | タイミング | 主な確認内容 | 物件情報の有無 |
|---|---|---|---|
| 事前審査(仮審査) | 売買契約の前(または同時) | 借主の年収・勤続年数・信用情報・返済負担率 | 不要な場合が多い(物件が未確定でも申し込める) |
| 本審査 | 売買契約の後 | 上記に加えて物件の法令適合性・担保評価 | 必須。物件の登記・図面・検査済証等を提出 |
ここでよくある誤解が、「事前審査に通ったから物件も大丈夫だろう」と思い込んでしまうことです。
注意
事前審査はあくまで「あなたの返済能力」を確認しただけです。物件の法令違反まではチェックしていません。違法建築の物件の場合、事前審査が通っても、本審査の物件審査で否決されるリスクが十分にあります。
実際に、売買契約を結び手付金を支払った後に本審査で否決され、ローン特約の内容によっては手付金を失うケースも発生しています。このリスクを避けるためには、事前審査の段階で可能な限り物件情報を金融機関に出し、本審査の目途をつけておくことが重要です。
さらに踏み込んだ話: 住宅ローンの本審査は、実質的に「保証会社」が行っているケースがほとんどです。金融機関は融資の窓口ですが、審査基準と判定は提携する保証会社(例:全国保証など)が持っています。そのため、A銀行とB銀行が同じ保証会社と提携している場合、審査結果は基本的に変わりません。「銀行を変えれば通る」と思って複数の銀行に申し込んでも、同じ保証会社が審査しているケースでは結果は同じです。保証会社を変えるためには、提携する保証会社の異なる系統の金融機関(メガバンク→信用金庫など)を選ぶ必要があります。
最初にそろえるべき5つの資料と確認の順番
金融機関に相談する前に、まず自分(または売主・不動産会社)がそろえられる資料を確認しましょう。以下の資料があると、物件の状態を正確に把握でき、無駄な審査申込みを避けられます。
| No. | 資料名 | 何が分かるか | 入手先 |
|---|---|---|---|
| 1 | 確認済証 | 建築確認が下りた事実と確認年月日 | 所有者が保管。紛失時は自治体で「台帳記載事項証明書」で確認可能 |
| 2 | 検査済証 | 完了検査に合格した事実と合格年月日 | 所有者が保管。紛失時は再発行不可だが、自治体の台帳で発行履歴を確認できる |
| 3 | 建築計画概要書 | 建築時の設計内容(建ぺい率・容積率・構造・用途等) | 自治体の建築課で閲覧・写しの交付請求が可能 |
| 4 | 登記事項証明書 | 登記上の面積・所有者・抵当権の有無 | 法務局で取得(オンライン可) |
| 5 | 固定資産税課税明細書 | 課税上の床面積(登記面積と異なる場合の手がかりに) | 自治体の固定資産税課。所有者にしか交付されない |
実務のポイント: 検査済証がないからといって、すぐに減築や解体を検討する必要はありません。まずは自治体の建築課で建築計画概要書と台帳記載事項証明書を取得し、「登記上の面積」「課税面積」「建築図面上の面積」の3つを照合することから始めてください。この3つの数値が一致していれば、違法建築ではない可能性が高いです。特に築年数が古い物件では、完了検査自体が行われていなかったケースも多く、それが直ちに違法建築を意味するわけではありません。3つの数値が一致しない場合、どの数値に差異があるかで、違反の内容(増築なのか未登記なのか)が絞り込めます。
確認・相談の正しい順番 ― いきなり金融機関に申し込まない
ここまでの流れで「違法建築かもしれない物件に住宅ローンは通りにくい」ということは分かっていただけたと思います。では、実際にどう動けばよいのか。間違った順番で行動すると、無駄な申込み履歴が残るだけでは済みません。
以下の3ステップで進めるのが合理的です。
ステップ1:資料をそろえて、自治体の建築課で現況を確認
前述の5つの資料をそろえ、自治体の建築課で建築計画概要書や台帳記載事項証明書を取得します。ここでは以下の点を確認してください。
- 確認済証・検査済証は発行されているか(発行履歴があるか)
- 建築計画上の建ぺい率・容積率と、現状の登記面積・課税面積に差異はないか
- 既存不適格(法改正による非適合)か、違法建築(建築時からの違反)か
この段階で、違反が軽微であるか、あるいは違法建築ではなく既存不適格であることが判明すれば、その後の選択肢が大きく変わります。
ステップ2:建築士に現況調査を依頼する
自治体の資料だけでは違反の有無が判断できない場合や、増築履歴が不明な場合は、建築士に現況調査を依頼します。
国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン(第4版・2026年3月)」では、検査済証の交付状況の確認から現地調査、適合状況の判定までの流れが詳細に示されています。建築士はこのガイドラインに沿って、建物の法令適合性を調査し、是正が必要な箇所とその対応方針を報告してくれます。
- 現況調査の費用目安:物件規模によりますが、数十万円程度が相場です
- 調査の結果、違反が是正可能か、どの程度の費用がかかるかまで判断できます
ステップ3:金融機関に物件資料を提出して本審査へ
物件の状態が確定したら、金融機関に相談します。このとき、事前審査の段階から物件資料も併せて提出できると理想的です。
金融機関の選び方の目安は以下の通りです。
| 金融機関の種類 | 特徴 | 違法建築への対応傾向 |
|---|---|---|
| メガバンク | 全国統一の審査基準。保証会社(全国保証等)が実質審査 | 厳格。法令不適合物件はほぼ対象外 |
| 地方銀行 | 地域ごとに条件が異なる。保証会社経由が主流 | 基本的には厳しいが、地域によって差がある |
| 信用金庫・信用組合 | 地域密着型。自庫審査(保証会社を通さない)の場合がある | 物件の実態を個別判断してくれる可能性がある。違法建築物件では最も相談価値が高い |
| フラット35 | 住宅金融支援機構の証券化ローン。中古住宅は技術基準の適合証明が必要 | 原則として適合証明が必要。違法建築では適合証明が困難だが、既存不適格や軽微な超過では対応可能な場合がある |
| ノンバンク | 住宅ローンではなく不動産担保ローンの扱いになる。金利は高め | 法令不適合物件でも担保価値が認められれば融資可能なケースがある。ただし住宅ローンより金利が高い |
いずれにしても、まずは物件の資料を金融機関に提示し、「この物件で本審査は可能か」を事前に確認することが、手付金リスクを回避するために不可欠です。
違反内容別の是正可能性と対応の考え方
同じ「違法建築」といっても、違反の内容によって是正のしやすさや費用感は大きく異なります。ここでは代表的な違反類型について、是正の考え方を整理します。
| 違反の種類 | 是正の考え方 | 費用感の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 建ぺい率超過 | 建築面積を減らす(減築)ことで是正可能。超過率が大きいほど解体範囲が広がる | 減築工事:1㎡あたり10〜20万円程度 | 構造・撤去範囲で大きく変動。部分的な減築で済むか、大きな解体になるかで費用が変わる |
| 容積率超過 | 延べ床面積を減らす減築が基本。ただし容積率の計算方法には緩和規定(吹き抜け・小屋裏収納の不算入等)があるため、建築士の調査が先 | 減築工事:1㎡あたり10〜20万円程度 | 緩和規定の適用可能性を建築士に確認してから是正工事に入るほうが無駄が少ない |
| 無確認増築 | 増築部分が建築確認不要の範囲(10㎡以内等)かを確認。範囲を超える場合は増築部分の撤去または是正工事が必要 | 増築部分の規模による。撤去のみなら数十万円〜100万円程度 | 10㎡以内の増築でも、防火・構造上の基準に違反している場合は是正が必要 |
| 接道違反(2m未満等) | 接道義務(建築基準法第43条)の問題は土地単位の制約。建物の減築では解決しない場合が多い | 隣地買い増し:土地単価による。43条但し書き許可申請:手続き代行費用含め数十万円〜 | 接道の問題は単独では解決が難しく、再建築不可の論点に近い。建物の現況ままの買取が現実的な選択肢になる |
| 用途地域違反 | 用途制限に違反する用途で使用している場合、現状の用途を変更することで是正できる可能性がある | 用途変更の手続き代行費用:数十万円〜 | 建物の構造自体が違反しているわけではないケースも多い |
考え方のポイント: ここで重要なのは、「是正可能か」と「是正に費用対効果があるか」は別の話だということです。技術的には是正可能でも、是正工事費が物件価格を上回るようであれば、現実的な選択肢とは言えません。売主の場合は、是正後の売却価格と是正費用を天秤にかける判断が必要です。
ローン否決後の選択肢(買主向け)
実際に金融機関の本審査で否決された場合、あるいは「この物件では住宅ローンは厳しい」と事前に言われた場合、次の選択肢があります。大切なのは、「なぜ否決されたのか」の理由を把握することから始めることです。
ポイント
金融機関から「ローンが通りません」と言われた場合、理由を確認してください。理由は大きく3つに分かれます。
【チェックリスト】あなたの否決理由はどれ?
- □ 借主属性の問題(年収・勤続年数・信用情報・他社借入等)→ 借主側の改善が必要。別の金融機関でも同じ理由で落ちる可能性が高い
- □ 物件の法令適合性の問題(違法建築・検査済証なし・増築未登記等)→ 是正工事か物件自体の変更が必要。物件を替えれば解決する
- □ 担保評価の問題(物件価格と融資額のバランス・築古等)→ 自己資金の追加か物件価格の見直し。値引き交渉や頭金増額で対応できる可能性がある
理由が違えば、次にとるべき行動もまったく変わります。なんとなく別の金融機関に申し込んでも、同じ結果になる可能性が高いことを理解しておきましょう。
選択肢①:別の金融機関・保証会社を探す
すべての金融機関が同じ審査基準とは限りません。特に信用金庫や地域金融機関の中には、物件の実態を個別に判断してくれるケースもあります。
ただし、同じ保証会社と提携している金融機関をいくつ回っても、審査結果は変わらない点に注意が必要です。住宅ローンの多くは金融機関が直接審査するのではなく、保証会社が実質審査を行っています。A銀行とB銀行が同じ保証会社(例:全国保証等)と提携している場合、一方で審査が通らなければ他方でも同様の結果になる可能性が高いです。
金融機関を変えて申し込む際は、「複数の金融機関に短期間で申し込むと信用情報に傷がつく」というリスクもあります。信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への照会は申込みのたびに記録され、「短期間に多くの借入申込みをしている」と判断される可能性があるためです。
選択肢②:是正工事後に再審査
違反内容が是正可能で、工事費用が現実的な範囲であれば、是正工事を行った後に再審査を受ける方法があります。この場合、以下の点を事前に確認しておく必要があります。
- 是正工事の見積もりを建築士または工事業者から取得する
- 是正後の物件が金融機関の審査基準を満たすか、建築士の現況調査報告書を金融機関に示せるようにする
- 是正工事期間中の住居確保と、工事費用の資金調達方法
ただし、是正工事が完了しても「検査済証」の再発行は基本的に行われないため、金融機関によっては書類上の要件を満たせないケースもあります。是正後の状況を金融機関に事前に確認してから工事に入るのが確実です。
選択肢③:自己資金を増やして対応する
住宅ローンが通らない理由が「担保評価の問題」であれば、自己資金を増やして融資額を減らすことで審査が通る可能性があります。また、物件を現金購入できる資金があるなら、住宅ローン自体が不要になります。
ただし、違法建築の物件を現金購入した場合でも、将来的に売却する際に同じ問題が発生する可能性があります。「安いから現金で買った」が、「売るときに買い手がつかない」というリスクを理解したうえでの判断が必要です。
選択肢④:購入を見送る(損切り判断)
是正工事費が高額で費用対効果が合わない、あるいはどの金融機関でも審査が通らない可能性が高い場合は、購入見送りも合理的な選択肢です。
この場合、すでに売買契約を結んでいてローン特約が付帯されていれば、ローン不成立を理由に契約を解除し、手付金の返還を受けられます。ただし、ローン特約の内容によっては、全額返金されないケースや、解除期限を過ぎると解除権が消滅するケースがあります。次のセクションで詳しく説明します。
ローン特約で確認すべき3つのポイント
違法建築の可能性がある物件を購入する場合、ローン特約の内容を正確に理解しておくことが契約上のリスク回避に直結します。
| 確認ポイント | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ①対象金融機関の指定 | ローン特約の対象となる金融機関が、物件審査を含む本審査までカバーしているか | 「A銀行で事前審査通過」を条件にしている場合、本審査で物件否決されると特約の効力が及ばない可能性がある。複数の金融機関を列挙しておくのが安全 |
| ②承認期限と解除期限 | ローンの承認を得るまでの期限と、それを過ぎた場合の契約解除権の有無 | 解除期限を過ぎるとローン特約による解除権が消滅する。本審査に時間がかかる物件の場合は、十分な日数を確保する |
| ③解除条件型か解除権留保型か | 「ローン不成立で自動的に契約解除(解除条件型)」か「買主が意思表示して解除(解除権留保型)」か | 解除条件型のほうが買主の負担が少ない。解除権留保型は買主が主体的に解除の意思表示をしなければならないため、期限切れに注意 |
注意
「事前審査に通りました」という言葉で安心してローン特約を安易に設定すると、本審査で物件が否決された際に手付金を失うリスクがあります。契約前に、担当の不動産会社か司法書士に「この物件の場合、ローン特約はどのような内容にすべきか」を確認することを強くおすすめします。
もし購入後に違法建築と判明したら
この記事のメインは購入前の確認ですが、すでに購入・契約後に違法建築と判明したケースについても簡単に触れておきます。
購入後に違法建築が判明した場合の対応は、以下の要因で変わります。
- 契約時に売主・仲介会社から違法建築について説明があったか(説明の有無)
- 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の免責期間が経過しているか
- 購入からどの程度の期間が経過しているか
違法建築の事実を知らされずに購入した場合は、売主や仲介会社に対して契約不適合責任を追及できる可能性があります。ただし、対応の方向性は事実関係によって大きく異なるため、状況を整理したうえで弁護士や司法書士に相談するのが確実です。
売主(所有者)の立場から:住宅ローンが付かない物件をどう売るか
ここからは、買主ではなく売主(物件の所有者)の立場での話です。違法建築や検査済証なしの物件を売ろうとしたとき、買主の住宅ローンが通らずに取引が中断してしまうことがあります。売主として取れる選択肢は主に3つです。
選択肢A:是正工事後に仲介売却
違反内容を是正し、建築士の現況調査報告書などをそろえてから、一般の住宅ローンが利用できる状態にして仲介売却する方法です。
向いているケース:
- 違反が軽微で、是正工事費が比較的安く済む
- 立地が良く、是正後に十分な売却価格が期待できる
- 時間と資金に余裕がある
注意点:
- 是正工事費が売却価格に全額反映されるとは限らない。工事費100万円かけたから売値を100万円上げられるとは考えないほうがよい
- 工事期間中は物件を売りに出せないため、期間が長引く
- 是正後も検査済証は再発行されないため、金融機関によっては審査を通らないケースが残る
選択肢B:現況のまま専門買取業者に売却
是正工事をせず、違法建築の物件に対応している専門の買取業者に売却する方法です。訳あり不動産を扱う買取業者は、違法建築の物件でも現況のまま買い取るケースがあります。
向いているケース:
- 是正工事費をかける資金や時間がない
- 違反内容が大きく、是正しても一般の買主が住宅ローンを組める見込みが薄い
- 早期に現金化したい
- 建物を解体して土地として活用する前提でもよい
注意点:
- 買取価格は市場価格より低くなる傾向がある(違反内容・是正可能性・立地・再建築可否で変動)
- 買取業者によって対応できる違反の範囲が異なる。査定の際に違反内容を正確に伝えることが重要
選択肢C:古家付き土地として売却
建物の価値をゼロと見なし、土地として売却する方法です。買主は更地として利用するか、建物を解体して新築することを前提とします。
向いているケース:
- 建物が老朽化しており、違反の是正より解体のほうが現実的
- 土地の立地が良く、土地としての需要がある
- 解体費用を売主が負担できる(または売却価格から差し引く形にする)
注意点:
- 土地のみの需要がなければ、買い手が見つかりにくい
- 解体費用が数十万〜数百万円かかる
- 再建築不可の場合は、土地としても需要が限られる
現場の視点から: 売主の方で意外と見落としがちなのが、「是正工事費をかければ、その分売価が上がる」という思い込みです。実際には、是正工事費と売価の上昇幅は必ずしも一致しません。判断のコツは、「是正後の仲介売却で想定される手取り額」と「現況のまま買取業者に出した場合の手取り額」を同時に比較することです。工事費をかける前に、両方の査定を取って比べてみるのが現実的な判断材料になります。
また、物件が相続したもので、確認済証・検査済証・増改築の履歴がまったく分からない場合は、調査方法から整理する必要があります。
是正後の仲介売却と現況買取のどちらがよいかは、物件の違反内容・立地・費用対効果によって異なります。専門の買取業者の比較については以下の記事で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 違法建築の物件でも住宅ローンは絶対に通らないのですか?
法律上「違法建築の物件への融資を禁止するルール」は存在しないため、絶対に通らないとは断言できません。ただし、多くの金融機関や保証会社が商品条件として「法令に適合していない物件は対象外」としているため、一般的には審査通過は極めて難しいと考えてください。違反内容が軽微である、是正工事が完了しているなどの条件次第では、一部の金融機関で審査が通る可能性もあります。
Q2. 既存不適格と違法建築の違いは何ですか?
既存不適格は「建築時は適法だったが、その後の法改正で現行基準に合わなくなった」状態です。建築基準法第3条第2項により適用が除外され、違法(違反)ではありません。一方、違法建築は「建築時から基準に違反していた、または無確認増築で違反状態になった」ものです。住宅ローン審査では、既存不適格よりも違法建築のほうがはるかに通りにくくなります。
Q3. 検査済証がなくても住宅ローンは組めますか?
金融機関やローン商品によります。フラット35は原則として検査済証の確認が必要です。一般の住宅ローンでも、本審査で検査済証の提出を求められるケースが多いです。ただし、検査済証がないこと自体が直ちに違法建築を意味するわけではなく、建築確認が通っていれば、建築士の現況調査報告書等を代替資料として相談できる場合もあります。
Q4. 事前審査に通ったのに本審査で落ちることはありますか?
あります。事前審査(仮審査)は主に借主の返済能力を確認するもので、物件の法令適合性まで見ていません。本審査で物件の登記・検査済証・担保評価をチェックした結果、否決されるケースは少なくありません。事前審査の通過を「物件承認」と誤解しないことが重要です。
Q5. 建ぺい率・容積率の超過が軽ければ住宅ローンは通りますか?
「超過率○%以内なら通る」といった全国一律の基準は確認できていません。審査可否は金融機関・保証会社の個別判断によります。超過が軽微であれば是正工事も比較的容易なケースが多いため、是正後に再審査を検討するほうが現実的です。どの程度なら許容されるかは、直接金融機関へ確認する必要があります。
Q6. 違法建築を是正すれば住宅ローンは利用できるようになりますか?
是正工事によって建物が法令適合状態になれば、住宅ローンを利用できる可能性は高まります。ただし、検査済証の再発行は行われないため、金融機関によっては是正後の状態を証明する資料(建築士の現況調査報告書等)が必要になります。是正工事を始める前に、対象の金融機関に「是正後の物件で審査が可能か」を確認することをおすすめします。
Q7. 売主ですが、違法建築の物件を買ってもらうにはどうすればいいですか?
売主の選択肢としては、(1)是正工事後に仲介売却、(2)現況のまま専門買取業者に売却、(3)古家付き土地として売却、の3つが主な方法です。どの選択肢が適しているかは、違反の内容・是正費用・立地・希望する売却期間によって異なります。まずは物件の違反状態を正確に把握し、是正後の仲介査定と現況買取査定を同時に取って比較することをおすすめします。
Q8. フラット35なら違法建築でも借りられますか?
フラット35は中古住宅の場合、原則として技術基準への適合証明が必要です。適合証明の取得には現地調査と書類審査が行われ、建築基準法に違反している物件は基準を満たさないと判断される可能性が高いです。「フラット35なら違法建築でも使える」といった説明は正確ではないため注意してください。ただし、既存不適格の状態や、検査済証がないことだけを理由に一律不可とは限らないため、個別の確認は必要です。
まとめ:自分の状態にあわせて次に取る行動を決める
この記事では、違法建築の物件と住宅ローンの関係について、買主と売主それぞれの立場から整理してきました。
買主(購入予定者)の方へ:
- まずは物件の違反状態を正確に把握する。違法建築・既存不適格・検査済証なしは別物
- 5つの資料(確認済証・検査済証・建築計画概要書・登記事項証明書・固定資産税課税明細書)をそろえる
- 自治体の建築課で現況を確認 → 建築士の現況調査 → 金融機関へ相談、の順番で進める
- 事前審査通過=物件承認ではないと理解する。保証会社の審査が実質を決める
- ローン特約の内容を入念に確認し、手付金リスクを回避する
- 否決された場合は、理由(借主属性・法令適合性・担保評価)を特定してから次の行動を選ぶ
売主(所有者)の方へ:
- 是正工事費と売却価格の上昇幅は必ずしも一致しない
- 是正後の仲介売却と現況買取の手取り額を同時に比較する
- 物件の状態・予算・希望期間に合わせて出口を選ぶ
違法建築の物件は「売れない」「買えない」と思われがちですが、実際には物件の状態と対応の仕方によって選択肢が変わります。最初に取るべき行動は、物件の違反状態を正確に把握し、適切な順番で相談先を回ることです。あせらず、一つひとつのステップを確実に進めてください。
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