目次
- 1 共有名義でも住宅ローン控除は「それぞれ」受けられる
- 2 まず確認しよう。「4つの割合」を一枚に整理する
- 3 いちばん迷う「補助金等の額」— 何を入力するのか
- 4 補助金控除後の取得対価と各人の対象借入金
- 5 ローン形態別|申告の計算方法と注意点
- 6 土地と建物で持分が異なるケース
- 7 補助金額が未確定・変更された場合の対応
- 8 自分で申告できるケースと専門家へ相談すべきケース
- 9 登記持分と資金負担のずれは贈与税につながる
- 10 共有状態そのものに不安がある場合の選択肢
- 11 よくある質問(FAQ)
- 11.1 共有名義の住宅でも夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられますか?
- 11.2 e-Taxの「補助金等の額」には、実際に口座に入った金額を入れればいいですか?
- 11.3 夫婦双方が同じ補助金総額を入力すると二重計上になりませんか?
- 11.4 ペアローンと連帯債務で、各人の控除対象残高の計算はどう違いますか?
- 11.5 単独ローンで共有名義にしています。妻は住宅ローン控除を受けられますか?
- 11.6 土地と建物で持分が異なる場合、どう計算すればいいですか?
- 11.7 補助金額が確定申告の時点でまだ決まっていません。どうすればいいですか?
- 11.8 登記持分と実際の資金負担が違います。贈与税がかかりますか?
- 12 まとめ

共有名義(共有持分)の住宅でも、各共有者がそれぞれ住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けられます。ただし控除額の計算は単純な持分按分ではなく、各人の「取得対価」「補助金等の額」「借入金残高」を個別に算出する必要があります。特にe-Taxの「補助金等の額」欄には、実際に振り込まれた金額ではなく、国税庁が定める「給付基礎額」を入力するのが正解です。
この記事で分かること:
- 共有名義の住宅で、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けるための条件
- e-Taxの「補助金等の額」に入力すべき金額(実受給額・持分按分額・給付基礎額の違い)
- 夫婦双方が同じ補助金総額を入力して「二重計上」にならない理由
- ペアローン・連帯債務・単独ローン+共有名義の3パターンの計算方法の違い
- 土地と建物で持分が異なる場合・補助金未確定の場合の対応
- 自分で申告できるケースと専門家(税理士・税務署)へ相談すべきケースの判断基準
対象読者:夫婦で住宅を共有取得し、ペアローンまたは連帯債務を利用した方。子育て・省エネ・ZEH補助金などを受給了定で、初年度の住宅ローン控除の確定申告を目前に控え、「補助金等の額」の入力で迷っている方に向けた記事です(2026年〈令和8年〉入居の場合、初年度申告は2027年2〜3月が期限となります)。
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。
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共有名義でも住宅ローン控除は「それぞれ」受けられる
結論から言えば、共有名義(共有持分)の住宅でも、各共有者が住宅ローン控除の要件を個別に満たせば、それぞれが控除を受けられます。夫婦2人で共有名義+ペアローン(または連帯債務)のケースでは、住宅ローン控除の恩恵を最大限に受けられる構造です。
ただし「共有名義なら自動的に2人とも控除可能」というわけではなく、以下の要件を各人が満たす必要があります。ここが最初の誤解ポイントです。
住宅ローン控除の主な要件(各人ごと):
- その住宅の債務者であること(金融機関との契約上、返済義務を負っていること)
- 取得した住宅に実際に居住していること(入居から6か月以内に居住開始しており、12月31日時点で住み続けていること)
- その年の合計所得金額が2,000万円以下であること(40㎡以上50㎡未満の特例居住用家屋の場合は1,000万円以下)
- 住宅の床面積が50㎡以上(一定の特例で40㎡以上)であること
- 床面積の判定は建物全体の面積で行います(自分の持分を乗じた面積ではありません)
- 借入金の返済期間が10年以上であること
「共有名義」と「共有持分」の違いについて簡単に整理すると、共有名義は複数人が共同で所有者になっている登記状態そのもの、共有持分は各所有者の所有権の割合を指します(例:夫3分の2・妻3分の1)。税務の計算では「各人の持分割合」が何度も登場するため、登記上の自分の持分を正確に把握しておくことが第一歩です。
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まず確認しよう。「4つの割合」を一枚に整理する
住宅ローン控除の確定申告で最初に戸惑うのは、「登記上の持分」「ローンの借入割合」「実際の資金負担割合」「補助金の帰属」がそれぞれ別の概念だという点です。この4つを混同したままe-Taxの入力画面に向かうと、どの数字を入れればいいのか分からなくなります。
実際に、夫婦共有物件の確定申告でつまずく方の多くが「登記持分=借入負担割合」と誤認しています。登記持分は所有権の割合であり、ローンの返済負担割合とは法的に別物です。
まずは以下の4つの数字を、共有者ごとに別々に書き出してみてください。
| 確認項目 | 夫 | 妻 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| ①土地の登記持分 | 登記事項証明書(全部事項証明書) | ||
| ②建物の登記持分 | 登記事項証明書(全部事項証明書) | ||
| ③借入金の負担割合 | 金銭消費貸借契約書・連帯債務の内部契約書 | ||
| ④実際の資金負担割合(頭金+ローン返済) | 出金の記録・口座履歴 |
現場でよくあるケース(具体例)
夫婦で総額4,000万円の住宅を購入。登記持分は夫3分の2・妻3分の1。住宅ローンは連帯債務で夫2,400万円・妻1,600万円の内部負担割合で契約。頭金400万円は夫が出した。
この場合、①土地持分=夫2/3・妻1/3、②建物持分=夫2/3・妻1/3、③借入負担割合=夫60%・妻40%、④資金負担割合=夫(頭金400万+ローン2,400万=2,800万/70%)・妻(ローン1,600万/30%)となる。
ここで重要なのは、登記持分(2/3・1/3)と借入負担割合(60%・40%)が一致していない点。このずれが、後述する補助金入力や控除額計算に影響する。
土地と建物で持分が異なるケースは後述しますが、まずはこの4つの数字が頭に入っていれば、以降の説明がスムーズに理解できます。登記事項証明書の詳しい確認方法は以下の記事で解説しています。
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いちばん迷う「補助金等の額」— 何を入力するのか
e-Taxの確定申告書作成コーナーで、共有名義の申告者が最も戸惑うのが「補助金等の額」の入力欄です。子育てエコホーム支援事業・こどもみらい住宅支援事業・ZEH補助金・すまい給付金など、国や自治体から住宅取得に関連する補助金を受けた場合、その金額を住宅の取得対価から差し引く必要があります。
ここで問題になるのが、「実際にもらった金額」「自分の持分で按分した金額」「補助金の総額」のどれを入力すべきかという点です。順に整理します。
3つの言葉を区別する(実受給額・持分按分額・給付基礎額)
以下の3つの言葉は似ていますが、確定申告では全く違う意味を持ちます。
| 用語 | 意味 | 計算例(補助金総額20万円、持分1/2) |
|---|---|---|
| 実受給額 | 実際に自分の口座に振り込まれた金額 | 夫の口座に20万円全額入金 → 夫の実受給額=20万円、妻の実受給額=0円 |
| 持分按分額 | 補助金総額に自分の持分を掛けた金額 | 20万円×1/2=10万円(夫・妻ともに10万円) |
| 給付基礎額 | 共有持分を掛ける前の、住宅全体を基礎とした補助金額 | 20万円(夫も妻も20万円。持分で割り戻した額) |
多くの方が「実受給額」か「持分按分額」を入力しがちですが、国税庁が定めるルールは3つ目の「給付基礎額」です。
国税庁ルール:給付基礎額を入力する
国税庁の確定申告書等作成コーナーの該当ページには、以下のように明記されています。
国税庁「補助金の入力(共有持分がある方)」より:
「共有持分に応じた補助金等の交付を受けた場合は、補助金の実際の交付額ではなく、共有持分を乗ずる前の給付基礎額を記載します。給付基礎額が不明な場合は、給付額÷家屋の共有持分で計算した金額を『補助金等の額』欄に入力してください。」
具体例(国税庁の例を引用):
補助金の給付額が100,000円で、家屋の共有持分が2分の1(1/2)の場合:
100,000円 ÷ 1/2 = 200,000円
→ この200,000円を「補助金等の額」欄に入力します。
つまり、「自分の口座に入った金額」でも「自分の持分で按分した金額」でもなく、「住宅全体に対する補助金額=給付基礎額」を入力するのが正解です。
実務のポイント:補助金は通帳ではなく交付決定書類で確認する
補助金の振込先が夫の口座だけだったとしても、その補助金の「給付基礎額」は住宅全体に対するものです。通帳の入金記録だけを見て「夫の実受給額20万円」と入力してしまうと、妻の申告でそもそも補助金の存在を記載し忘れるリスクがあります。
必ず補助金の交付決定通知書または給付金の支給決定通知書を確認し、「給付基礎額」がいくらなのかを確認してください。給付基礎額はすまい給付金の場合、給付金の計算過程で都道府県から通知される数字です。
複数の補助金制度から給付を受けた場合
子育てエコホーム支援事業とZEH補助金のように、複数の補助金制度から給付を受けるケースもあります。この場合、各制度の給付基礎額を合算した金額を「補助金等の額」欄に入力します(国税庁・質疑応答事例「補助金等」PDFに基づく)。
たとえば、給付基礎額20万円の補助金Aと給付基礎額15万円の補助金Bを受けた場合、合計35万円を「補助金等の額」に入力します。各人の持分に応じた補助金の控除効果は、システム上で給付基礎額合計×各人の持分割合として自動計算されます。
夫婦双方が同じ補助金総額を入力して「二重計上」にならない理由
ここで多くの方が不安になるのが、「夫も妻も同じ補助金総額(例:20万円)を入力したら、世帯全体で40万円の補助金を計上することになり、二重計上にならないのか」という疑問です。
結論:二重計上にはなりません。
理由は、国税庁の確定申告書等作成コーナーの内部処理にあります。e-Taxに入力された「補助金等の額(給付基礎額)」は、各人の持分割合を乗じたうえで取得対価から控除されます。つまり、システム上で以下の処理が自動的に行われます。
- 夫:取得対価(持分按分後)− 給付基礎額20万円 → 補助金控除後の取得対価
- 妻:取得対価(持分按分後)− 給付基礎額20万円 → 補助金控除後の取得対価
見かけ上は夫婦双方が同じ20万円を入力していますが、実際に補助金の効果が各人の取得対価から差し引かれるのは、各人の持分に応じた金額です。持分が夫1/2・妻1/2なら、補助金の効果は各人10万円ずつに相当します。持分が夫2/3・妻1/3なら、効果は夫約13.3万円・妻約6.7万円となり、給付基礎額20万円を単純に2倍にした扱いにはなりません。
この仕組みは、国税庁の入力画面で「補助金等の額」に続けて各人の「持分割合」を入力することで実現されています。持分割合が異なる数値であれば、補助金の控除効果も自動的に按分される設計です。
送信前の最終チェック:双方の給付基礎額を相互検算する
夫と妻がそれぞれe-Taxに入力する前に、以下の検算を行ってください。
検算方法:
夫の実受給額 ÷ 夫の登記持分割合 = 夫が入力する給付基礎額(A)
妻の実受給額 ÷ 妻の登記持分割合 = 妻が入力する給付基礎額(B)
本来、AとBは同一の金額になるはずです(持分比例給付の場合)。AとBが異なる数字になった場合、どちらかの実受給額の把握や持分割合の認識に誤りがある可能性があります。交付決定通知書をもう一度確認してください。
この検算をしておけば、「夫は20万円と入力したのに、妻は15万円と入力した」といった不整合を申告前に発見できます。
注意点:このルールが適用されないケース
上記の「給付基礎額」ルールは、「共有持分に応じて補助金等が交付される」ことが前提です。以下のケースでは個別の判断が必要になります。
- 特定の共有者のみを対象とした補助金(例:自治体の「子育て世帯限定住宅補助金」で妻のみが受給要件を満たす場合など)→ そのお金が「誰に帰属する補助金か」を制度ごとに確認する必要があります。補助金の申請者名・振込先だけでなく、制度の趣旨や交付条件で帰属を判断します。自治体の担当窓口に「この補助金は世帯主のみの帰属か、住宅全体への給付か」を確認すると確実です。
- 土地と建物のどちらに対する補助金か区分できない場合→ 合理的な基準で按分する必要があります(措置法通達41-26-4)。
- 補助金の交付が「持分」とは無関係に定額で支給される場合→ 補助制度の仕様を確認してください。持分比例給付でない場合、国税庁の割戻し計算ルールはそのまま使えません。
いずれも個別事情が絡むため、迷った場合は国税局電話相談センター(国税相談専用ダイヤル)または税理士に確認することをおすすめします。
補助金控除後の取得対価と各人の対象借入金
住宅ローン控除の計算の流れを整理すると、以下のようになります。
STEP1:各人の取得対価を計算する
住宅全体の取得対価(本体価格+諸費用等)に各人の登記持分割合を乗じて計算します。
STEP2:各人の補助金控除後取得対価を計算する
STEP1の取得対価から、各人の補助金等の控除額を差し引きます。
補助金等の控除額は、給付基礎額×各人の登記持分割合 で算出されます。
STEP3:各人の控除対象借入金残高を確定する
各人の年末の借入金残高のうち、STEP2で計算した補助金控除後取得対価を上限として、控除対象額が決まります。
より具体的には、各人の控除対象借入金残高は、以下の3つの上限のうち最も低い金額になります(租税特別措置法第41条)。
| 上限の種類 | 内容 | 具体例(夫持分1/2・年末残高1,800万円の場合) |
|---|---|---|
| ①各人の年末借入残高 | 実際のローン残高(連帯債務なら内部負担割合を乗じた後の金額) | 1,800万円 |
| ②各人の補助金控除後取得対価 | STEP2で計算した金額 | 1,980万円 |
| ③住宅性能別の借入限度額 | 入居年・住宅性能・世帯条件で変わる法定上限(令和8年入居なら4,000万円など) | 4,000万円 |
| → 控除対象借入金残高 | ①〜③のうち最も低い金額 | 1,800万円 |
数値例(夫持分1/2・妻持分1/2・住宅全体の取得対価4,000万円・補助金総額40万円・給付基礎額40万円):
夫の計算:
・夫の取得対価=4,000万円×1/2=2,000万円
・夫の補助金控除額=給付基礎額40万円×夫持分1/2=20万円
・夫の控除後取得対価=2,000万円−20万円=1,980万円
・夫の年末借入残高が1,800万円なら → ①1,800万円 < ②1,980万円 < ③4,000万円 → 控除対象=1,800万円
妻の計算(同じく):
・妻の取得対価=4,000万円×1/2=2,000万円
・妻の補助金控除額=40万円×1/2=20万円
・妻の控除後取得対価=2,000万円−20万円=1,980万円
・妻の年末借入残高が1,200万円なら → ①1,200万円 < ②1,980万円 < ③4,000万円 → 控除対象=1,200万円
ここで重要なのは、補助金の入力ルール(給付基礎額をそのまま入力する)が効いてくるのはSTEP2までで、STEP3以降は各人の実際の借入残高が基準になるという点です。補助金を「二重入力」しても、最終的な控除額が不当に膨らむ構造にはなっていないことがお分かりいただけるでしょうか。
なお、補助金の交付によって取得対価が減少した場合でも、それが住宅ローン控除の計算以外の場面(譲渡時の取得費など)に影響するかどうかは別の論点です。本記事では住宅ローン控除に限定して説明しています。
ローン形態別|申告の計算方法と注意点
同じ共有名義でも、ローンの契約形態によって各人の控除対象借入金の計算方法が異なります。ここでは代表的な3つのパターンと、それぞれの注意点を整理します。
| ローン形態 | 各人の控除対象借入金の計算 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| ペアローン 夫婦それぞれが金融機関と個別に契約 |
各人の契約上の年末残高がそのまま控除対象(各人の取得対価の範囲内) | 返済が困難になった場合のリスクは各自。登記持分と借入額のバランスに注意 |
| 連帯債務 1本のローン契約だが夫婦双方が連帯して返済義務を負う |
各人の内部負担割合を基に計算。単純に年末残高÷2ではない | 「内部負担割合」の確認が必須。契約書に明記されていない場合は別途取り決めや実態で判断 |
| 単独ローン+共有名義 ローン契約者は夫(または妻)のみ。登記は夫婦共有 |
債務者でない側(連帯債務者でもない)は原則として住宅ローン控除を受けられない | 収入合算(連帯保証型)では債務者にならない。共有名義でも控除不可 |
ペアローンの場合
ペアローンは夫婦それぞれが金融機関と別々のローン契約を結ぶため、各人の年末残高証明書に記載された金額がそのまま各人の控除対象借入金になります。計算上は単独ローンと同じで、複雑な按分は不要です。
注意すべきは、各人の借入金額と登記持分割合のバランスです。たとえば夫の借入額が3,000万円で登記持分が1/2(取得対価ベースでは2,000万円相当)の場合、控除対象借入金は「2,000万円(取得対価)」と「3,000万円(借入残高)」のいずれか低い方=2,000万円に制限されます。単独ローンと同じく、借入額が取得対価を上回る部分は控除対象外です。
連帯債務の場合
連帯債務で注意すべきは、「年末残高証明書に記載された金額をそのまま各人の控除対象にしてはいけない」という点です。
国税庁の取扱い(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/36.htm)では、連帯債務の場合の各人の控除対象借入金は、年末の連帯債務残高に各人の「内部負担割合」を乗じた金額とされています。
注意
現場でよくあるミス:年末残高証明書の全額をそのまま入力してしまう
連帯債務の場合、金融機関から発行される「年末残高証明書」には借入金全体の残高が記載されています。この金額をそのまま夫婦双方がそれぞれ控除対象として入力してしまうと、過大な控除になり、後日修正申告で追加納税が発生するリスクがあります。
必ず各人の内部負担割合(金銭消費貸借契約書や団体信用生命保険の負担割合などで確認)を乗じた金額を各人の控除対象としてください。
内部負担割合が契約書に明記されていない場合:
連帯債務の契約書に内部負担割合が明記されていないケースもあります。この場合、国税庁の取扱いでは「当事者間の内部的契約がどのように定められているか」で判断するため、実際の返済負担の実態(各人の口座から引き落とされている金額の比率など)で判断することになります。
それも明確でない場合は、登記持分割合で按分するという実務上の取扱いが一般的です(住宅金融支援機構のFAQ等でも同様の案内)。ただし、登記持分と実際の返済負担が大きく乖離している場合は、贈与税の問題も含めて税理士に確認することをおすすめします。
具体例(国税庁の事例を一部改変):
連帯債務の年末残高が3,000万円。内部負担割合が夫60%・妻40%の場合:
- 夫の控除対象借入金:3,000万円×60%=1,800万円
- 妻の控除対象借入金:3,000万円×40%=1,200万円
これに加えて、前述の「補助金控除後の取得対価」が各人の上限となるため、最終的な控除対象額は以下の3つのうち最も低い金額になります:
- 各人の借入金残高(内部負担割合を乗じた後の金額)
- 各人の補助金控除後取得対価
- 住宅の性能・入居年・世帯条件に応じた借入限度額
単独ローン+共有名義の場合
単独ローン(ローン契約者が夫のみ)で、登記だけ夫婦共有名義にしているケースです。この場合、債務者でない妻は原則として住宅ローン控除を受けられません。
妻が「収入合算(連帯保証型)」の手続きをしていても、連帯保証人は債務者(主たる債務者)ではないため、住宅ローン控除の要件である「債務者」に該当しません。共有名義であっても、契約上の債務者でなければ控除対象外です。
妻にも住宅ローン控除を受けさせるためには、ペアローンに変更するか、連帯債務に切り替える必要があります。ただしこれは新規借入や借り換えのタイミングでしか変更できないため、購入後の変更は困難です。購入前に検討すべき事項です。
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土地と建物で持分が異なるケース
土地と建物で登記持分が異なるケースでは、取得対価と補助金控除額を土地・建物それぞれ別に計算する必要があります。
たとえば、土地は夫単独名義(持分1/1)、建物は夫婦共有(夫1/2・妻1/2)というケースです。この場合:
- 土地の取得対価:全額が夫の取得対価
- 建物の取得対価:夫1/2・妻1/2で按分
- 補助金:通常は建物が対象。給付基礎額を建物の持分で按分
補助金の効果は建物の取得対価からのみ控除されるため、土地の取得対価に対して補助金控除は適用されません。また、住宅ローン控除の「床面積要件」は建物全体で判定するため(持分按分しない)、土地の持分が変わることは床面積要件に影響しません。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、土地と建物を別々に入力する画面構成になっています。土地と建物で持分が異なる場合は、各画面でそれぞれ正しい持分を個別に入力してください。土地の持分を建物に引きずって誤入力しないよう注意しましょう。
補助金額が未確定・変更された場合の対応
確定申告の時期(入居翌年の2〜3月)までに補助金額が確定していないケースがあります。この場合の対応は以下の2パターンに分かれます。
パターン1:見込額で事前申告する
- 補助金の交付決定通知書が届いている場合 → 決定額を給付基礎額として入力して申告します。まだ入金されていなくても、決定が下りていれば申告時に反映できます。
- 交付決定通知書すら届いていない場合 → 確定している補助金以外は未入力で申告するのが安全です。見込額を自己判断で入力すると、後で食い違いが起きた場合の修正が手間になります。
パターン2:申告後に補助金額が確定・変更された場合
- 申告額より補助金額が少なかった(過大申告) → 修正申告が必要です。不足する税額と延滞税を納付します。
- 申告額より補助金額が多かった(過少申告) → 「更正の請求」により、納めすぎた税金の還付を受けられます。更正の請求は確定申告の期限から5年以内に行えます。
いずれのパターンでも、補助金の交付決定通知書・入金の記録を必ず保存しておいてください。後日の修正手続きで必要になります。
自分で申告できるケースと専門家へ相談すべきケース
以下の診断表で、自分で申告できるかどうかの目安を確認してください。
| 条件 | 自分で申告可能 | 税務署に相談推奨 | 税理士に依頼推奨 |
|---|---|---|---|
| 登記持分と借入負担割合が一致している | ✅ | ||
| 補助金の給付基礎額が交付決定書で確認できる | ✅ | ||
| ペアローンで各人の借入額が明確 | ✅ | ||
| 土地と建物の持分が同じ | ✅ | ||
| 登記持分と資金負担がずれている | ✅ | ||
| 補助金の帰属が不明(誰の補助金か判断できない) | ✅ | ✅ | |
| 連帯債務で内部負担割合の取り決めがない | ✅ | ✅ | |
| 土地と建物で持分が異なる | ✅ | ||
| 申告後に補助金額が変更になる見込み | ✅ | ✅ | |
| 過去に修正申告・税務調査の経験がある | ✅ | ||
| 共有者間で資金関係が複雑(親子間贈与・扶養関係等) | ✅ |
税務署や税理士に相談するときに伝えるべき数字のリスト
相談時に「夫婦共有名義で、補助金をもらっています」と抽象的に伝えても、相手は必要な情報を引き出すのに時間がかかります。以下の5点を事前に整理してから電話・訪問するとスムーズです。
① 土地の登記持分:夫○/○・妻○/○
② 建物の登記持分:夫○/○・妻○/○
③ ローン形態(ペアローン/連帯債務/単独ローン)と、各人の年末残高・内部負担割合
④ 補助金の種類と給付基礎額(交付決定通知書に記載の金額)
⑤ 頭金・自己資金の負担額と、登記持分とのずれの有無
登記持分と資金負担のずれは贈与税につながる
住宅ローン控除の計算を正しく行うこととは別に、登記持分と実際の資金負担が食い違っている場合、贈与税の問題が発生する可能性があります。これは住宅ローン控除とは別の税金ですが、確定申告をきっかけに税務署から指摘されるリスクがあるため、あわせて理解しておく必要があります。
国税庁の具体例(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4411.htm)では、夫婦で3,000万円の住宅を購入し、夫が2,000万円のローンを組み、妻が1,000万円の頭金を出したケースを紹介しています。この場合:
- 夫の資金負担:ローン2,000万円
- 妻の資金負担:頭金1,000万円
- 本来の負担割合:夫2/3・妻1/3 → 登記持分もこれに合わせるのが自然
しかし、仮に登記持分を夫1/2・妻1/2にしてしまうと、妻は本来の負担(1/3)より多くの持分(1/2=差額1/6相当)を取得したことになり、その差額が妻への贈与とみなされる可能性があります。
注意点:
- 住宅ローン控除を受けるために「控除額が増えるから」という理由で恣意的に持分を変えることはできません。持分は実際の資金負担に基づいて決めるべきものです。
- 贈与税が非課税になる「住宅取得等資金の贈与の特例」(暦年110万円とは別枠)の期限内・限度内であれば問題にならないケースもありますが、条件や期限(令和8年12月31日まで等)を確認する必要があります。
- 登記持分と資金負担にずれがある場合は、確定申告の前に税理士または税務署で事前確認することを強くおすすめします。ずれが大きくなく、家族間の暗黙の了解で済ませているケースでも、後日問題化するリスクがあります。
共有状態そのものに不安がある場合の選択肢
ここまで、共有名義の住宅ローン控除の確定申告に特化して解説してきました。税務処理と「共有状態そのものを解消したい」というニーズは別の問題です。
住宅ローン控除の計算を正しく行うだけで悩みが解決する方には、この記事の情報で十分です。しかし、以下のような事情をお持ちの方は、税務処理とは別に「共有状態そのものの解消」を検討する必要があります。
- 離婚や別居により、共有名義を解消したい
- 住宅ローンの返済負担が一方的に偏っており、登記持分と実態が大きく乖離している
- 共有者(元配偶者・親族)との関係が悪化し、今後の管理・売却で合意が難しい
- 連絡が取れない共有者がいる
このような場合、自分の持分だけを売却する「持分売却」という選択肢があります。共有持分の買取に対応する専門業者であれば、共有者間の合意がまとまらなくても、各人の持分単位での売却が可能なケースがあります。ただし持分の査定額は物件の状態や共有者との関係によって業者ごとに判断が分かれるため、複数社で条件を比較することが重要です。
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よくある質問(FAQ)
共有名義の住宅でも夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられますか?
はい、受けられます。ただし各人が①債務者であること、②実際に居住していること、③合計所得金額が2,000万円以下(40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下)であること、④床面積50㎡以上(一部特例で40㎡以上)であることなど、各人の要件を満たす必要があります。床面積の判定は建物全体で行うため、持分を乗じる必要はありません。
e-Taxの「補助金等の額」には、実際に口座に入った金額を入れればいいですか?
いいえ、実受給額ではなく「給付基礎額」を入力します。給付基礎額とは共有持分を乗じる前の、住宅全体に対する補助金額です。給付基礎額が不明な場合は、実際に支給された金額を自分の持分割合で割り戻して算出します(例:10万円受給・持分1/2 → 給付基礎額20万円)。
夫婦双方が同じ補助金総額を入力すると二重計上になりませんか?
二重計上にはなりません。国税庁のシステムでは、入力された給付基礎額に各人の持分割合を乗じて補助金控除額を計算します。夫が給付基礎額20万円・持分1/2を入力すれば補助金効果は10万円、妻が給付基礎額20万円・持分1/2を入力すれば同じく10万円となり、世帯全体で20万円分の控除にしかなりません。
ペアローンと連帯債務で、各人の控除対象残高の計算はどう違いますか?
ペアローンは各人の契約上の年末残高をそのまま控除対象とします。連帯債務は各人の内部負担割合をローン全体の年末残高に乗じて計算します。たとえば年末残高3,000万円・内部負担割合夫6割・妻4割なら、夫1,800万円・妻1,200万円が控除対象です。
単独ローンで共有名義にしています。妻は住宅ローン控除を受けられますか?
原則として受けられません。住宅ローン控除は債務者が対象です。共有名義でも単独ローンの場合、契約者でない側は債務者に該当せず、控除を受けられません。収入合算(連帯保証型)でも同様です。
土地と建物で持分が異なる場合、どう計算すればいいですか?
土地と建物を別々に計算します。確定申告書等作成コーナーでは土地と建物を個別に入力する画面構成になっているため、それぞれに正しい持分を入力してください。
補助金額が確定申告の時点でまだ決まっていません。どうすればいいですか?
交付決定通知書が届いている場合は決定額を入力できます。届いていない場合は、確定している補助金のみを入力して申告するのが安全です。後日補助金額が変わった場合は、修正申告または更正の請求の手続きが必要になります。
登記持分と実際の資金負担が違います。贈与税がかかりますか?
場合によります。資金負担割合を超えて登記持分を取得した部分は、原則として贈与とみなされる可能性があります。住宅取得等資金の贈与の特例の範囲内であれば問題にならないケースもありますが、個別判断が必要なため、税理士または税務署に相談することをおすすめします。
まとめ
共有名義の住宅ローン控除で最も重要なのは、「登記持分」「借入負担」「資金負担」「補助金の給付基礎額」を区別し、それぞれを正しく把握したうえで確定申告に臨むことです。
この記事のポイントを最後に整理します:
- 共有名義でも各人が住宅ローン控除の条件を満たせば、それぞれ控除を受けられる
- e-Taxの「補助金等の額」には、実受給額ではなく給付基礎額(共有持分を乗じる前の住宅全体の補助金額)を入力する
- 夫婦双方が同じ給付基礎額を入力しても、システム上で各人の持分に応じて按分されるため、二重計上にはならない
- ペアローン・連帯債務・単独ローン+共有名義で計算方法が異なる。特に連帯債務では内部負担割合の確認が必須
- 土地と建物で持分が異なる場合は、それぞれ別に計算する
- 登記持分と資金負担がずれている場合は、住宅ローン控除とは別に贈与税リスクを確認する必要がある
- 複雑なケースでは、税理士または税務署に相談してから申告するのが安全
共有名義の住宅ローン控除は、正しく計算すれば夫婦で税制メリットを最大化できる制度です。複雑に見えますが、確認すべき項目を順番に整理していけば確実に処理できます。迷った場合は、税務署や税理士に「給付基礎額がいくらで、内部負担割合がいくらか」を伝えれば、的確なアドバイスが得られます。
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