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『負動産地獄』とは?書籍の内容と意味、相続で後悔しない判断ポイント

目次

書籍『負動産地獄 その相続は重荷です』(牧野知弘/文春新書)が2023年に発売され、いま地方の実家や空き家の処分に悩む人々の間で大きな反響を呼んでいます。本書は、戦後の高度成長期に「資産」とされた不動産が、人口減少・高齢化・空き家の急増によって「負動産」へ変貌し、相続した人に重い負担をのしかける現実を描いた問題提起の書です。この記事では、書籍の内容と「負動産」の意味を整理したうえで、刊行後に始まった制度(相続土地国庫帰属制度・相続登記義務化・管理不全空家制度)も含め、あなたの不動産が負動産化する条件と、5つの出口を判断するための実務的なポイントを解説します。

  • 書籍の概要および「負動産」という言葉が指すもの
  • あなたの不動産が負動産化する6つの診断項目
  • 相続前後に期限を区切って確認すべきこと
  • 相続放棄・一般仲介・専門買取・国庫帰属・保有継続の5つの選択肢比較
  • ケース別の判断の分かれ目と、今すぐ取るべき行動

この記事を書いた人

訳あり不動産 買取相談センター 編集部
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『負動産地獄』とは?――書籍の概要と問題提起

書籍の基本情報

項目 情報
タイトル 負動産地獄 その相続は重荷です
著者 牧野知弘(まきの・ともひろ)
出版社 文藝春秋(文春新書)
発売日 2023年2月17日
価格 1,045円(税込)
ページ数 240ページ

牧野知弘氏は不動産プロデューサーとして長年不動産市場を分析してきた人物です。過去にも『新・空き家問題』など、空き家・相続不動産問題に関する著書があります。

扱われているテーマ

本書では、以下のような問題が実際の事例とともに描かれています。

  • 団塊世代が後期高齢者に突入し、実家の相続が全国で同時多発的に発生している
  • 地方の実家は「第一世代空き家」として誰も住まなくなり、売却も賃貸もできない
  • リフォーム費用や固定資産税、管理費が毎年かかり続ける
  • 兄弟姉妹で揉め、関係が壊れるケース
  • 「評価額がある=資産」と思っていた不動産が、実際には買い手がつかない
  • 不動産業者に断られ、買取業者に持ち込んでも二束三文の提示しかない
  • 山林・原野・別荘地・古いマンションなどの処分困難な物件を抱えた人々

本書の問題提起の核心は、「財産を残す」という従来の相続の常識が崩れ、受け取った側が経済的・精神的に追い込まれる「負動産地獄」が現実のものとなっている点です。

【重要】書籍刊行後に始まった3つの制度(2026年7月時点)

本書が発売された2023年当時と比較して、その後に相続・空き家を取り巻く制度は大きく変わりました。書籍をそのままの知識で読むと、2026年現在の選択肢を正しく判断できません。特に以下3つは必ず頭に入れておく必要があります。

① 相続土地国庫帰属制度(2023年4月開始)
相続した土地を一定の要件の下で国に引き取ってもらえる制度です。2026年5月末時点の累計申請件数は5,545件、帰属件数は2,762件にのぼります。ただし建物がある土地は対象外で、審査制・有料(負担金20万円〜)です。

② 相続登記の義務化(2024年4月施行)
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記することが法律で義務づけられました(2024年4月1日以前の相続は2027年3月31日までの経過措置あり)。違反すると10万円以下の過料の対象となります。

③ 管理不全空家制度(2023年空家法改正)
「特定空家」の前段階の「管理不全空家」として市区町村から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、最大6倍の税負担になる可能性があります。ただし2025年時点では、全国の自治体のうち勧告実績があるのはわずか6%程度で、制度の運用はこれから本格化する段階です。

注意

本書籍は2023年2月発売であり、上記の制度に関する記述はありません。「書籍を読んだから知っている」では済まない情報があることを理解したうえで、現在の制度にもとづいて判断してください。

「負動産」とは?――法令用語ではないが、放置すると重い負担になる

負動産の定義

「負動産」(まけどうさん)とは、保有・管理・処分にかかる費用や手間が、その不動産から得られる経済的便益を上回っている状態の不動産を指す通俗語です。法令用語ではなく、特定の物件類型や法律状態を示すものではありません。

同じ物件でも、立地・市況・所有者の状況によって「資産」にも「負動産」にもなるという点が重要です。

「評価額がある=資産」ではない ― 3つの価格の違い

最も多い誤解の1つが、固定資産税評価額や相続税評価額が高いから「値段のつく資産」だと思い込むことです。評価額と実際の売却価格と最終手取りはまったく別の数字です。

価格の種類 意味 負動産判断での注意点
固定資産税評価額 毎年の固定資産税を算出するための基準額 市場価格とは無関係。下がれば税金が下がるわけではない(自治体による)
相続税評価額 相続税の課税対象額を算出するための基準額 路線価や倍率方式で計算。実際の売却相場とは乖離することがある
実際の売却価格(手取り) 買主が支払い、売主が受け取る金額 仲介手数料・測量費・解体費・残置物撤去費等を差し引くと、さらに減少

【具体例】
固定資産税評価額500万円の山林があっても、買い手がつかず売却価格は0円。かえって測量費・登記費用がかかり、手間を考えると「いくらか払ってでも手放したい」という状態になる——これが負動産の典型です。

具体的にどんな負担が続くか

負動産を保有し続けると、以下のような負担が毎年発生します。

  • 固定資産税・都市計画税:所有している限り毎年発生。空き家を解体して更地にすると住宅用地特例が外れ、最大6倍になるケースがある
  • 管理費・修繕積立金:マンションの場合は毎月の管理費が発生。空き室でも支払い義務は続く
  • 草刈り・雪下ろし・簡易修繕:近隣からの苦情や行政指導を避けるための維持管理コスト
  • 火災保険・地震保険:空き家でも保険の加入を求められることがある
  • 固定資産税の連帯納付義務:共有名義の場合、共有者全員に連帯納付義務がある
  • 精神的な負担:近隣からの問い合わせ、行政からの文書、放置による倒壊リスクの責任

【現場でよくあるケース】
両親が亡くなり、兄と弟で実家を相続。兄は県外に住んでおり、実家は空き家に。固定資産税の通知は代表者の兄に届くが、兄は払わず、滞納を避けるために弟が立て替え続けている。弟からすれば「使ってもいない家の固定資産税をなぜ自分だけが払うのか」と不満が爆発。さらに草が伸びて近隣からクレームが入り、管理業者への依頼費用も弟負担に。法的に持分按分の請求はできるが、兄弟関係を壊さずに請求するのは難しい——というのが実務の現実です。

あなたの不動産は「負動産」になりうるか?――6つの診断項目

下記の6つの項目にチェックを入れてみてください。該当する項目が多いほど、その不動産は「負動産化」している可能性が高く、早めの判断が必要です。

# 診断項目 チェックが入る条件
1 年間収支 家賃収入がなく、固定資産税・管理費・修繕費・保険料などの年間支出が収入を上回っている
2 市場性 周辺の不動産取引事例がなく、3年以上売りに出しても問い合わせがない。不動産会社に断られたことがある
3 権利・規制 再建築不可、接道不良、借地権、違法建築、農地転用不可、共有名義など、権利面や法令上の制約がある
4 建物・占有 建物が築40年以上で老朽化している、空き家状態が長い、ゴミ屋敷・残置物がある、賃借人が住んでいる
5 出口の有無 一般仲介で売れそうにない、相続放棄の期限を過ぎている、国庫帰属の要件(建物なし・境界確定)を満たさない
6 関係者 共有者がいる(揉めている・連絡が取れない)、抵当権や滞納がある、相続人が多数で意見がまとまらない

ポイント

この診断は「絶対に負動産かどうか」を決めるものではなく、優先して確認すべき事項を可視化するためのものです。該当数が多いほど、一般論で言われる「資産」という認識をいったんリセットし、選択肢を整理する必要があると考える目安にしてください。

知らないと損する「時系列」――相続前後に確認すべきこと

負動産になりうる不動産を相続する場合、「売れるかどうか」より先に、法的な期限のある手続きを優先する必要があります。よくあるのが「査定に出している間に相続放棄の期限が過ぎてしまった」というケース。以下に時系列で整理します。

相続前(生前整理のタイミング)

親が存命中であれば、以下のことを早めに話し合っておくのが理想的です。

  • 不動産の一覧を作る(所在地・地目・面積・固定資産税評価額・登記済みか)
  • 「相続後の処分」を前提とした遺言書の作成を検討する
  • 不要な不動産は生前に売却・処分しておく(相続時の負担を減らす)
  • 親と子の間で「相続後の扱い」について認識を共有する

相続開始後〜3か月以内(相続放棄の期限)

相続放棄の申述は、相続の開始を知った日から3か月以内と法律で定められています(民法915条1項)。

この期限を過ぎると単純承認したものとみなされ、不動産を含むすべての財産と負債を承継することになります。査定や売却活動を優先してこの期間を空費すると、放棄という選択肢を失います。

【現場でよくある失敗】
「まずは不動産会社に査定を出そう」と悠長に構えているうちに3か月が経過。相続放棄できなくなり、売れない不動産と固定資産税だけが残った——というケースは後を絶ちません。査定依頼より先に、放棄の要否を判断するための情報整理を優先しましょう。

なお、相続放棄後の管理義務については、2023年の民法改正(第940条)により、「放棄時に現に占有している場合」にのみ保存義務を負うと明確化されました。不動産を現に占有していなければ、放棄後に管理責任を負う必要はありません。

相続開始後〜10か月以内(相続税申告の期限)

相続税が課税される場合、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付が必要です(国税庁)。

相続税には配偶者控除(1億6,000万円)や小規模宅地等の特例がありますが、負動産の場合は「評価額が高い=税額が高い」となり、手放すのに資金が必要になるという逆説があります。

相続開始後〜3年以内(相続登記義務の期限)

2024年4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが法律で義務づけられました(不動産登記法第76条の2)。

2024年4月1日より前に相続を知った不動産については、2027年3月31日までの経過措置が適用されます。正当な理由なく登記を怠ると10万円以下の過料の対象となります。

「登記しなければ負担を回避できる」と考える人もいますが、登記をしないことで不利益(売却できない・国庫帰属を申請できない・固定資産税の納付義務は消えない)が生じるだけで、負担は消えません。

注意

「登記しなければ相続人にならずに済む」は誤りです。相続は登記の有無にかかわらず法律上発生します。登記をしないまま放置すると、数次相続で共有者が増え、売却も国庫帰属も進められなくなるという二次的な困窮を生みます。

【比較】負動産を手放す5つの選択肢

負動産になりうる不動産を持っている場合の出口は、大きく分けて以下の5つです。それぞれの特徴を横並びで比較します。

選択肢 価格・手取り 期間 手間・難易度 成功条件 主なリスク
①相続放棄 不動産の価値はゼロ(手放せるだけ) 3か月以内の申述が必要 中(家庭裁判所への申述手続きあり) 相続開始を知った日から3か月以内に申述 全財産(預金含む)を放棄するため、預貯金があると損をする/放棄後の占有継続で保存義務あり
②一般仲介販売 市場価格(需要があれば) 3〜12か月以上 中(内覧対応・契約手続き) 接道良好・建物状態良好・需要エリア 売れるまで固定資産税がかかり続ける/売れずに価格を下げるリスク
③専門買取 市場価格より低め(買取価格)だが確実 1〜3か月程度 低(現況渡し・査定〜契約が早い) 訳あり物件の買取実績がある業者に依頼 一般仲介より価格は低い/契約不適合責任の範囲により条件が変わる
④国庫帰属 価格はゼロだが負担金(20万円〜)が必要 標準処理期間:8か月 中〜高(書類準備・図面作成・審査あり) 更地であること/境界確定済み/共有者全員の申請/担保権なし 申請が不承認となるリスク/審査期間中も固定資産税は発生
⑤保有継続 なし(出費が続く) 無期限 低(現状維持のみ) とくになし 固定資産税・管理費が永久に続く/空き家化で近隣トラブル/倒壊リスクの責任

ポイント

「売却」と一口に言っても、一般仲介が向くケースと専門買取が向くケースは異なります。一般仲介で断られたから「売れない」と決めつける前に、専門買取の選択肢があることを知っておくだけで、状況が変わることがあります。

各選択肢を「3段階」で評価する

上の比較表だけでは、「法的に可能か」と「実際に自分ができるか」と「コストを差し引いて得か」が混ざってしまいます。以下の3段階で整理すると、選択肢の現実味が見えやすくなります。

選択肢 ①法的に可能か ②実務上可能か ③経済的に合理的か
相続放棄 ◯(期限内かつ全財産対象) ◯(家裁申述で可能) △(預貯金があると損)
一般仲介 △(需要エリアと物件状態による) ◎(高値がつけばベスト)
専門買取 ◯(訳あり物件でも対応可) ◯(価格は低いが確実)
国庫帰属 ◯(要件該当時のみ) △(建物解体・測量・書類準備が必要) △(負担金+準備費用が高額になる可能性)
保有継続 ◯(可能ではある) ◯(放置するだけ) ✕(出費が続く)

【読み解き方の例】
「国庫帰属は法的には可能だが、建物があると実務上不可能。解体すれば実務上可能になるが、解体費用+負担金の合計が固定資産税の将来負担を上回るなら経済的に合理的ではない」——こうした判断を、3段階で整理すると冷静に比較できます。

ケース別に見る「どの出口が現実的か」

どの選択肢が現実的かは、物件の状態と所有者の状況によって大きく変わります。代表的なケースを見ていきましょう。

土地だけ(更地・山林・原野)の場合

建物がないため、国庫帰属の要件を満たす可能性があります。ただし以下の条件を満たす必要があります。

  • 境界が確定している(筆界未確定の場合は申請前に測量が必要)
  • 担保権・使用収益権が設定されていない
  • 土壌汚染がない
  • 他人の利用予定がない

要件を満たさない場合や、審査期間(標準8か月)を待てない場合は、専門買取や近隣所有者への譲渡を検討します。

建物付きの場合(実家・空き家・古家あり)

建物がある土地は国庫帰属の対象外です。建物を解体して更地にしてから国庫帰属を申請するというルートは理論上ありますが、解体費用(木造で100〜200万円程度)がかかるうえ、解体後に住宅用地特例が外れて固定資産税が上がるという逆説もあります。

注意

「解体すれば解決」は単純ではありません。解体後に更地になると住宅用地特例(小規模住宅用地で課税標準1/6)が外れ、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。解体の前に、その後の出口(売却・国庫帰属・買取)が決まっているかどうかを確認しましょう。

【現場でありがちな詰まり】
「国庫帰属を狙って老朽化した実家を解体。解体費用200万円を自費で負担した。さあ申請しようとしたら、隣地との境界が確定していないことが判明。測量にさらに50〜80万円。さらに申請後、土地の一部に崖があり不承認に——。結局、解体費用+測量費用だけで300万円近くを使い、土地は手元に残った。」

解体は出口が確定してから。この順番を守らないと、費用倒れのリスクがあります。

建物付きの場合は、一般仲介または専門買取が主な選択肢になります。一般仲介が難しいケース(再建築不可・老朽化著しい・残置物あり)では、専門買取のほうが現実的です。

単独所有の場合

所有者が自分ひとりであれば、意思決定はスムーズです。相続放棄・売却・国庫帰属のいずれも、共有の場合より障害が少なくなります。

共有の場合

共有状態での出口は、単独所有より格段に難易度が上がります。以下の点に注意が必要です。

  • 全体売却には共有者全員の同意が必要
  • 自分の持分だけなら単独で売却できる(ただし買い手は限られる)
  • 国庫帰属は共有者全員の共同申請が必要
  • 相続放棄は各相続人が個別に判断できる(ただし単純承認後に放棄はできない)

共有者が遠方にいる・連絡が取れない・揉めている場合は、共有物分割請求(裁判所)という法的手続きも選択肢に入りますが、時間と費用と関係悪化のリスクを伴います。

債務超過の可能性がある場合

ローン残高や未払いの固定資産税が不動産の価値を上回っている場合、相続放棄を検討する優先度が高まります。相続放棄の期限(3か月)を過ぎると、負債も承継することになるため、債務の有無は放棄の判断より先に確認すべき事項です。

一般仲介で売却した場合、売却代金で債務を完済できるかどうか——これも判断材料の1つです。完済できない場合は任意売却や個人再生といった別のルートを検討する必要があります。

専門買取が現実的なのはどんな人か

以下の条件に複数当てはまる場合、一般仲介を経ずに専門買取を検討する価値があります。

  • 一般の不動産会社に「売れない」「買取も難しい」と断られた
  • 再建築不可、接道不良、共有持分、残置物ありなどの訳あり要素がある
  • 価格より処分の確実さとスピードを優先したい
  • 解体・測量・残置物撤去の費用を先に負担したくない
  • 遠方に住んでいて頻繁に対応できない

ただし、専門買取業者によって対応領域・査定額・費用負担のルールは異なります。1社だけで決めず、複数社を比較したうえで判断することが重要です。持分売却や訳あり物件の買取に実績がある業者であれば、一般仲介では対応できない物件でも現況のまま買取が可能なケースがあります。

よくある誤解と確認すべき事実

誤解1:「相続放棄すればいらない土地だけ捨てられる」

相続放棄は特定の財産だけを選んで放棄する制度ではありません。相続放棄をすると、不動産だけでなく預貯金や有価証券などすべての財産を放棄することになります(民法第939条)。預金が残っているのに相続放棄をすると、預金も受け取れなくなります。

逆に、負債(借金・未払いの固定資産税・ローン)がある場合は、全財産を放棄することで負債も承継しなくなります。不動産だけ手放したい場合は、相続放棄ではなく売却(自分の持分のみ)や国庫帰属を検討すべきです。

誤解2:「国はどんな土地でも引き取ってくれる」

国庫帰属制度は無条件の引取り制度ではありません。2026年5月末時点で累計5,545件の申請があり、帰属は2,762件。承認率は約94.3%と高いものの、申請前に「却下・不承認が判明した」ために取下げられたケースが355件あります。

以下のような土地は申請できません(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」より)。

  • 建物がある土地(申請却下理由として実績4件)
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 境界が明らかでない土地(申請却下理由として実績21件、最多クラス)
  • 通路など他人の使用が予定されている土地(21件)
  • 土壌汚染がある土地

また、申請が通っても負担金(宅地は1筆20万円、市街地の宅地など面積に応じて変動)が必要です。標準処理期間は8か月で、その間も固定資産税は発生し続けます。

誤解3:「相続登記しなければ負担を回避できる」

すでに述べた通り、相続登記をしないことは負担の回避にはなりません。固定資産税の納付義務は登記の有無にかかわらず発生します。登記をしないことで売却・国庫帰属の申請ができなくなり、むしろ状況を悪化させます。

誤解4:「解体すれば税金が安くなる」

建物がある間は住宅用地特例が適用され、固定資産税が軽減されています。建物を解体して更地にするとこの特例が外れ、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性があります。解体は必ず出口戦略とセットで判断しましょう。

誤解5:「0円なら誰かに引き取ってもらえる」

「0円でいいから誰かにもらってほしい」という相談は非常に多いのですが、0円でも引き取り手が見つからないのが負動産の本質です。

引き取り手がないことに乗じて、有料で「買取ります」と持ちかけるのが原野商法の二次被害です。政府広報オンラインでも注意喚起が行われています(2024年度のPIO-NET相談件数は258件、平均支払額は約258万円)。

注意

有料引取りの契約前に確認すべき5つの項目

  1. 「買取ります」と言いながら、調査費・実費・手数料など名目で事前に金銭を請求しないか
  2. 契約書に「買取価格」と「依頼者が支払う金額」が明確に記載されているか
  3. 業者の所在地・代表者名・実績が確認できるか
  4. 契約前にクーリング・オフの条件を説明されているか
  5. 複数の業者から同様の申し出があったか(唯一の申し出は特に慎重に)

専門家・相談先の選び方

負動産の判断には、複数の専門家の知見が必要になることがあります。以下の相談先を状況に応じて使い分けてください。

相談したい内容 相談先 費用の目安
相続放棄の要否・期限 弁護士・司法書士 着手金5〜10万円程度
相続登記・国庫帰属申請 司法書士 登記1件あたり5〜15万円程度
相続税の試算・申告 税理士 申告報酬は資産規模により変動
売却可能性・査定 不動産会社(一般仲介+専門買取業者) 査定は無料が一般的
建物の老朽度・解体費用 解体業者(複数見積もり) 見積もりは無料が多い
境界確定・測量 土地家屋調査士 30〜80万円程度(土地の規模・形状による)
空き家の行政指導対応 市区町村の空き家担当課 無料

専門家に相談する前に用意しておくべき7つの資料

相談時に以下の資料がそろっていると、判断がスムーズになります。

  1. 登記簿謄本(全部事項証明書):法務局で取得(1通600円)。所有者・持分・抵当権の有無が分かる
  2. 固定資産税評価証明書:市区町村役場で取得。年間の固定資産税額が分かる
  3. 固定資産税の納税通知書:直近のものがあれば、課税状況がすぐ分かる
  4. 公図・地積測量図:法務局で取得。境界の状況が確認できる
  5. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本:相続人の確定に必要
  6. 遺産分割協議書(作成済みの場合):誰が何を相続したかが分かる
  7. ローン残高証明書・抵当権設定契約書:債務の有無と金額を確認するため

まとめ:今あなたが取るべき「次の一手」

ここまでの内容を踏まえ、あなたの状況に応じた次の一手を整理します。

【時系列で整理】相続開始直後なら

  1. 第1優先:相続放棄の期限確認(3か月)— 負債の有無を確認し、放棄の要否を判断する。査定依頼より先にやること。
  2. 第2優先:相続税申告の要否確認(10か月)— 相続税評価額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えるか確認。
  3. 第3優先:相続登記の期限確認(3年)— 登記の要否・費用を確認し、必要な書類をそろえる。
  4. 第4優先:売却・処分の選択肢比較— 一般仲介・専門買取・国庫帰属を横比較し、自分に合う出口を選ぶ。

【現在の状況別】次のアクション

  • 相続前で親が存命の場合:親と資産内容を共有し、生前売却・遺言作成を検討。少なくとも「不動産リスト」と「登記の有無の確認」を始める。
  • 相続開始直後(3か月以内):まず相続放棄の要否を判断。負債(ローン・未払い税金)がある場合は放棄が優先。
  • 相続放棄の期限を過ぎた:売却・国庫帰属・専門買取のいずれかを検討。一般仲介が難しいと分かった時点で専門買取の比較を始める。
  • すでに登記は済んでいる:出口戦略だけに集中できる。一般仲介の可能性を確認し、難しい場合は専門買取または国庫帰属を比較する。
  • 兄弟姉妹と共有状態:まず共有者間で「全体売却か、持分売却か、分割か」の方針を話し合う。話がつかない場合は共有物分割請求も視野に。

『負動産地獄』が描いた問題は、決して他人事ではありません。しかし書籍刊行後に整備された制度(国庫帰属・相続登記義務化)や専門買取の選択肢を正しく理解すれば、出口がないわけでもありません。大事なのは、期限のある手続きから優先して動くことと、自分のケースに合った出口を冷静に比較することです。

よくある質問(FAQ)

負動産とはどういう意味ですか?

保有・管理・処分にかかる費用や手間が、その不動産から得られる経済的便益を上回っている状態の不動産を指す通俗語です。法令用語ではなく、「負動産地獄」は牧野知弘氏の書籍タイトルです。固定資産税評価額が高くても買い手がつかず、毎年の維持費だけが発生する土地や建物が典型的な例です。

『負動産地獄』はどんな本ですか?

牧野知弘氏による文春新書(2023年2月17日発売、1,045円税込、240ページ)です。団塊世代の高齢化に伴い全国で同時多発的に発生している実家の相続問題について、実際の事例を交えながら「資産と思っていた不動産が負動産に変わる」現実を描いた問題提起の書です。

相続した土地が売れない場合、どうすればいいですか?

一般仲介で売れない場合でも、専門買取、国庫帰属、相続放棄(期限内であれば)の選択肢があります。まずは一般仲介の不動産会社に査定を依頼し、売れない理由を確認したうえで、専門買取や国庫帰属を比較検討するのが効率的です。訳あり不動産の買取実績がある業者に複数査定を依頼することをおすすめします。

不動産だけ相続放棄できますか?

できません。相続放棄は預貯金や有価証券を含むすべての財産を放棄する制度であり、特定の不動産だけを選んで放棄することはできません。不動産だけ手放したい場合は、売却(自分の持分のみ)または国庫帰属(要件を満たせば)を検討する必要があります。

相続放棄の期限はいつまでですか?

相続の開始(被相続人の死亡)を知った日から3か月以内です(民法915条1項)。この期限を過ぎると単純承認したものとみなされ、放棄できなくなります。査定や売却活動より先に、相続放棄の要否を判断することを優先してください。

国はどんな土地でも引き取ってくれますか?

いいえ。すべての土地が対象になるわけではありません。相続土地国庫帰属制度では、建物がある土地・担保権が設定されている土地・土壌汚染がある土地・境界が明らかでない土地などは申請できません。2026年5月末時点の累計申請5,545件のうち、帰属は2,762件。申請前の段階で「要件を満たさない」と判断し取下げたケースも355件あります。審査制で負担金(1筆20万円〜)も必要です。

相続土地国庫帰属制度の費用はいくらですか?

審査手数料として申請1件につき1万4,000円(土地1筆ごと)がかかります。承認された場合、さらに負担金(宅地は1筆あたり20万円、市街地の宅地など面積に応じて変動)を納付する必要があります。なお、審査に落ちた場合でも審査手数料は返金されません。

相続登記をしないとどうなりますか?

2024年4月から相続登記が義務化されました。正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象となります。また、登記がないと売却も国庫帰属の申請もできず、数次相続で権利関係が複雑化するリスクがあります。2024年4月1日以前の相続については2027年3月31日までの経過措置があります。

空き家の固定資産税はいくらですか?

空き家の固定資産税は、建物の評価額と土地の評価額から算出され、物件によって異なるため一概にいくらとは言えません。ただし、管理不全空家に指定されると住宅用地特例が外れ、課税標準が最大6倍になる可能性があります。また、建物を解体して更地にした場合も同様に特例が外れて税額が上がる点に注意が必要です。

原野商法の二次被害に遭わないためにはどうすればいいですか?

「土地を買い取る」と持ちかけられて、事前に調査費・整地費などの名目で金銭を請求されるのが典型的な手口です。絶対に契約前に金銭を支払わないこと、業者の所在地や実績を必ず確認すること、複数社から見積もりを取ること、クーリング・オフの条件を確認することを徹底してください。不安な場合は消費生活センター(188番)に相談しましょう。

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