目次
- 1 北海道に「空き家解体補助金」の一律制度はありません
- 2 2026年度、北海道内で補助金が確認できた自治体一覧
- 2.1 札幌市——通常型は上限50万円、地域連携型は上限150万円
- 2.2 旭川市——上限30万円、抽選方式
- 2.3 函館市——上限30万円、対象地区の制限あり
- 2.4 苫小牧市——上限50万円だが築年・所得制限あり
- 2.5 釧路市——上限50万円、先着順
- 2.6 帯広市——特定空家限定・補助率80%・上限50万円
- 2.7 伊達市——一般最大70万円、不良最大100万円
- 2.8 小樽市——特定空家限定・上限30万円
- 2.9 網走市——特定空家は上限50万円、昭和56年以前は上限30万円
- 2.10 江別市——特定空家限定・上限30万円
- 2.11 木古内町——上限60万円、概算払い(前払い)の可能性あり
- 2.12 その他、確認できた自治体
- 3 補助対象になる空き家・ならない空き家の違い【3つの区分】
- 4 申請の流れと「やってはいけないタイミング」
- 5 相続・共有・名義問題がある場合の注意点
- 6 補助対象になる費用・ならない費用
- 7 補助金を使うか、古家付きのまま売るか——判断のポイント
- 8 よくある質問(FAQ)
- 9 まとめ——まず自治体窓口に電話する前に確認すること

「北海道の空き家を解体したいけど、補助金は出るのか」「自分の住んでいる市町村ではいくらもらえるのか」——そう考えてこの記事にたどり着いた方は少なくないでしょう。
結論から言うと、北海道全体で個人に一律支給される解体補助制度は存在しません。補助金は各市町村が独自に設ける制度です。ただし、道内の多くの市町村で2026年度も空き家解体補助制度が用意されており、条件を満たせば利用できるケースがあります。
この記事では、2026年7月10日時点で確認できた北海道内12自治体の補助制度を、上限額だけでなく対象区分・受付状況・事前調査の要否・契約禁止のタイミング・権利関係の注意点まで含めて比較します。さらに、補助金を使う場合と古家付きのまま売却する場合の判断基準も解説します。
記事を読み終えた時点で、あなたが「次に何をすべきか」が明確になるはずです。
この記事を書いた人
訳あり不動産 買取相談センター 編集部
共有持分・再建築不可・空き家・相続不動産など、売却時に判断が難しい不動産情報を調査・整理する編集チームです。公式情報や公開データをもとに、相談先選びで迷いやすいポイントを中立的にまとめています。
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北海道に「空き家解体補助金」の一律制度はありません
冒頭でも触れた通り、北海道庁が道内すべての空き家所有者を対象に一律で支給する解体補助制度はありません。
2023年の住宅・土地統計調査によると、北海道の空き家数は約45万2000戸、空き家率は15.6%と、全国平均の13.8%を上回っています。この状況を受け、北海道は2024年3月に空き家対策方針を改定し、市町村の取り組みを支援する体制を整えていますが、実際に個人が申請する補助金の有無・内容は、空き家が建っている市町村ごとに確認する必要があります。
この記事では、2026年7月10日時点で公式ページを確認できた道内12自治体の制度を紹介します。ただし、掲載していない自治体にも制度がある可能性があります。お住まいの自治体が一覧にない場合は、直接窓口へ問い合わせてください。
注意
自治体の補助制度は毎年見直しが行われます。受付期間・予算残額・対象条件は随時変わるため、申請前には必ず各自治体の公式ページまたは担当窓口で最新情報を確認してください。
2026年度、北海道内で補助金が確認できた自治体一覧
下表は、2026年度(令和8年度)に空き家解体補助制度があることを確認できた自治体です。上限額だけでなく、対象区分や事前判定の要否などもあわせて確認してください。
| 自治体名 | 補助率 | 上限額 | 対象区分 | 受付期間(2026年度) | 予算件数 | 事前判定 | 主な対象外費用 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 札幌市 | 1/3 | 50万円(通常型) 150万円(地域連携型) |
危険空家等 | 5/15~9/30(予算到達時終了) | ― | 必要(事前確認依頼) | 残置処分費、舗装費、消費税 |
| 旭川市 | 1/3 | 30万円 | 不良空き家住宅等 | 4/20~5/29(抽選) ※残枠あれば11/27まで延長 |
予算120万円 | 必要(建築物調査) | 消費税 |
| 函館市 | 1/2 | 30万円 | 特定空家 | 6/1~12/4 | ― | 必要(建物調査) | 家財処分費 |
| 苫小牧市 | 1/2 | 50万円 | 昭和56年5月31日以前建築の専用住宅 | 6/1~7/31 | 6件 | なし(書類審査) | アスベスト調査費、家財処分費 |
| 釧路市 | 1/3 | 50万円 | 不良空家等 | 4/1~12/31(先着順) | 予算到達まで | 必要(事前調査) | 家財処分費 |
| 帯広市 | 80% | 50万円 | 特定空家等 | 4/1~予算枠到達まで(先着順) | 10件 | 必要(事前調査) | ― |
| 伊達市 | 一般:1/2 不良:80% |
70万円(一般) 100万円(不良) |
一般空き家/不良空き家 | 5/1~10/30(先着順) | ― | 必要(現地調査・不良度判定) | ― |
| 小樽市 | 1/3 | 30万円 | 特定空家等 | 5/1~先着順 | 予算到達まで | 必要(事前調査) | ― |
| 網走市 | 1/2 | 50万円(特定空家) 30万円(昭和56年以前) |
特定空家等/昭和56年以前建築 | 4/1~2027/1/29(先着順) | 2件+8件 | 必要(事前審査) | ― |
| 江別市 | 1/3 | 30万円 | 特定空家等 | 5/8~8/28(事前調査申込) ※交付申請は9/30まで |
5件 | 必要(事前調査) | 家財処分費、消費税 |
| 木古内町 | 1/2 | 60万円 | 一般空き家 | ※要問い合わせ | ― | なし | ― |
※帯広市は対象工事費用に限度額あり(木造33,000円/㎡、非木造47,000円/㎡)。
ポイント
「上限50万円」と一口に言っても、対象区分や条件は自治体ごとに大きく異なります。
・札幌市の通常型は「危険空家等」と判定されることが前提
・帯広市の上限50万円は「特定空家等」のみが対象(補助率80%)
・苫小牧市の上限50万円は築年(1981年5月以前)と所得制限(個人230万円以下)の条件あり
金額だけ見て「うちは50万円もらえる」と早合点しないよう注意してください。
札幌市——通常型は上限50万円、地域連携型は上限150万円
札幌市の制度には2つのタイプがあります。
通常型は補助率3分の1、上限50万円。対象経費から消費税や残置処分費を除いた金額がベースとなり、さらに標準除却費(木造36,000円/㎡、非木造51,000円/㎡)で算出した額との比較で低い方が採用されます。2026年度の受付期間は5月15日~9月30日で、予算に達し次第終了。事前確認依頼の受付は9月16日までです。
地域連携型は上限150万円と高額ですが、解体後の土地を町内会などに原則5年間無償貸与して公益利用する条件があります。2026年度は原則として翌年度以降の交付申請を目指す案件の相談を受け付けています。
詳しくは札幌市の公式ページをご確認ください。
札幌市 令和8年度危険空家等除却補助制度(外部リンク)
旭川市——上限30万円、抽選方式
旭川市の「不良空き家住宅等除却費補助金」は補助率3分の1、上限30万円。2026年度の受付期間は4月20日~5月29日で、申請が予算枠(120万円)を超えた場合は抽選となります。抽選でもれても、予算に空きがあれば11月27日まで延長受付があります。市内に営業所を置く業者への発注が必要です。
旭川市 令和8年度不良空き家住宅等除却費補助金(外部リンク)
函館市——上限30万円、対象地区の制限あり
函館市の「空家等除却支援補助金」は補助率2分の1、上限30万円。対象は市が建物調査で「特定空家」と判定されたものに限られます。事前調査→判定結果通知→交付申請→契約→着工の順序が厳格で、判定を受ける前に契約・着工すると対象外になります。
また、補助対象地区は外環状線(産業道路)の南側(函館山側)と限定されています。事前に地区の確認が必要です。
苫小牧市——上限50万円だが築年・所得制限あり
苫小牧市の「空家等解体補助金」は補助率2分の1、上限50万円。対象となる建物は1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された専用住宅に限られます。また、前年の所得が個人230万円以下、世帯400万円以下という所得制限があります。2026年度は6件のみの募集で、受付期間は6月1日~7月31日です。アスベスト調査費・家財処分費は対象外です。
釧路市——上限50万円、先着順
釧路市の「不良空家等除却補助制度」は補助率3分の1、上限50万円。市の事前調査で「不良住宅」と判定されることが条件です。受付期間は4月1日~12月31日で、予算に達するまで先着順。家財処分費は対象外です。
帯広市——特定空家限定・補助率80%・上限50万円
帯広市の「特定空家解体補助金」は補助率80%と高率ですが、対象は市が認定した特定空家等に限定されます。上限50万円、2026年度は10件の先着順。ただし対象工事費用には限度額(木造33,000円/㎡、非木造47,000円/㎡)があります。受付は4月1日からで、予算枠に達し次第終了です。事前調査から交付決定まで最短でも2カ月程度かかる点に注意してください。世帯所得550万円以下の条件があります。
伊達市——一般最大70万円、不良最大100万円
伊達市は空き家の状態で補助額が変わります。一般空き家は、基本額が「補助対象経費の2分の1」または「60万円」のいずれか低い額で、条件により最大10万円を加算して上限70万円。不良空き家は補助率80%、上限100万円。市が現地調査で不良度判定を行い、その結果で区分が決まります。受付期間は5月1日~10月30日の先着順です。
小樽市——特定空家限定・上限30万円
小樽市の「特定空家等住宅除却費補助制度」は補助率3分の1、上限30万円。対象は特定空家等と判定されたものに限り、市街化区域の一部(港町・築港・銭函4・5丁目を除く)に対象地区が限定されます。2026年度は5月1日から先着順で受付。世帯所得524万円以下の条件もあります。
網走市——特定空家は上限50万円、昭和56年以前は上限30万円
網走市の「空き家等解体事業補助金」は対象区分が2つ。特定空家等は上限50万円(2件)、昭和56年5月31日以前建築の空き家は上限30万円(8件)。補助率はいずれも2分の1。事前審査の受付期間は4月1日~2027年1月29日で、予算に達し次第終了。申請者は市内に居住していなくても可能です。
江別市——特定空家限定・上限30万円
江別市の「特定空家等解体補助金」は補助率3分の1、上限30万円。対象は市が認定する特定空家等のうち「倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」のものに限られます。2026年度は5件の先着順で、事前調査申込は5月8日~8月28日、交付申請は9月30日まで。家財処分費・消費税は対象外です。
木古内町——上限60万円、概算払い(前払い)の可能性あり
木古内町の「空き家等除却費補助金」は補助率2分の1、上限60万円。特徴は、町長が認める場合に工事完了前の概算払い(前払い)を受けられる可能性がある点です。多くの自治体では原則後払い(一旦自己負担して後日精算)となるため、資金面で不安がある場合は事前に確認してみる価値があります。
その他、確認できた自治体
室蘭市では2026年度の一部助成制度が申請上限に達し受付終了となっています。制度自体は存在するため、今後の追加募集や次年度の再開に備えて窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
岩見沢市では現時点で2026年度の公表情報を確認できませんでした。過去の動向から、建物調査を先に行う方式を採用している可能性があります。
上記以外の北海道内179市町村すべてを網羅できているわけではありません。お住まいの自治体が一覧にない場合も、一度問い合わせてみることをおすすめします。
補助対象になる空き家・ならない空き家の違い【3つの区分】
補助制度を利用するには、自分の空き家がどの区分に当たるのかを把握することが重要です。ここでは、よく見られる3つの区分を整理します。
一般空き家
特定空家や不良住宅の判定を受けていない、単に使用されていない状態の空き家です。補助対象となる自治体は限られますが、伊達市のように一般空き家向けの枠を設けているケースもあります。
特定空家等(空家法上の区分)
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態、著しく衛生上有害となるおそれがある状態など、市町村が認定した空き家を指します。函館市・帯広市・小樽市・江別市などはこの区分を補助対象としています。ただし、特定空家に指定されれば必ず補助を受けられるわけではなく、自治体ごとにさらに細かい条件があります。
不良住宅(住宅地区改良法上の区分)
構造または設備が著しく不良で居住に適さない住宅を、市町村が判定したものです。釧路市・旭川市などはこの区分を対象としています。評点方式で判定されるケースが多く、自治体による現地調査が必要です。
注意
特定空家に指定されれば解体しなければならないわけではありません。また、「指定を待ってから申請したほうが有利」というわけでもありません。補助対象となるかどうかは自治体の判定基準によります。まずは自治体の窓口に「自分の空き家が補助対象になる可能性があるか」を問い合わせてみてください。
区分の判定は自治体の職員による現地調査で行われます。申請の前に「建築物調査申込書」を提出し、判定を待つ流れが一般的です。判定結果が出るまでに2~3週間程度かかるケースもあるため、時間に余裕を持って動きましょう。
特定空家・管理不全空家の制度や、解体しない場合のリスクについて詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
申請の流れと「やってはいけないタイミング」
補助金申請で最も多い失敗は、タイミングを誤って補助対象外になることです。多くの自治体で共通する基本の流れと、絶対に守るべきルールを確認しましょう。
基本の流れ(6ステップ)
Step1:自治体への事前相談・建物調査の申し込み
まずは空き家の所在地の市区町村窓口に連絡し、制度の有無と必要書類を確認します。ほとんどの自治体では、この時点で建物調査申込書を提出し、市職員による現地調査の予約をします。
Step2:建物の調査・判定
市職員が現地を調査し、危険空家・特定空家・不良住宅などの該当性を判定します。判定結果が出るまでに2~3週間程度かかることがあります。
Step3:補助金の交付申請
判定結果が補助対象に該当した場合、見積書などの必要書類を添えて交付申請書を提出します。
Step4:交付決定(ここまでは契約・着工禁止)
市の審査を経て交付決定通知が届きます。この通知を受ける前に工事請負契約を結んだり、工事に着手したりすると補助対象外になります。
Step5:工事契約・着工・完了
交付決定後、はじめて業者と工事契約を結び、工事を始めることができます。工事が完了したら実績報告書を提出します。
Step6:補助金の交付(入金)
実績報告の審査を経て、補助金が指定口座に振り込まれます。ほとんどの自治体は原則後払いのため、工事費を一時的に立て替える必要があります。木古内町のように町長が認める場合に概算払い(前払い)が可能な自治体もありますが、事前に確認が必要です。
ポイント
「着工前なら契約済みでも大丈夫」は誤りです。
多くの自治体の要綱では「交付決定を受ける前に契約した工事」も補助対象外と明記されています。
正しい順序は「交付決定→契約→着工」です。見積もり取得までは問題ありませんが、契約と着工は必ず交付決定を待ってから行ってください。
補助金申請と並行して進めるべき準備
補助金の申請手続きだけに集中していると、いざ工事を始めようとしたときに「残置物がまだ片付いていない」「アスベスト調査をやっていなかった」「共有者の同意書が届いていない」といった準備不足で工事開始が遅れることがあります。以下の準備は、補助金の申請手続きと同時並行で進めるのが効率的です。
- 残置物・家財の撤去計画:補助金の対象外費用になることが多いため、別途見積もりを取っておく。自力で処分できるものは早めに片付ける
- アスベスト事前調査の手配:調査は解体業者とは別の専門業者に依頼することが多い。調査結果が出るまでに時間がかかるため、早めに手配する
- 共有者・相続人の同意取り付け:同意書に全員の署名・押印が必要。遠方に住む親族がいる場合は郵送を含めて余裕を持って準備する
- 工事費の資金計画:原則後払いのため、工事費全額を一時的に立て替えられる資金があるか確認する。不足する場合は、現況売却も視野に入れる
これらを補助申請と同時に動かすことで、交付決定後にすぐ工事契約に進め、空き家の処分をスムーズに進められます。
補助金の支払い時期
補助金の入金は工事完了後、実績報告の審査を経てからになります。工事費の全額をいったん自己負担できる資金があるかどうかも、事前に確認しておくべきポイントです。
ただし一部の自治体(木古内町など)では、町長が認める場合に工事完了前の概算払いが可能なケースもあります。資金面で不安がある場合は、問い合わせの際にあわせて確認しましょう。
解体費用の総額や自己負担の考え方について詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
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相続・共有・名義問題がある場合の注意点
「親名義のままでも申請できるの?」「兄弟との共有名義だけど、一人で手続きを進めていいの?」——相続した空き家によくある権利関係の疑問です。補助制度上は対応可能なケースもありますが、いくつか注意点があります。
親名義・相続登記前の場合
自治体によっては、相続登記をしていなくても相続人が申請者となることを認めています。ただし、その場合でも次の書類を求められるのが一般的です。
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本(相続人全員が分かるもの)
- 相続人全員の同意書
- 相続人代表者指定届
「まだ相続登記をしていないから申請できない」と諦める必要はありませんが、書類の準備には時間がかかることを見越して、早めに動き出すことをおすすめします。また、補助申請とは別に、将来的な売却や権利整理には相続登記が必要になるケースがほとんどです。
共有名義(兄弟姉妹との共有など)の場合
夫婦や兄弟で共有している空き家の場合、補助金の申請者になれるのは1人ですが、共有者全員の同意書が必要になる自治体がほとんどです。代表者を選任し、全員の署名・押印をもらった同意書を提出します。
ただし、共有者全員の同意を得られたとしても、「共有建物の解体=単独で判断できる」わけではない点には注意が必要です。民法上、共有物の変更(建物の取壊しなど)には共有者全員の同意が必要です。したがって、同意なく解体すると、後日他の共有者から損害賠償を求められる可能性もあります。
注意
話し合いができない共有者がいる(所在不明・行方不明・連絡が取れない)場合、補助金申請以前に解体そのものが難しくなることがあります。このようなケースでは、司法書士や弁護士への相談も視野に入れてください。
土地と建物の所有者が異なる場合
親から土地だけ相続したが建物は別の親族名義、または親名義のまま建物だけが残っている——こんなケースも少なくありません。この場合、建物の所有者と土地の所有者の両方の同意が必要です。自治体によっては「土地所有者の同意書」を提出書類として明示しています。
抵当権・差押え・市税滞納がある場合
抵当権や差押えが設定されている建物でも、補助申請は可能なケースがあります。ただし、抵当権者(銀行など)の承諾が必要かどうかは自治体ごとに異なります。また、市税を滞納している場合は補助金の交付条件から外れる自治体もあるため、事前に確認しましょう。
補助対象になる費用・ならない費用
補助金の対象経費は「建物の解体・除却に直接必要な費用」が基本ですが、実際には対象外となる費用が多くあります。見積額の全額が補助対象になるわけではない点をあらかじめ理解しておきましょう。
補助対象となりやすい費用
- 建物本体の解体工事費
- 屋根・外壁・基礎の撤去費
- 整地費(重機による敷地の均し程度)
- 塀・門・物置等の敷地内工作物の撤去費(ただし規定による)
- 樹木の伐採・抜根費(ただし規定による)
補助対象外になりやすい費用
- 家財・残置物の処分費(ほとんどの自治体で対象外)
- アスベスト事前調査費・分析費・除去費(多くの自治体で対象外)
- 消費税(札幌市・江別市など明示的に対象外とする自治体あり)
- 水道・ガス・電気の引き込み撤去工事費
- 地中埋設物(浄化槽・廃油タンクなど)の撤去費
- 舗装・アスファルト工事費(札幌市では対象外)
- 設計料・監理料
注意
アスベスト(石綿)の事前調査は、補助金の対象外でも法令上の義務です。
建築物の解体・改修工事では、規模にかかわらず石綿含有建材の有無を事前に調査する必要があります(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)。床面積80㎡以上または請負代金100万円以上の工事では調査結果の行政報告も必要です。補助対象にならないからといって調査を省略することはできません。
補助額の計算——「見積額×補助率」だけではない
補助額の計算方法にもう一つ注意点があります。多くの自治体では、補助金の上限は以下の3つのうち最も低い額で決まります。
- 実際の工事費(対象経費)× 補助率
- 標準除却費に基づく算定額
- 制度の上限額
例えば旭川市(補助率1/3、上限30万円)で、延べ面積50㎡の木造建物の解体費が200万円だった場合を考えてみましょう。旭川市の場合、標準除却費は木造14,400円/㎡で、算定式は「標準除却費×延べ面積×10分の8×2分の1」です。
- ①工事費ベース:200万円×1/3=約66.6万円
- ②標準除却費ベース:14,400円×50㎡×0.8×0.5=約28.8万円
- ③制度上限:30万円
このケースでは、最も低い②の約28.8万円が補助金の上限となります。「200万円の見積もりだから上限いっぱいの30万円もらえる」と単純に考えていると、実際の支給額との差に驚くことになります。見積もりを取る際には、業者に対象経費の内訳を詳しく出してもらい、標準除却費による算定も意識しておくとよいでしょう。
補助金を使うか、古家付きのまま売るか——判断のポイント
このセクションでは、以下の2つの選択肢を比較します。
- 補助金を使って解体し、更地にする
- 古家(残置物)付きのまま現況で売却する
補助金が利用できるからといって、必ずしも「解体したほうが得」とは限りません。どちらがよいかは、自己負担額・手間・期間・税金・売却可能性によって変わります。
それぞれのメリット・デメリット
| 比較項目 | 補助金で解体 | 古家付き現況売却 |
|---|---|---|
| 自己負担額 | 工事費全額をいったん立て替え、後日補助金が入金。自己負担は「工事費-補助金+対象外費用」 | 売却代金から解体費・撤去費を差し引くか、買取業者が負担するケースあり。自己負担ゼロの場合も |
| 手間 | 自治体への申請・実績報告・業者手配・残置物の事前撤去など多数 | 買取業者との打ち合わせ・契約のみ。現況のまま引き渡し可能なケースが多い |
| 期間 | 事前調査~判定~交付決定~工事~実績報告~入金まで3~6カ月程度 | 契約から決済まで1~2カ月程度 |
| 税金影響 | 建物がなくなるため建物分の固定資産税は不要に。ただし住宅用地特例が外れると土地の固定資産税が上がる可能性あり | 古家付きのままなので住宅用地特例が継続。ただし評価額次第 |
| 売却可能性 | 更地になれば売りやすくなるケースがある。ただし需要のない土地は更地でも売れない | 買取業者であれば古家・残置物付きでも買取可能。市場価格よりは低くなりがち |
| リスク | 交付決定前に契約すると補助対象外。補助金が想定より少ない。解体後に土地が売れず固定資産税だけ上がる | 売却価格が思ったより低い。契約不適合責任の扱いがデメリットになり得る |
こんなケースでは現況売却も検討する
- 補助対象外の費用(残置物・アスベスト等)が多く、自己負担が大きくなりそう
- 工事費の立て替え資金がない
- 受付期間が終了している、または予算が残っていない
- 共有者全員の同意を得るのが難しい
- 解体後の土地に需要がなく、更地にしても売却性が改善しない
こんなケースでは補助金申請を優先する
- 制度の対象で、予算残があり、受付期間内である
- 工事費を立て替えられる資金がある
- 権利関係が整理されている(単独所有、登記済みなど)
- 補助金を差し引いた実質負担が現況売却の価格差より小さい
ポイント
補助金が出るからといって、すぐに解体を決断する必要はありません。
補助後の実質負担がいくらになるか、その土地が更地で売れるのか、現況買取の査定額はいくらかを比較してから判断することで、「解体したのに結局土地が売れず、固定資産税だけ上がった」という事態を防げます。
補助金を含めた総費用の考え方や、解体前に確認すべき判断基準について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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補助対象外だった場合や、自己負担が大きすぎる場合など、古家付きのまま買取を検討したい方は、以下の記事で業者比較のポイントを確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 北海道全体で一律の空き家解体補助制度はありますか?
A. ありません。北海道庁が個人向けに一律で支給する解体補助金は存在しません。各市町村が独自に制度を設けており、有無や内容は自治体ごとに異なります。この記事で紹介した自治体の一覧を参考に、所在地の市町村窓口に直接確認してください。
Q. 補助金は工事前に受け取れますか?
A. ほとんどの自治体は原則後払い(工事完了後の精算)です。ただし木古内町のように、町長が認める場合に概算払い(前払い)が可能な自治体もあります。事前に問い合わせて確認しましょう。
Q. 見積もりや工事契約はいつ取ればいいですか?
A. 見積もり取得は交付決定前でも問題ありません。ただし、工事請負契約の締結と着工は、必ず自治体の交付決定通知を受けてから行ってください。交付決定前に契約・着工した工事は補助対象外となります。
Q. 親名義のまま、相続登記をしていなくても申請できますか?
A. 自治体によっては可能です。ただし、亡くなった方の戸籍謄本や相続人全員の同意書など、書類の準備が必要になります。相続登記をしていなくても申請できるケースとできないケースがあるため、まずは窓口で「相続登記前でも申請可能か」を直接確認しましょう。
Q. 共有名義の場合、全員の同意が必要ですか?
A. ほとんどの自治体で共有者全員の同意書が必要です。補助申請の要件としてだけでなく、民法上も共有建物の解体には共有者全員の同意が必要です。連絡の取れない共有者がいる場合は、司法書士や弁護士への相談が必要になるケースがあります。
Q. 残置物・家財道具の処分費は補助対象ですか?
A. ほとんどの自治体で対象外です。札幌市・苫小牧市・釧路市・江別市などが明確に対象外としています。家財の処分は補助金とは別に自己負担で行う必要があります。
Q. アスベスト調査費用は補助対象ですか?
A. 多くの自治体で補助対象外です。ただし、アスベストの事前調査は大気汚染防止法・石綿障害予防規則に基づく法令上の義務です。補助対象外だからといって調査を省略することはできません。自治体ごとに扱いが異なるため、窓口で確認しましょう。
Q. 補助対象外でした。どうすればいいですか?
A. 古家付きのまま買取業者に現況査定を依頼する方法があります。補助金が使えないケース(対象外・受付終了・予算終了・自己負担過大)でも、空き家の買取に対応している業者に相談すれば、残置物や築古物件のまま買い取ってもらえる可能性があります。まずは複数社の査定を比較してみましょう。
Q. 解体すると固定資産税はいくら上がりますか?
A. 「固定資産税が6倍になる」という表現を耳にすることがありますが、これは住宅用地特例(200㎡以下の小規模住宅用地は課税標準が6分の1)が外れた場合の土地部分の話です。実際には建物がなくなることで建物分の固定資産税はかからなくなります。総額がどう変わるかは、土地の評価額・面積・建物の評価額によって個別に計算する必要があります。
Q. 更地にしても売れない土地はどうすればいいですか?
A. 需要の少ない土地は、解体後に更地にしても売却が難しいことがあります。その場合は、解体前に買取業者の査定を受け、古家付きのまま買い取ってもらうほうが結果的に負担が少ないケースもあります。また、売却以外にも維持しながら様子を見る、行政に管理を相談するなど複数の選択肢があります。まずは費用対効果を試算してみましょう。
まとめ——まず自治体窓口に電話する前に確認すること
最後に、この記事で確認したポイントを整理します。
まず押さえるべき3つのこと
- 北海道全体の一律制度はない。補助金の有無は建物所在地の市町村に確認する
- 上限額だけで判断しない。対象区分・受付期間・事前判定の要否・権利関係の条件も同じくらい重要
- 補助金が出ることと、解体が得であることは別。解体後の実質負担と現況売却を比較してから決める
自治体窓口に電話する前に、以下の質問リストを用意しておくとスムーズです。
- 2026年度の空き家解体補助制度はありますか?
- 現在受付中ですか?予算の残額はありますか?
- 対象となる建物の区分(一般空き家・特定空家・不良住宅など)は何ですか?
- 事前の建物調査・現地判定は必要ですか?
- 交付決定前に工事請負契約を結んでも大丈夫ですか?
- 相続登記前でも申請できますか?
- 共有者がいる場合、全員の同意が必要ですか?
- 北海道外に住む相続人でも申請できますか?
- 残置物・アスベスト調査費は補助対象ですか?
- 工事費の立て替えが必要ですか?概算払いは可能ですか?
また、今年度の受付が終了していた場合や、予算残額がなくて次年度まで待つことになった場合でも、空き家を放置している間も固定資産税や管理費用は発生し続けます。翌年度の制度を待つか、別の処分方法を検討するかの判断材料として、以下の記事も参考にしてください。
空き家の解体は大きな決断です。補助金の有無だけで結論を急がず、「補助金を使った場合の実質負担」と「古家付きのまま売却した場合の手取り額」を比較したうえで、自分にとって納得のいく選択をしてください。
この記事の情報は2026年7月10日時点のものです。自治体の制度は毎年見直しが行われ、受付期間や予算状況も随時変わります。必ず公式ページまたは担当窓口で最新情報を確認してから行動に移してください。
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